「ジェーン・ドウの解剖」(2016)
- 監督:アンドレ・ウーヴレダル
- 脚本:イアン・ゴールドバーグ、リチャード・ナイン
- 製作 フレッド・バーガー、エリック・ガルシア、ベン・ピュー、ロリー・エイトキン
- 製作総指揮:スチュアート・フォード、マット・ジャクソン、スティーヴン・スクイランテ
- 音楽:ダニー・ベンジー、ソーンダー・ジュリアーンズ
- 撮影:ロマン・オーシン
- 編集:パトリック・ラーシュゴールド、ピーター・グヴォザス
- 出演:エミール・ハーシュ、ブライアン・コックス、オルウェン・ケリー、オフィリア・ラヴィボンド、マイケル・マケルハットン 他
「トロール・ハンター」などのノルウェーのアンドレ・ウーヴレタル監督が贈る、身元不明女性の解剖からはじまるホラー映画。
女性の遺体解剖を行う親子として、ブライアン・コックス、エミール・ハーシュが出演し、ジェーン・ドウはオルウェン・ケリーが演じています。
ちなみにジェーン・ドウとは特定の個人名ではなく、身元不明の女性をさす仮称のようなものです。
もう数年前になってしまいますが、海外のホラーファンの間での評判が良く、日本では限定公開?か何かで都内で観れたんです。
しかし予定が合わせられず見逃した記憶だけはあります。今回はアマゾンプライムに配信があったので鑑賞してみました。
バージニア州の田舎町で、一家全員が惨殺されるという事件が発生した。奇妙なことに誰かが押し入ったのではなく、被害者たちは家から出ようとしているようである。
そしてさらに謎が深まることになるのが、地下室で発見された女性の遺体。身元を示すものが何もなく、警察は遺体を”ジェーン・ドウ”として解剖に回すことになる。
検死解剖を依頼されたのはトミーとオースティン親子で、いつも通りに淡々と解剖を進めていくのだが、”ジェーン・ドウ”には通常ではみられないような奇妙な痕跡が見つかっていく。
そもそも題材があまりみられない、死体の解剖というところで、脚本と展開を楽しみに見ていました。
その点に関しては全体の2/3に関しては非常に楽しかったという印象です。
基本的には1つの舞台、おもに解剖室内で、たった二人の役者と一つの遺体をセンターに置いての展開となります。
しかし、このステージや音響などの作りこみに関しては非常に気味悪くおぞましい空気をたっぷりと味わうことができます。
人体の解剖に関してはそのプロップの精巧な作りから一部の視覚効果の部分含めてクオリティが非常に高く、またそれらの解体する際の音のデザインとしても、(実際に人が解体される際の音は聞いたことないですが)リアリスティックで没入感を高めています。
また蛍光灯、血液の処理レール、ラジオや外部の環境に関してなどの各アイテムや条件の説明も周到に序盤に紹介しておき、後半にて異なる意味合い(主に恐怖の演出として)で機能させていくのもスマートでした。
ほとんど密室においての演者のアンサンブルとか、そもそも遺体役としてフルヌード特殊メイクで美しくもどこか不気味に横たえ続けるオルウェン・ケリーの見事さとか、すごく良い空気です。
しかし、映画は第3幕目、真実が明らかになった瞬間から、その魅力を失っていったと思います。
何かがおかしい、追及するほどに惨い事実が明らかになっていき、感情としては同情や哀れみが生まれた矢先、その目の前にいたものが完全なる脅威であると発覚する。
既に後戻りできない状況まで来てやっと魔を認識するのです。
しかし、その後はよくあるホラー映画テイストで、悪霊なのかゾンビなのかみたいなモンスター映画風に。
ちょっと騒がしくなると、静かでじわじわとした前半部分に比べ魅力がなくなっています。
正直ジェーン・ドウにまつわる真実が明らかになった時点をクライマックスとしても良かったかと思います。
しかし序盤からの医学ゴアみたいな描写と視覚・聴覚からの素晴らしいデザインは確実に解剖室に観ている人を放り込み、気味の悪い遺体と夜を過ごさせる力を持っています。
ホラー映画好きな方は一度鑑賞して観ることをおすすめします。
感想としては以上となります。ちょっと短め。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
それではまた次の記事にて。
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