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「レディ・ソルジャー」”Camp X-ray”(2014)

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映画レビュー
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「レディ・ソルジャー」(2014)

  • 監督:ピーター・サットラー
  • 脚本:ピーター・サットラー
  • 製作:ジーナ・ウォン
  • 製作総指揮:エミー・エリソン、リンジー・ウィリアムズ、エレン・ゴールドスミス=バイン、デビッド・ゴードン・グリーン、ソフィア・リン
  • 音楽:ジェス・ストループ
  • 撮影:ジェームズ・ラクストン
  • 編集:ジェラルド・ブリッソン
  • 美術:リチャード・A・ライト
  • 衣装:クスティ・ウィッテボーン
  • 出演:クリステン・スチュワート、ペイマン・モアディ、ジョン・キャロル・リンチ、レイン・ギャリソン 他

ピーター・サットラー監督による、米軍の収容所のドラマです。監督は今作が長編デビューという事です。主演にはクリステン・スチュワート。

世界的なスキャンダルになった、米軍基地捕虜収容所における拷問や虐待で有名なグアンタナモ基地、キャンプ・エックスレイを舞台にしていますが、社会映画を前面に出した作品ではありません。

日本での公開はしていた・・・?たぶんソフトスルーだったと思います。今回は北米版ブルーレイでの鑑賞です。基本的には最近なんとかクリステン・スチュワートの主演作をしっかり見ていこうと思っていましたので、そのうちの1本になりますね。

軍に入隊したばかりのエイミーは、キューバのグアンタナモ収容所に配属される。そこではテロリストや武装組織との関連容疑をかけられた者が収容されており、エイミーは彼らの監視にあたることになるのだ。

初日から即時対応の経験をし、収容施設内での過酷な現状を体感していくエイミー。そんな中、ある収容者と本のやり取りからもめ事になり、”特製カクテル”をかけられる。

そのアリという収容者は、その後も何度も話しかけてくるようになり、エイミーは次第に彼と親しくなっていく。

映画全体を通して考えるに、無意味さと虚無感が半端なく襲ってくる感じでした。

最初から最後まで、閉塞と不自由そして悲哀に満ちた作品。

収容所外でのシーンがほとんどないというのものありますし、監視任務時のトラッキングショットが空間の狭さをこれでもかと伝えてきて、アングルの少なさ、画面に出るコミュニケーションのための枠の狭さが、気分を悪くしてきますね。

もちろん収容者からすれば、狭い個室にずっと閉じ込められているわけですから、閉塞感はでるはずです。しかし、今作でカメラが追いかけるのはエイミー。

自由を持つ立場の人間です。それでも彼女は監視のために施設内を動き、そして廊下をただグルグルと回って各房を覗くだけ。

自分でも何をしているのかわからない、目がぼんやりとしていくクリステンが印象的。

少しの自由と思えた休暇シーンでも、カメラはエイミーの顔にクローズアップし、その背景に広がる世界をあまり映しません。

彼女は彼女自身を閉じ込めてしまったようで、なかなかうまい撮影だったと思います。

その休暇で彼女が同僚とそういう関係になりかけるシーンがあります。そこで結局は拒絶するわけですけども、後々のアリの発言を受けると、あの男側の押しつけぶりが嫌だったのかと思います。

他人の人生を自分に押し付けられる。

ことごとく親密さを持たないエイミーは、映画全体でも個人的つながりを持ちませんね。

唯一アリだけが少しづつ心を開く相手になっていく中で、ここにほんのり社会性を混ぜ合わせてきています。そういった点は現実問題とつながりはあれど、そこまで深くは描写されていなかった印象です。

異常さが一番出ているとすると、軍人ですらない人を収容している事実。そしてローテーションの時期を知っている発現からくる、終わりのない収容期間の恐ろしさ。

ほとんど理由もあかされずに不自由を強いられているアリですが、それはエイミーも同じであると示されていきますね。

夜間のシフトへ回されるときなども、「軍では何故なんて聞くな。言われたら従え。」と言われ、エイミーも理由もわからずただ従うだけ。彼女もいつ食べていつ働いていつ寝るかを自分で決められないのです。

そして親交を深めたアリと、最後に扉越しに会話するところで、今までになかったアリ側の視点で撮影されます。つまりここではエイミーの顔が小さなガラス越しに見えるようになり、彼女の方が閉じ込められているように見えるのです。

小さな口を通してつなぐ手。互いに何かに押し込められ身動きが取れない者が、互いに希望を持たせようとしているのですね。「何が起きるかは分からない。」

サットラー感覚は閉塞感とそこでもがく人を、鏡写しで描いていると思います。

クリステンの眉間にしわを寄せながら何も言わずに苦悩する様も、繰り返される敬礼シーンで「自由のために」を言わなくなるところも素晴らしい。

敵意や恐怖、また危うい倫理よりも、なにより共感することを強く感じます。

実際女性であることとか、米軍基地での収容に関しての問題提起とかでは不足している作品ですが、不自由のなかで生まれる絆は見どころであると感じた作品でした。

そんな感じでレビューはおしまいです。まだクリステンの作品観たいですね。

ずっと待ってた”Certain Women”は「ライフ・ゴーズ・オン」という邦題でDVDスルーらしいですが、それも楽しみにします。それでは、また。

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