作品解説
映画『ファンタスティック・フォー(MCU版)』とは?
数々のスーパーヒーローを生み出してきたマーベル・コミックス初のヒーローチーム「ファンタスティック・フォー」。その人気シリーズが、ついにマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の世界観の中で新たに映画化。
本作は、過去にも複数回映画化されてきた名作を再解釈した、最新アクションエンターテインメント。宇宙ミッションをきっかけに特殊能力を手にした4人のヒーローたちが、地球に迫る脅威に立ち向かいます。
豪華キャストが集結!ファンタスティック・フォーを演じるのは誰?
MCU版『ファンタスティック・フォー』では、実力派俳優たちがチームのメンバーを熱演。
- ペドロ・パスカル(「ワンダーウーマン1984」)
- バネッサ・カービー(「ミッション:インポッシブル」シリーズ)
- エボン・モス=バクラック(『一流シェフのファミリーレストラン』)
- ジョセフ・クイン(「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」)
それぞれが個性豊かなヒーローを演じ、新たな「ファンタスティック・フォー」を演じます。
監督は『ワンダヴィジョン』のマット・シャンクマン
メガホンを取るのは、MCUドラマ「ワンダヴィジョン」を成功に導いたマット・シャンクマン監督。繊細なドラマ描写とダイナミックな演出の両立に定評があり、本作でもその手腕が期待されています。
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〜あらすじ〜
宇宙ミッション中の事故によって、特別な能力を得た4人の男女は、ヒーローチーム「ファンタスティック・フォー」として世界の平和を守ってきた。
チームの頭脳である天才科学者リード・リチャーズは、体をゴムのように自在に伸縮させる能力を持ち、リーダーとして仲間を支える存在。彼の妻スー・ストームは、透明化やエネルギーシールドを操り、冷静な判断力でチームを支える精神的支柱だ。
スーの弟であるジョニー・ストームは、全身を炎に包み空を駆ける陽気なムードメーカー。そしてリードの親友ベン・グリムは、岩のように頑丈な肉体と怪力を持ちながらも、心優しく繊細な一面を併せ持っている。
ある日、スーの妊娠という嬉しい知らせが舞い込み、彼らの絆はさらに深まる。
しかしその矢先、リードのある選択がきっかけで、惑星をも飲み込む宇宙の脅威・ギャラクタスが地球に迫る。
滅亡の足音が近づく中、ヒーローである前に“ひとりの人間”として葛藤を抱える4人は、それでも世界を守るために立ち向かう。
感想レビュー/考察
軌道修正したMCUによるヒーローチームは独立した世界で繰り広げられる
連続性を売りにしてきたMCUですが、昨今の軌道修正があり行き過ぎたクロスオーバーや匂わせの種まきを控えるようになりました。
あれもこれも鑑賞して、ドラマシリーズも観て、それでやっと話が分かるというようなスタイルにはかなり見直しが入ったものと思います。
そんな潮流の中で、まさしく独立していて予備知識が不要な見やすい作品としてリリースされたのが、今回のファンタスティック・フォーだと思います。
映画の中で早急に語られる、アース何番というナンバリング。これが私たちの生きる世界やこれまでのMCUとは全然違うファンタジーの世界であることを宣言。
だからこそある意味でかなり自由になった今作は、独自のSF世界を思う存分に繰り広げていきます。
1960年代風のレトロクラシックな美術がたまらない
特筆したいのはその世界を作る上での美術や衣装、プロダクションデザインでしょう。
今作は意識的に、1967年代のファンタスティック・フォーのアニメに寄せたルックを持っています。レトロルックでしょうか。
日本では同じアニメが「宇宙忍者ゴームズ」というタイトルで放映されていたそうです。名前が全部変えられていますが、ゴム人間や火の玉男など、しっかりファンタスティック・フォーです。
60sアニメのルックや世界観を作り上げている、SFでありファンタジー。
主人公チームが乗っている車も、変形して空を飛んだりと行ったものですし、全体にパステルにも近い色合いでカラーがあり、そして丸みを帯びたフォルム。
そうしたデザインのトンマナも逆に目新しいですが、60sの町並みの中でうまく溶け込ませています。
また、ファンタスティック・フォーの本部内に見られる小道具や家具なんかのデザインは、見ていて気持ちがいいものでした。デザインのセンスが高くおもしろい。
個人的にはこの全体のデザインがすごくハマった作品でした。
世界に受け入れられたヒーローが直面する“論争”という試練
さて、お話の方ですが、直近に展開されたDCコミックの「スーパーマン」に似ている気もしました。
既にヒーローやヴィランが存在し、様々な歴史が積まれている世界。超人や超能力が不思議なことではなくて、もうみんなのヒーローとしてグループが完成しているのです。
ダイジェスト的に過去の活躍が紹介され、そしてその世界にはすでに物販レベルで浸透し、議論のないすっきりとした世界。しかし、今回のギャラクタスの件によって、一つの大きな物議と議論を巻き起こしてしまいます。
この仕組みは「スーパーマン」にそっくりだと思いました。あちらでも彼が彼らしく振舞う故の論争が巻き起こりましたからね。
フランクリンか地球か──極限の選択に示されたファンタスティック4の“家族”の定義
そしてこちらも同じ。
ギャラクタスのもとへ交渉へ行ったファンタスティック4は、なんと生まれたばかりのリチャードとスーの子ども、フランクリンを差し出せば、地球は見逃してやると言われて帰ってくるのです。
個人と大義、ヒーローとして何をどこまで犠牲にするのかという議論になります。正直その議論自体はそこまで深堀されるってこともないのですが、かなり厳しい問いを突き付けられてしまうのは事実。
そして、それに対する返答がまさに、ファンタスティック4というヒーローチームを表すものになっています。
家族を絶対に見捨てないこと。
そしてその家族というのは、ファンタスティック4のメンバーということだけではなくて、地球の全員のことを指している。だから、無理と思える選択を迫られそこでどちらかを選ぶことになっても、その上を行く選択肢を自分たちの手で開いていくのです。
シルバー・サーファーは自己犠牲をして自らの家族と星を救った。でも結果としてギャラクタスを他の星に導くことになり、多大な犠牲を払うことになります。
そこは対比になっていましたね。
力任せじゃない!科学と判断力でギャラクタスを超えるファンタスティック4
そして私が気に入ったのは、ファンタスティック4の面々がこの最大の危機に、新しい選択肢を見出していくことと、そのやり方が超人パワーの応酬とか、もっと強い力でギャラクタスをやっつけるなんて単純なものではないことです。
家族への愛情と同時に見せるのは、彼らがもともと優秀な宇宙飛行士であるということ。
ギャラクタスのもとから逃げる際の亜空間飛行とか、ブラックホールの周りを移動しながらのシーン。
あそこでスーが出産をすることになりつつ、重力網から逃げ出そうとし、そしてシルバー・サーファーの追跡からも逃げきろうとする。ものすごく複雑な事象が同時進行する中で、最低限のコミュニケーションとチームワークで解決する。良いシーンだと思いました。
それぞれがやはり宇宙での活動のプロなんだなと感じましたし。他にも、ギャラクタス対策では次々に発想を転換しながら打開策を見出していく。
地球ごと皆でギャラクタスから避難するという、コミックらしい荒唐無稽さも良いし、その失敗をすぐに転換させて次の解決策に映すとか、頭使うチームだってところが明確です。
コミックの世界観をそのまま落とし込んだ、レトロクラシックデザインや、誰をも見捨てない心と世界に愛され愛するヒーローというシンプルでも難しい描き方を、見事にやってのけていると思います。
MCUもごちゃごちゃしすぎてきた中で、かなりコミックの心に原点回帰してきた印象。今回の感想はここまで。
ではまた。
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