「アナイアレイション 全滅領域」(2018)
- 監督:アレックス・ガーランド
- 脚本:アレックス・ガーランド
- 原作:ジェフ・ヴァンダミア『全滅領域』
- 製作:スコット・ルーディン、アンドリュー・マクドナルド、アロン・ライヒ、イーライ・ブッシュ
- 製作総指揮:ジョー・バーン、デヴィッド・エリソン、デイナ・ゴールドバーグ、ドン・グレンジャー
- 音楽: ベン・ソーリズブリー、ジェフ・バーロウ
- 撮影:ロブ・ハーディ
- 編集:バーニー・ピリング
- 出演:ナタリー・ポートマン、ジェニファー・ジェイソン・リー、テッサ・トンプソン、ジーナ・ロドリゲス、ツヴァ・ノヴォトニー、オスカー・アイザック 他
「エクス・マキナ」のアレックス・ガーランド監督が、ジェフ・ヴァンダミアの小説を映画化した作品。
生還者ゼロの未知の領域へと調査へ進む、女性学者たちを描くSFホラー。
主演はナタリー・ポートマン。彼女の夫をオスカー・アイザック、また調査チームにはジェニファー・ジェイソン・リー、テッサ・トンプソン、ジーナ・ロドリゲス、ツヴァ・ノヴォトニーらが出演。
もともと「エクス・マキナ」が好きで、少しスケール(バジェット的にも)アップしているものの、監督の新作なので観たかった作品。
しかしNetflix配信となり自分で観る機会がなく、かなり遅れてブルーレイで鑑賞しました。
一年間もの間任務で家を離れていた夫が、突然レナの元へ戻ってくる。
しかし夫は上の空で、記憶も曖昧。さらに体調が悪化し救急搬送されるのだが、謎の部隊にレナも彼も捉えられてしまう。
夫は治療室へ入れられ、レナは彼の任務について聞かされる。
ある特異な領域”シマー”が広がっており、その中に入った者は、動物であれドローンであれ人間であれ戻っていない事。
そして夫は唯一の生還者であること。
夫に何があったのか、シマーの本質とは?レナは他の学者部隊に同行し、シマーの中心部である灯台へむけ出発する。
原作小説については一切わからないのですが、舞台設定は「ディストピア パンドラの少女」に近いかなと思いました。
ジャンルとしては間違いなくSFですが、バイオホラーというか、世界の改変、変化を根底に人間のあり方を描いているように感じます。
ここで描かれるシマーと内部の描写ですが、おぞましくも美しいものです。
花々、木々、動物、交錯し融合したそれぞれは確かに別世界のものであり、造形には私たちの常識が通じない。
だからこそ人骨と苔の混ざったものや人型の木などは、理解を超えており恐ろしく感じます。
しかし、同時にシマーは美しい。
風景にしろ何にしろ、劇場の大きなスクリーンでぜひ一度観てみたいです。
調査部隊と共にシマーへ入り未知に遭遇することは、おそらく鑑賞中に自分の中の何かを思わず意識すると思います。
その点は「エクス・マキナ」と同様に感じますね。変異、そして領域と影響。
今作においても、やはりガラス越しを推しだし、その領域の区分とそれを超えていくものを映し出しています。
冒頭ではガラスの水がもたらす光の屈折による現実の改変(この場合は夫の手を握るレナの手、鏡写しのように左右が反転)を見せており、それはあの虹色の幕のようなシマー、そして内部で語られることと同様です。
全てが屈折する世界で、それを解釈しようとすると狂っていくのもわかります。なんでもアリになりますし。
しかし映画におけるSFが、視覚的に解釈の難しい新世界を見せてくれるのならそれはすごくうれしいことです。
まさにこの作品自体が、未知の領域に足を踏み入れるそのフィルターなんですね。
ガラス越しの尋問に始まり、すべてのイメージはレナの語るものに依存するシチュエーション。ここにもレイヤー越しの関係性が成り立っていました。
彼女というフィルターを通して語られるシマー内部での出来事、存在したもの。
レナの話ではすべては焼き払われており、そして実際にシマーは消滅している。
実際に分からないもの、見ていないものは聞くしかありません。ではどんなフィルターを通して、私たちは現実を認知しているでしょう。
私たちを組成するのが、自身で認知したものであるならば。
アレックス・ガーランド監督は挑戦的かつおぞましくも美しい映像を持って、SFというジャンルがくれる考察や新世界、未知の体験を楽しませてくれます。
自身での考察や探求を引き出させてくれる点でとても楽しめた作品になりました。
感想はこのくらいになります。やっぱスクリーンで観たいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
それではまた。
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