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「マーシーズ・ガール」”Mercy’s Girl”(2018)

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MercysGirl2018 映画レビュー
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「マーシーズ・ガール」(2018)

  • 監督:エミリー・レイプ
  • 脚本:エミリー・レイプ
  • 製作:エミリー・レイプ
  • 撮影:ジャスティン・ハウ
  • 編集:エミリー・レイプ、リー・アン・コン
  • 出演:エミリー・レイプ、アリソン・ヒクソン、レイニー・デナム 他

MercysGirl2018movie

女優として活躍するエミリー・レイプの初監督デビュー作品。

シカゴを舞台に、敬虔なキリスト教一家で育ったマーシーが、ジェシーという女性と恋に落ち、家族と自分のセクシュアリティに葛藤するロマンスドラマ。

エミリー・レイプ自身が脚本、主演、編集、制作を務めており、作品はインディ映画祭での上映後ネット配信にて公開になったそうです。

今回自分は海外版のブルーレイがあったのでそれで鑑賞しました。北米での扱い含めても、日本一般公開はないと思うすごく小さいインディペンデント映画です。

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シカゴ育ちのマーシーは、アルコール中毒のためにセラピーに通っている。

家族、特に母は敬虔なキリスト教徒でマーシーの立ち直りを期待しているが、彼女にとって母は一番気の重い相手だった。

それはマーシーがゲイであることに関係する。自分のセクシュアリティを打ち明ければどうなるか、怖くて仕方のないマーシーは酒に逃げていたのだ。

そんなあるとき、マーシーはダイナーで働く学生ジェシーと出会い、二人は親密になっていく。

今度こそ母に告白し、ジェシーを紹介しようと決意するマーシーだったが、事態は重い通りには進まなかった。

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率直に言って生々しい。

それはこのインディフィルムがまるでドキュメンタリーのような空気を持っているからかなと感じます。

音楽もなく、撮影も劇画調ではない。トラッキングショットを使っての室内撮りとか、電車内など公共機関、通りや夜景なども非常に写実的です。

おかげで、主人公マーシーという女性が困難を設定として都合よく抱える主人公ではなく、実際にこの街に生きて人生に行き詰った女性としてしっかり捉えられます。

そのマーシーを演じるエミリー・レイプの演技も、いい意味で洗練されすぎない部分を出していて良かったです。

アリソン・ヒクソンとのケミストリーも上手くいっていて、二人の距離の縮め方のぎこちないかわいらしさとか、親密になってからの言葉の要らない所作とかに、人間関係を感じました。

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愛する人の膝に頭をのせれば、彼女は自然に髪に指を通し撫でてくれる。小さな部分ですが親密さと、お互いに一緒にいる安心が見えます。

何よりも、オープニングから親密なはずの家族や知人の中にいるのにうつむいて話さないマーシーが、心の底から居心地よく思っているから。

しかし約束される試練に悪い形で直面するとき、マーシーは壊れてしまいます。ラベルを貼られ続けそして”不快”、”恥さらし”と実の母に完全に拒絶される。

間違った選択ではありますが、やはり差別的な存在を置いているのでマーシーを責めることは私はできなかった。

おそらくジェシーに愛されること、ジェシーと一緒に過ごすこともとても大事ですが、母を捨てるのもつらいのだと思います。

セラピーでの女性が「誰かに愛されていると感じたい。誰かが私を気にかけていると。」と語り、それが神への信仰になったと語ります。

宗教は別にしても、この気持ちは誰にでもあるでしょう。

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結末としては切ないですが希望もあると思います。

春に出会い、夏に愛を深めて秋に壊れ、そして冬の寒空の下思い出の場所でお別れをする。

この四季、ジェシーとの日々を通してマーシーは自分のラベルを自分で貼ることができました。

母とジェシー両方の愛は手に入らないけれど、自分をそのまま愛することはできたのかなと思います。

そしてこの先には、また春がやってくるのです。

非常に小さな作品ですが、エミリー・レイプが描いたロマンスはその撮影や編集含めてとても現実的で、なによりも親密です。

ここまでの親密さは作品の強さになり、観る人にどこか個人的な感覚を与えると思います。マーシーの中に自分のパーツを見つけるような。

意外なところでの拾い物となった作品でした。興味があれば海外版ブルーレイでの干渉をおすすめします。

感想はここまでです。読んでいただきありがとうございました。

それではまた。

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