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「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」”Eighth Grade”(2018)

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映画レビュー
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「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」(2018)

  • 監督:ボー・バーナム
  • 脚本:ボー・バーナム
  • 製作:イーライ・ブッシュ、スコット・ルーディン、リラ・ヤコブ、クリストファー・ストーラー
  • 音楽:アンナ・メレディス
  • 撮影:クリストファー・ウィード
  • 編集:ジェニファー・リリー
  • 衣装:ミッチェル・トラヴァース
  • 出演:エイリー・フィッシャー、ジョシュ・ハミルトン、エミリー・ロビンソン、キャサリン・オリヴィエ、ジェイク・ライアン、ルーク・プラエ 他

ボー・バーナム監督の初長編作品となる今作は、アメリカの8th Grade、日本でいうとだいたい中学2年生の少女の成長を描く作品。

主演には実年齢としてもぴったりのエルシー・フィッシャー。

彼女は「怪盗グルー」シリーズにて娘のアグネスを演じていた子です。

今作ではその演技が高く評価され、ゴールデングローブ賞にもノミネートしました。

また彼女の父親役にはジョシュ・ハミルトンが出演。

公開時の高評価、各映画祭や賞レースでの注目もあって、私も早く観たくて、海外版を輸入して鑑賞しました。

※9/20(金)より日本公開が決定!

高校生目前の、8th Grade最終週にさしかかったケイラ。

学校のイベントでは”もっとも静かな学生”に選ばれてしまうほど、あまりうまく学校生活を送れていない彼女は、スマホ画面を通して同級生の生活を追ってみたり、思いを寄せる男子であるエイデンのインスタをのぞいたり。

ある日学校の人気者のケネディの誕生日会に誘われるも、上手くみんなに馴染めなかったり。

ケイラは次に待ち構える高校生活に大いに不安を抱きながらも、ミドルスクール卒業までの日々を送ることに。

批評家の評価がとてもとか抜きにしても、これが映画とかひいては創造物、つまり人が演出して”作った”物だとは思えません。

脚本があって、セリフがあり、演出され撮影され編集された映像作品だとは信じられないような映画になっています。

それぐらい、自然で、少女の日常とか人の成長のあの時、人生の一欠片をそのまま切り取って保存したようなものになっています。

正直こんな映画が作れてしまうことが信じられません。

冒頭のYoutubeへの投稿動画でも、もちろん自身のなさとかティーンの話し方という演出ではあるんでしょうけれど、エルシー・フィッシャーの喋りが、セリフをしゃべっているとは思えない自然さです。

演技力がすごすぎて追いつけない。

“Uh”、”you know”、”like”。。。

言葉の間の単語がとても多く、まさに自分でも何が言いたいのか、どう考えているのかを分かりきっていない感じがします。

さらにエルシーはそのセリフの運びだけでなく、結構フィジカルでの演技も巧みだと思いました。

うつむきがちで超猫背な姿勢、なんとも斜めに下がった肩の後ろ姿。ほんとにイケてない。

でもしっかりそう見えるのがスゴいですよね。

これは個人的な好みもありますが、やはり演出を感じないそのビジュアルテリングも感心したところです。

今回はケイラの視点での体験に、音楽が重なるというシーンが多くあるんですが、その若干の幼い感じのポップミュージックと、しかし同時にケイラにとってはまさに戦場にでも赴くかのような微妙に軍隊マーチチックな音楽で、ツボでした。

ケイラもあまりしゃべる方ではないですけれど、まあ仕草やスマホを眺める行為なんかでも十分にこの年頃の葛藤が見て取れます。

いつもスマホの画面越し、窓ガラス越しに眺めていた世界へ踏み出していく。

思い切り感情を表に出して、言いたいことをはっきりということすらできない。

ケイラ自身一番どうしたいとか分からないからなんだろうと思います。

ケイラを通して見る今のティーン。

とにかくスマホを眺め、没頭しながらも友達関係って変わらないなと思ったり。

避難訓練が学校銃撃に備えるものだったり(この点は正直悲しいことですね)、確かに環境は結構変わっているんですが、本質的に切り取っているのが10代前半の終わり、ちょうど大人への準備期間に入るくらいになっていて、他人事じゃないです。

妙なことやってるかわいい同級生たちもいるし、微妙にあたふたしていてかわいい。

ケイラが好きな子を見れば勝手にエレクトロミュージックが流れ、そのエイデンはもしテロリストが来たら・・・オレが一人でたたきつぶす!という痛いけど責められない妄想まで。

いまこの状況も、この現在地もとにかくイヤだ。

自分も嫌だ。

ここじゃないどこかで、こうじゃない自分になれたらいいのにと、もがき続けるケイラを、優しく包み込んでくれるのが、ジョシュ・ハミルトン演じるお父さん。

「君の名前で僕を読んで」のマイケル・スタールバーグも映画史上に残るベスト・パパでしたけど、今作も負けてません。いや、それ以上かな。

娘が心配で心配で、でも決して怒鳴りつけたりしない。

少しでも会話が出来たらとジョークを突っ込んでみたり(それが逆効果なのもかわいそうw)、友人の輪を広げようと画策したり、かと思えばどんな子たちか心配で付いて行ってしまったり。

やはり「私の夢とか希望とか。」を燃やしているあそこが、あまりしんみりしない今作での一番の感動ポイントだったかな。

自分の存在それだけで、どんな自分でも、いてくれることに感謝してるし勇気づけられる。

お前を誇りに思う。こんな言葉をかけてくれるんですもの。

ずっと自分はダメだと、正直大人になったうえでも人間として抱え込む悩み。

私たちはみんな、ちょうどこのケイラ当たりの年ごろから、自分の人生に関して、自分のアイデンティティに関して考えると思うんです。

そして中学最後や高校生活とその先に地獄を感じてしまう。

でもパパが言っているように、自分でも気づかないうちにどんどん成長していく。

何も教わらずにできるようになってることって本当に多いですよね。

ほとんど誰にも見られていなさそうなケイラのYoutube動画。ゲイブは見てくれていました。

彼も彼で妙な空回りをおこしてかわいいですが、ケイラにとってはとても大切な友人でしょう。

自分も知らないところで、きっと誰かが見てくれているものです。

幼い頃、自分の将来に期待だけしていればよかった頃から、14、5歳にして私たちは早くも人生の振り返りを迎えます。

そのとき、今の自分の人生が輝かしいものだと、自信をもっていえることってあるんでしょうかね。

でも自分が気付いていないだけで、とても素敵な人間になれているのかもしれません。

先の自分へ記録を残していくケイラ。彼女が過去の自分へメッセージを届けられたらいいのに。

ただ、この作品自体が、先へ期待だけしていたすべての人たちにとって、過去の自分を抱きしめてあげる癒しになると思います。

ボー・バーナム監督が素晴らしい才能エルシー・フィッシャーと作り出した、すべての人のドキュメンタリーと言っていい作品。

ほんとに、これが作ったものだなんて信じられません。これは必見のおすすめ。

今現在、日本公開は未定?ぜひこれは一般公開して、全ての人に観てほしい。かなりのおススメ作品でした。

感想はこのくらいです。それではまた次の記事で。

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