「ザ・レポート」(2019)

  • 監督:スコット・Z・バーンズ
  • 脚本:スコット・Z・バーンズ
  • 製作:スコット・Z・バーンズ、ジェニファー・フォックス、ダニー・ガバイ、エディ・モレッティ、ケリー・オレント、スティーヴン・ソダーバーグ、マイケル・シュガー
  • 製作総指揮:マイケル・ディ・ヴェルディ、ヴィンセント・ランディ、T・J・リノマト、リラ・ヤコブ
  • 音楽:デヴィッド・ウィンゴ
  • 撮影:アイジル・ブリルド
  • 編集:グレッグ・オブライアント
  • 出演:アダム・ドライバー、アネット・べニング、ジョン・ハム、モーラ・ティアニー、コリー・ストール、ティム・ブレイク・ネルソン 他

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CIAが911以降秘密裏に行ってきた強化型尋問技術(EIT)を、アメリカ上院調査部門のスタッフが5年の歳月をかけて630万ページものCIA報告書を分析し、報告書としてまとめた実話を映画化。

監督は「ボーン・アルティメイタム」や「コンテイジョン」の脚本を手掛けたスコット・Z・バーンズ。

上院調査員であるダニエル・J・ジョーンズを、「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」などのアダム・ドライバーが演じます。

そもそもこのCIAによる捕虜に対する虐待的な行為、またその映像の公開などは全世界で報道され記憶に残っている方も多いでしょう。

アメリカにとっては悪しき歴史となっている事実ですが、サンダンスで上映後批評面で成功。

劇場公開ではなくアマゾン・プライム・ビデオでの配信となりました。

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2001年9月11日。同時多発テロを機にアメリカの国防関係者たちは恐怖に包まれた。

次の攻撃をなんとしても未然に防ぎ、テロ組織の壊滅に全力を注がねば、アメリカは崩壊してしまう。

CIAはある二人の心理学者の進言をもとに、強化型尋問技術の使用により、捕虜からテロ組織の情報を聞き出すことを計画する。

数年後、アメリカ上院の調査員として働くダニエルは、CIAの強化型尋問技術の報告書を調査し報告書を作成することを依頼される。

しかしCIAは情報制限やダニエルへの疑惑捏造など様々な妨害をしてくるのだった。

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比較的新しい出来事であり、現代的な題材ですが、ここにある緊迫感や差し迫った脅威の感覚は、実際に揺れ動く時代でもあった70年代のポリティカル・スリラーのようでした。

「大統領の陰謀」や「コンドル」に代表されるような、静かで落ち着いており傍から見れば淡々と進む。

しかし進んでいくのは確実に濃い霧の中なのです。

作品は過去のCIAの尋問のシーンも挿入はされるものの、画面としてはドラマチックなものは全然ありません。

主にスクリーンに映るのは、人々が座ってPCみてるか、会議室やオフィスで座ってる、話し合ってる、説明してる様子。

いわゆるオフィスワークの連続です。

ですから絵面としてはとても地味な作品でありますが、それこそがこのプロフェッショナルを称えることと重なり、とても地道な大変さをそのまま体現していると思います。

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脚色すれば、CIAからの強迫とかスリラー要素を必要以上に強めてそちら側の作品へとジャンルをシフトすることもできますし、であれば単純な抑揚やドラマチックさが付加されるはず。

しかしそれを頑なに避けて、書面の調査と報告書の完成、そして正式なリリースへと真っ直ぐにつなげようとする。

これは監督が、実際にそうしたダニエル・ジョーンズを本心から称えているからかと思います。

一つの仕事人の映画としても熱いです。

その職人であるダニエルを演じるアダム・ドライバーは、もはやできないジャンルがなく、また作品規模も演技に関わらないことを証明します。

カイロ・レンから「パターソン」、「デッド・ドント・ダイ」。

あらゆる作品に、見た目を大きく変えず出演しながら、しっかりとその世界の人間になりきってしまう彼には脱帽です。

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愚直な彼が一切緊急手段や例外措置に手を出さない点と、アメリカ国家の911以降の振る舞いは痛いほどに対比されます。

焦燥や恐怖、苛立ちとなんとか自分の職務を果たさなければという想いで言えば、CIAとダニエルは同じような立場に置かれています。

しかしそうした状況でこそ、正しさや倫理、人としての尊厳が問われるのかもしれません。

CIAは早急な対応や国家保全という職務に追われ、また恐怖に包まれたことで、いってしまえば仕事がいい加減になった。

譲ってはいけない一線を越えてしまったわけですし、責務を果たしていると見せたいがために、効果のないEITを推進し続けてしまった。

ダニエルは妨害行為にあいながらも、ラインを越えたやり返しはせず、リークの手もありながら正当なプロセスで報告書を公表することにこだわります。

有事こそ、冷静な対処が求められる。

卑劣な行為には怒りと憎しみが生まれますが、それを卑劣な行為で返してはいけない。危機においてこそ、人らしくあることが求められるのです。

最近の悪しき歴史をここで掘り返しながら、危機迫る時代に我々がどうあるべきかを問いただす作品。

派手さもスリラー要素もなくても、会話劇と仕事風景だけでドラマチック。アダム・ドライバーの好演と全体の演出など楽しめます。

配信だけにはなりますが、機会があればお勧めしたい作品です。

感想はこのくらいになります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではまた。

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