「かごの中の瞳」(2016)
作品解説
- 監督:マーク・フォスター
- 脚本:マーク・フォスター、ショーン・コンウェイ
- 製作:マーク・フォスター、クレイグ・ボームガーテン、ジリアン・クーグラー
- 音楽:マルク・ストラホフスキー
- 撮影:マティアス・コーニッグスウィーザー
- 編集:ヒューズ・ウィンボーン
- 出演:ブレイク・ライブリー、ジェイソン・クラーク、アーナ・オライリー、イヴォンヌ・ストラホフスキー 他
今年2018年には「プーと大人になった僕」が公開された、マーク・フォスター監督作。こちらは2016年制作の作品ですが、日本での公開はプーさんより後になりました。
今作は監督自らも脚本を勤めています。
主演は「ロストバケーション」などのブレイク・ライブリー、「猿の惑星:新世紀」(2014)などのジェイソン・クラークです。
最近ブレイク・ライブリーはいろいろなジャンルに出ている気がしますね。
公開すぐではないですが、次の週にTOHOシャンテで見てきました。連続で見た最後の作品とあってちょっと疲れていました。入りはなかなか良かったです。
~あらすじ~
幼い頃の事故により視力を失ったジーナは、夫のジェームズに支えられ生きてきた。
献身的な夫のおかげで、日々楽しく過ごし、見えない世界を想像しながら送る日常。
しかしある時診察を受けた眼科医は移植手術により右目の視力を取り戻せる可能性があると言う。
妻のためを思いジェームズは手術の段取りを進め、ジーナは10数年ぶりに世界を見ることになが・・・
感想レビュー/考察
映画の大きな要素、というかまあ大きく言えばこれで成り立っているのですが、それは映像と音です。ビジュアルとサウンドだけで紡ぐ物語。
そういう意味ではマーク・フォスター監督は今作でそこに注力していると思います。
盲目のジーナを通して、音の可視化やら見えない人にとっての世界などを、こだわったビジュアルで描き出していて、そのスタイルは特徴的だったと感じます。
始まってすぐに見えるジーナの視界。
目の見えない状態でのセックスには、大量の裸の男たちの、波打つようなイメージが挿入され、ただのプールもジーナにとっては大海原です。
見えないからこそ、その見えないというイメージを観客に見せていく点で、自由かつスタイリッシュな映像表現は見所かと思います。
視界を表現する朧気な光など含めて、プールも映像には強いこだわりが感じられます。
ただしその映像表現がそれだけにとどまってしまっているのですが。
見えるものと見えないものそ交換的な要素も入れ込まれてはいて、ジェームズに目隠しをする場面があり、後にその録画を繰り返し見て、彼女を見守る側だった自分が、逆に自分の見えないところでの彼女の姿に、重大な喪失を感じるような場面になっています。
ですが、それをもってしても、ジェームズの感情の動きは掴みづらく、飲み込みづらいと感じました。
ヒッチコック映画のような、自分の望む”ジーナ”が失われていくことへの恐怖。そしてそこからの凶行。
夫が支配的になるという点では、「ガス燈」を彷彿とさせますが、いずれにしても脚本や人物演出がハッキリしないかと。
今作がサスペンス、スリラーの要素を強めるまでが長すぎるのです。
そして強まったときには、上述の支配要素はあまり無いと言うか。
クラブへ遊びに行き、踊りたいというジーナに対し、ジェームズは「踊るなんてバカらしく見えるよ」と言いますね。
実際にジーナの世界が全てジェームズによって定義されているので、それはサイコスリラーにも描けますが、この段階では別に主題が始まってすらいないのです。
いつからジェームズは支配的になったのか?
監督は自分を手に入れていくジーナに到達するまでに時間をかけすぎてしまったように思います。
ジーナが髪をブロンドにするまでに、映画は2時間くらいたっているんじゃないかな?
自立に対する残酷な支配の構造が確立する前に、中途半端なジェームズの謎めいた感じや、ジーナの感覚を出しているので、プロット進行がハッキリしません。
加えて気になるのが、余計にも思えるエロスとセックスの強い香りです。結局、世界が変わるとか、人への依存とか出はなくて、単純に妻が他の男と寝ることへの恐怖になってませんか?
それであれば、視力どうこうは関係なく、ホントにあくまでビジュアルを見せたかっただけにすぎないと感じてしまいます。
盲目ゆえにジーナが歌に全てを込めている点とか、逆転構造があるとか、細やかなところで良いと思う要素はあるのですが、全体に散漫で筋が通らず、何がしたいのか分からなかったです。
事故のトラウマを乗り越えようとする要素とか、正直いるのかなと思いますし。
とりあえずビジュアルはスタイルが感じられますし、ブレイク・ライブリーの演技は楽しめますからそれに興味があればオススメです。
感想はこれで。それではまた~
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