「スポットライト 世紀のスクープ」(2015)

  • 監督:トム・マッカーシー
  • 脚本:トム・マッカーシー、ジョシュ・シンガー
  • 製作:マイケル・シュガー、スティーヴ・ゴリン、ニコール・ロックリン、バイル・ペイゴン・ファウスト
  • 製作総指揮:ジェフ・スコール、ジョナサン・キング、ピエール・オミダイア、マイケル・ビーダーマン、バード・ドロス、トム・オーテンバーグ、ピーター・ローソン、セイヴィア・マーチャンド
  • 音楽:ハワード・ショア
  • 撮影:マサノブ・タカヤナギ
  • 編集:トム・マカードル
  • 出演:マイケル・キートン、マーク・ラファロ、レイチェル・マクアダムス、リーヴ・シュレイバー、ブライアン・ダーシー・ジェイムズ、ジョン・スラッテリー、スタンリー・トゥッチ 他

第88回のアカデミー賞にて作品賞と脚本賞を受賞した、トム・マッカーシー監督による作品。演技、編集などもノミネートしました。

アメリカをはじめ世界中を震撼させた、カトリック司祭による児童への性的虐待。その事実を追い求めた、ボストン・グローブ紙のスポットライトチームの報道をテーマにしています。

カトリック、宗教と文化、地域と集団などの要素をもっていますから、日本での感覚だとそのままとらえるのは難しそうですが、語りの上手さに飲まれます。まあ十分理解できますので大丈夫。

新作で作品賞なので題材の割に人は多めでしたが、若い人は興味ないのかな。「レヴェナント」の方が若年層も多かったです。

2001年、ボストンにある「ボストン・グローブ」に新しい局長としてマーティン・バロンがやってくる。

ボストンの地元に根差した局内には、スポットライトという少数からなる調査チームがあった。

そのリーダーであるロビーはマーティンを迎える初めてのミーティングに出席。そこでマーティンは思いもよらないことを言う。

かつてスポットライトでとりあげた、ゲーガン司祭による児童性的虐待事件。その続報とさらなる調査をメインの取材にしていこうと提案したのだ。

かくしてスポットライトチームはボストンの、そして全米や世界に広がる闇を照らしだそうと奮闘することになる。

さて、実際の事件を基にした映画・・・と思いきやここが大事なんですが、これは実際の報道調査を基にした映画なんです。

つまり描かれるのはこの児童虐待の始まりとかその凄惨さとかではなく、あくまでスポットライトチームがそれを調査し裏を取り報道するという流れです。

なので序盤の76年のシーンが説明としてあるくらいで、レイプのフラッシュバックとか過去の示談とかのシーンはないんです。

語りの部分ですごくストイック。報道チームと一緒に関連人物にあたり、共にその感情を共有し真実を掴んでいく感覚が素晴らしいものです。

そこでいろいろな人物が登場していきますが、混乱しないところも良くできています。

チームメンバーそれぞれの内面も、調査の中でしっかりと表れていまして、ここがすごく好きでした。ボストンを愛するロビーのなにか地元に対する罪のような感情。

サーシャにとっても、祖母の信仰を壊すことになるわけで、マイケルとマットにしてみれば正義と報道プロセスに揺れていますね。

こういった個人的な優先事項を常に抱えつつも、報道としてしなければいけないことを守り抜く姿勢に胸を打たれます。

取材する人物たちの現実味もすごく丁寧で、司祭側を除けば、純粋な悪というものがないのも苦いところです。

細やかな描写にかなり胸を痛めるものが多く、注射の跡だらけの被害者に「生存者たち」という団体名・・・報道というのは残酷なものをあえて掘り返すことでもありますから、罪悪感を覚えてしまいます。この罪の意識がまた効いてきますね。

様々な場面をうまくつなぎ合わせながら、町にはびこっていた闇を照らしたスポットライト。

このドラマにカタルシスがないのには、先の罪悪感によるものだと思います。この報道行為を真正面から描いたことにより得るのは、この悪に加担してしまったという感覚でした。

以前から手がかりや証拠、告発はあったのに、見過ごしていた。そして正しいことをすべき時に、しかし報道のルール上の問題で即時行動をしなかった。

この事件は地元への愛や新聞としての役目などに隠されてもいた。スポットライトチームは闇を照らすほどに、自分たちの影もみてしまう。

証拠が出たときにすぐに発表していれば、ラストにあの子供たちが依頼人にならずに済んだでしょう。数年前にしっかりと書類を見ていれば。知ることと声をだすことって違いますね。

911のことやスクープ狙いのこと、報道チームであるゆえの一定の枷。

今作では真っ直ぐな英雄譚と言い切れない痛さが常にはらんできます。それでも報道という正しい道で、その力で伝えなければいけないことがあります。

たとえ地元や家族を傷つけていても、知らずに加担してしまった罪を認めやるべきことをやる。内包する悪もさらけだして、報道の魂を見せつける作品でした。

エンドクレジット前に映し出される都市名。あのあまりの多さに打ちのめされますよね。神父の数、世界規模、そして救えたはずの子供たち。

そのあとにまたズッシリとのしかかる。これはアメリカ、カトリックとつながって生きてきた人にとって、その観客の黙認や罪をも感じさせるものだと思いました。

演技の良さにアンサンブル、綺麗にせずどれもこれもちゃんと映して、それ以外はスパッと捨てた本作。この映画という報道を是非観てほしい、おすすめです。

そんな感じで終わります。それでは、また~

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