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「ブルー・リベンジ」”Blue Ruin”(2013)

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BlueRuin-2013-movie 映画レビュー
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「ブルー・リベンジ」(2013)

  • 監督:ジェレミー・ソルニエ
  • 脚本:ジェレミー・ソルニエ
  • 製作:リチャード・ピート、ビンセント・サビーノ、アニシュ・サビアーニ
  • 音楽:ブルック・ブレア、ウィル・ブレア
  • 撮影:ジェレミー・ソルニエ
  • 編集:ジョシュア・ブロッシュ
  • 出演:メイコン・ブレア、エイミー・ハーグリーブス、デヴィン・ラトレイ 他

BlueRuin-2013-movie

「グリーン・ルーム」のジェレミー・ソルニエ監督が2013年に自ら脚本・監督を務めた復讐のスリラー映画。

カンヌでは批評家連盟賞を獲得し、低予算で小さな作品ながら非常に高い評価を得ました。

主演は「グリーン・ルーム」でも再び出演していたメイコン・ブレア。

作品は日本での一般公開はなく、渋谷HTCの未体験ゾーンで2015年になって初めて劇場で観れました。

私は批評筋が当時のベストで結構挙げていたことは覚えていましたが、結局限定公開時も観に行けず、ソフト販売後もなんだかんだで後回し。

今回はAmazonプライムビデオにて配信で鑑賞となります。

ちなみに原題は「青いオンボロ」となり、主人公の運転するセダンを指していますね。

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ボロボロの青いセダンに住む、ホームレスのドワイト。

人の家に忍び込んで風呂に入ったり、ゴミをあさって食料を確保したり、どん底の人生を送っている。

そんなとき彼の元に警官がやってきて、ある男の釈放を伝える。

激しく動揺するドワイトだったが、彼はすぐにセダンにガソリンをつめ武器を手に出発するのだった。

このような人生に陥れたその存在を殺すために。

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ジェレミー・ソルニエ監督、大好きなタイプの作風です。

台詞は少なく、映像ビジュアル語りが非常に厚い。冒頭の20分とか、この作品のキックオフまでの間に、(その後全体に関してもですが)台詞なんてほとんどないのです。

ゆっくりと湯船につかっている男が、やたらと警戒していて、これは侵入者の兆し?と思えば、親子の登場で一目散に窓から逃げ出す。

そして遊園地の影で残飯をあさったり。

彼がいかに外れた人生を送り、そして言ってしまえば日の当たる場所ではなく闇の中に生きていることが、重なっていく映像だけで語られるんです。

そして全編少ないセリフながらに壊れた男を演じてみせる主演メイコン・ブレアの素晴らしさも堪能できますね。

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それに加えて今作は、復讐物語でありながらオーソドックスではない。

過去というのがまさに映画の中では過去として扱われ、それは再度訪れることもできない普遍の事実として扱われます。

話を常に前へ前へと進める中で、徐々に何が起きたのかはわかっていきますから、泊まって振り返ることもなく、興味が持続していく。

次に何が起きるのか、どこへ向かうのか。それを見ていくことでさらにドワイトと家族の物語の理解が進むわけです。スマート。

さらに主人公の造形に関しても、ドワイトは決してマッチョでないし、ジョン・ウィックのような執念とかにおける強さも感じず、本当に弱い。

それも相まってとにかくひやひやしますし、正直いつやられてもおかしくない。

若干コーエン兄弟的空気が匂うのも、ドワイトの頼りなさがコメディに

も(決して実際に笑うわけではないものの)見えるからかもしれません。

今作の人物の弱さ、壊れた感じは非常にテーマ性である復讐にリンクしていると思います。

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姉とダイナーで会うシーンがあるんですが、ドワイトは身を綺麗にしても死んでいるくらいに覇気がなく、そして姉が登場時間は少なくとも観ていてつらい。

一見幸せな子持ち女性ですが、弟ドワイトとあって男の話になってからの重苦しさや魂を引き裂かれたような表情。

恨みを晴らすうえでの爽快感もなく、ただただ死体が増えて事態が悪化していく。

そもそも暴力から始まり、そこが生むのはただ次の暴力だということ。そしてそれはドワイトのように根は温厚そうな人ですら根本的に破壊してしまう。

自分でも終わらせ方が分からないというくらいに、暴力の連鎖は意味もなく続いてしまうのです。

もう語りつくされた復讐の物語の中で、そのジャンルのエンタメ性を抑えながらも、映像によって語らせることで観客を引っ張り続け、暴力が破壊するあまりの大きさをあぶりだします。

非常に楽しめた作品で、復讐物語の中でもユニークさとして記憶に残っていくものとなりました。

感想は以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

それではまた次の記事で。

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