「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」(2015)

  • 監督:ガブリエーレ・マイネッティ
  • 脚本:ニコラ・グアッリャノーネ・メノッティ
  • 製作:ガブリエーレ・マイネッティ
  • 製作総指揮:ヤコポ・サラチェーニ
  • 音楽:ミケーレ・ブラガ、ガブリエーレ・マイネッティ
  • 撮影:ミケーレ・ダッタナージオ
  • 編集:アンドレア・マグオーロ、フェデリコ・コンフォルティ
  • 出演:クラウディオ・サンタマリア、イレニア・パストレッリ、ルカ・マリネッリ 他

永井豪によるロボットアニメ「鋼鉄ジーグ」を基に、イタリアのガブリエーレ・マイネッティ監督が撮った作品です。結構前にイタリア映画祭か何かで少し話題だったのを聞いていましたが、あまり知らない作品でした。

イタリアのアカデミー賞にあたる賞では16部門ものノミネートをし、主要な賞をさらっていたという作品。

有楽町のHTCで平日の夜に観てきましたが、そこそこ人が入っていましたね。この作品けっこう笑えるところがあり、楽しくみてまいりました。

イタリアのゴロツキであるエンツォはある日、警官から逃げる際に飛び込んだ川で、ドラム缶の中の謎の液体を浴びてしまう。

後日、ギャング団のボスであるジンガロの仕事を受けたセルジョの仕事に同行するが、事態がこじれ、撃たれた上にビルから落下してしまう。

しかし、エンツォはすぐに立ち上がり、弾の貫通した肩も何事もないように痛まなかった。

自宅に戻ったエンツォは、自身にとてつもない力が宿っていると気付くのだった。

ある日突然超人になる話は、言ってしまえばどのスーパーヒーローにも、オリジンとして語られるものではあります。そういう点では、今作は鋼鉄ジーグのオリジンという位置ですね。

しかしマイネッティ監督が見せているのは、一人の男の成長でもあるように思えました。

今作で一番私が巧いなぁと感じたのは、主人公に限界をつけたことです。それは能力ではなく、人としての限界。

エンツォは超人的な力気づくも、やることはATM強盗(しかもマーキングペイントで台無し)。さらに金を得ても、今まで買っていたヨーグルトとポルノDVDをより大量に買うだけです。新しいことや領域に踏み込まずただ延長線に留まる、底の知れたちっぽけな男、それがエンツォなのです。

これがコメディとして笑えるんですよ。描写としてはゴアやスリラーはあれど、全体的にはどこか可笑しいものでした。

ですがそれは個人的に素晴らしい設定と描写とも思えます。

エンツォの人柄をさんざんに見せられたあとで、彼がその力を人のために使うことがより大きな飛躍に見えるからです。

正直観客の誰よりもしょーもない男、そんな彼でも頑張れる、変われる。ならば私たちは持てる力をどう使っているのでしょうか?

力をもっていて、そのあるべき姿を知っていて、正しい人間、いや、ヒーローになっているでしょうか?

また、この作品はキャラ付けもよかったと思いました。描かれる誰しもがフィクショナルとリアリティのバランスが良かったと思います。

キャラとしても見えますが、同時に、傷ついたアレッシアも、あてもなくただ有名になろうとするジンガロも、世界のどこかに必ずいるような造形でした。

ルカ・マリネッリ演じるジンガロはすごく印象的でしたね。心底腐ったクズですが、ある意味でエンツォと鏡像関係です。こいつもまた、力を得ても前と言ってることもやろうとすることも変わらないですからね。

そしてアレッシア。壊れたのではなく、壊されてしまった人。中盤で怯え泣くシーンがあえいますが、観ていて本当に辛いものでした。フラッシュバックも具体的なことも出さないのに、あれだけこの女性が受けたおぞましいことを感じさせるのは、素晴らしいと思います。

大迫力の超人バトルではなく、見せ方は結構現実的に抑えつつ、最も大切な英雄たる要因をみせる本作。

映画を通して、エンツォ自身には、一切ヒロイズムの欠片も与えられません。ただそんな彼でも”鋼鉄ジーグ”になり、ヒーローになれる。

全く素質がなくても、彼を信じ、彼をヒーローと思う人がいれば、彼はヒーローになれるのです。

この作品は持たざる者が英雄になる可能性を見せてくれました。ヒーローにはなれない、でもヒーローにしてもらうことはできるのです。

エンツォが初めて超人パワーを人のためにはっきりと使うのは、深い悲しみを追ったアレッシアを喜ばせるとき。その力で一人の女性を笑顔にする。あの観覧車のシーンの美しさは素晴らしく印象に残っています。

この作品は大衆が、そして大切な人が選ぶヒーロー、他者によって定義される英雄の物語でした。

マイネッティ監督の熱い心が込められた作品です。おススメですね。

というところで感想はおしまいです。それでは、また~

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