「クルエラ」(2021)

  • 監督:クレイグ・ギレスピー
  • 脚本:アライン・ブロッシュ・マッケンナ、ジェズ・バターワース、デイナ・フォックス、ケリー・マーセル、トニー・マクナマラ、スティーヴ・ジシス
  • 原作:ドディー・スミス『ダルメシアン 100と1ぴきの犬の物語』、ビル・ピート『101匹わんちゃん』
  • 製作:クリスティン・バー、アンドリュー・ガン、マーク・プラット
  • 製作総指揮:エマ・ストーン、ミシェル・ライト、ジャリッド・ルボフ、グレン・クローズ
  • 音楽:ニコラス・ブリテル
  • 撮影:ニコラス・カラカツァニス
  • 編集:タティアナ・S・リーゲル
  • 出演:エマ・ストーン、ジョエル・フライ、ポール・ウォルター・ハウザー、エマ・トンプソン、マーク・ストロング、ジョン・マクリー、エミリー・ビーチャム 他

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「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」のクレイグ・ギレスピー監督が、ディズニーアニメーション「101わんちゃん」のヴィランであるクルエラの誕生を描く実写映画。

主演は「ラ・ラ・ランド」「女王陛下のお気に入り」などのエマ・ストーン。

また今作自体のヴィランにはエマ・トンプソンが出演し、その他マーク・ストロング、ジョエル・フライ、ポール・ウォルター・ハウザーも出演。

ディズニーアニメーションのプリクエルでありまたスピンオフでもある作品になり、さらには実写化というメディア変遷も含んでいます。

ちなみにアニメーションの実写化は「101」と続編の「102」というものが製作されていますが、今作はそれらとの繋がりはありません。

コロナ感染症の蔓延から公開が危ぶまれてはいましたが、ワクチン接種が進み映画館が再開し始めた北米では、「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」と同週末に公開され、以前ほどの勢いではないものの、久しぶりにボックスオフィスを沸かせる成績を出しました。

日本でも公開されましたが、配信チャンネルディズニー+と劇場の同時公開。

ちなみにディズニー+の方は「ラーヤと龍の王国」と同じようにプレミアムチケットが必要です。

私はディズニー+入ってますが、劇場鑑賞したくて映画館へ行って来ました。

小さいところだったのもあるんでしょうけど、普段あり得ない満席でしたね。

いつもの客層と異なって若い人が多かったです。

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パンクムーブメントが沸き起こっている70年代のイギリス。

エステラは悲しい過去を背負いながら、大好きな裁縫とデザインを続けてファッションの仕事を夢見ている。

ただ現実は孤児だったころからの仲間ジャスパーとホーレスと盗みを繰り返して暮らしているのだった。

しかしある時、町の服飾店で下働きをする中で、酔った勢いでショーケースをオリジナルに飾り直し、それが高名なデザイナーであるバロネスに認められたことで転機が訪れた。

厳しいバロネスの元才覚を表していくエステラであったが、バロネスの持っていたネックレスから彼女の過去と運命が動き始めた。

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全体には大本となっているアニメーションの設定(人物名など)をなぞっていると思いますが、今回作品を観ていく上では過去の作品知識は不要になっているものと感じます。

というか個人的にそこまでもとのアニメの熱烈なファンではないこともあるかもしれませんが、小ネタはある程度入っていても、知らないからと言って楽しむことができないとか、理解に差が出るということはないのかと思われます。

今回むしろ自分が感じたのは、監督クレイグ・ギレスピーのテーマが前作である「アイ、トーニャ」と非常に似通っているという点でした。

なのでむしろそちらを見ていると共通点が見えて個人的には面白かったです。

そもそもポール・ウォルター・ハウザーがそちらで大ブレイクした俳優ですし。

端的に言うと、世間や周囲、生まれから求められるヴィラン(悪役)を演じる又は内包しているがゆえに、それに沿って生きるしかない女性を描く物語であること。

また、毒親映画である点も酷似していますね。

反抗、反逆者を主人公にしていたり、時代物であったり、そしてスタイルとしても主観視点で過去を振り返っていくものであったりと、すごく作りは似ている作品になっています。

そこでやや複雑な事情を抱えることになるクルエラというキャラクターについてはトーニャ・ハーディングよりは分かりやすく分裂します。

ラベルとしてのトーニャとスケートを愛する女性トーニャをマーゴット・ロビーが苦悩をもって演じたことも素敵でしたが、今作も主演エマ・ストーンの力はすごく大切な要素。

彼女がふざけた感じで見せる繊細な少女と、生意気なクソガキ感の行き来は、それこそ「小悪魔はなぜモテる?!」から始まっている気がしますが、「女王陛下のお気に入り」でも炸裂している点です。

彼女のエステラとクルエラの内包、演じ分けが非常にエンタメとして楽しく、また見事に体現されていました。

エマ・ストーンの触れ幅と別人格の同時成立の力が印象に残りました。

加えて、着こなしの素敵な衣装に関しては、今作においてはまさにアイデンティティを示す道具になっています。

たとえそれらが反抗的であったり、ヴィランと定義付けられても、それが自分だから変える必要はないということです。

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そんなエマ・ストーンに立ちはだかるもう一人のエマが、エマ・トンプソン。

今作の本当の意味でのクルエラであり、度肝を抜くようなド畜生です。鬼畜の極み。

彼女のシーンスティーラーっぷりもすさまじいです。そもそもカリスマ的な存在だと示されるこのバロネスですが、そこに説得力をもたらしているのがエマ・トンプソンなのです。

気品もあるし衣装の着こなしも良い。しかし彼女には人間性を欠片も感じませんね。

エステラと一緒にランチに行った時のオーダーがまさにその女王陛下感を象徴するシーンでした。

冷徹なヴィランとして、このクルエラを引き出すきっかけとしてもとてもいい存在感です。

俳優陣としては私はポール・ウォルター・ハウザーがとにかく好きなことに変わりはありません。

彼は「リチャード・ジュエル」にも出て、シリアスドラマもやっていますが、そのコメディ感を携えたキャラクターが好き。

今作でも”アングル”のところとか、チワワとの掛け合いとかかわいい感じある幼稚なコメディ感が全体のトーンの中に癒しをくれています。あと訛りもおかしいですしw

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彼らを囲むプロダクションデザインや衣装デザインも素晴らしい点として挙げます。

エマ・トンプソンは70年代イギリスを実際に若いころ経験しているので、その作りこみの完成度からセットではすごくノスタルジアを感じたほどと言いますが、本当にセットや美術も良かった。

カラーリングについてはどことなくですが、クルエラが白黒のパーティにて赤を炸裂させる点など、赤=血からのキャラクターの展開に対する暗示にも思えたり繊細な設計かと感じます。

あとは映像技術。

犬たちが全てCG処理であるのは及第点というか、まあある程度の妥協たる不自然さはありますが、動物というよりもむしろキャラクターですし、そもそもの世界観がややアニメ感あるファンタジーなので良いでしょう。

私はカットを割らない感じで見せられる空間設計などは効果的と思います。

隠れ家にエステラが付いていくシーンや盗みからのバスに乗るシーンなどの流れ、つながりと連帯がカット割りから見えます。

またはじめてバロネスの店でエステラが下働きするシーン。

どんどんとフロアから遠ざかっていき、まったく理想と遠いトイレにたどり着くあたりも、状況説明込みの長回し風演出で効率のいい説明になっています。

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たしかにエステラは大人しくしていればいいキャリアを歩めたのかもしれませんし、どこかで出自から解放された可能性もあります。でもママのいう良いエステラでいつ続けることはできない。

それはある意味で世界とバロネスに立ち向かうために必要だった。クルエラが必要だったのです。

どこまでも自分にだけ乾杯していくバロネスを、ついにクルエラに乾杯させたシーンのカタルシスは格別。あれはエステラには成し遂げられなかったでしょう。

サバイバルのためにクルエラが必要で、結果としてはヴィランとなったという設定で、今作におけるクルエラがそこまで極悪非道ではない、むしろ同情できるという点はマイルドになっています。

総合するとクレイグ監督の語るヴィラン論がまた展開された作品だと思います。

ファッションも音楽も、そのルックはすべてアイデンティティです。それが他の人間にどのように映ろうとも、どんなレッテルを貼られようとも、それが自分なのです。

その結果としてたとえヴィランと呼ばれようが関係ない。それなら最高のヴィランになってやると、今作はエネルギッシュに叫ぶ。

2人のエマそれぞれの適役加減とか、安心と信頼のポール・ウォルター・ハウザーとか、プロダクションデザインの見事さに加えて必要な役者がそろっていることが大きいです。

大傑作とはいきませんし、やや大味な部分もあるにしても、活力ある楽しい作品でおすすめです。惜しいのは映画館で楽しめる機会が少ないことですね。

現時点で(2021.6.5)、監督もまたクレイグ・ギレスピーで続編製作が決まったとのことで、楽しみにしていましょう。

今回の感想は以上です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではまた次の映画感想で。

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