「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」(2017)
- 監督:アレックス・カーツマン
- 脚本:デヴィッド・コープ、クリストファー・マッカリー、ディラン・カスマン
- 原案:カール・フロント 「ミイラ再生」
- 製作:アレックス・カーツマン、クリス・モーガン、ショーン・ダニエル、サラ・ブラドショー
- 製作総指揮:ジェブ・ブロディ、ロベルト・オーチー
- 音楽:ブライアン・タイラー
- 撮影:ベン・セレシン
- 編集:ポール・ハーシュ、ジーナ・ハーシュ、アンドリュー・モンドシェイン
- 出演:トム・クルーズ、ソフィア・ブテラ、アナベル・ウォーリス、ジェイク・ジョンソン、ラッセル・クロウ 他
ユニバーサルがモンスター映画を世に送り出してもう何十年も経っているのですが、今回はそのクラシックモンスターたちを現代のスクリーンに蘇らせ、そしてMCUなどのクロスオーバー世界を構築し、金を稼いでいこうというのが、”ダークユニバース”です。
その第1作目にして始まりとなるのが、1932年の「ミイラ再生」をリブートした今作。監督には脚本家として活躍するアレックス・カーツマン。
また主演にはトム・クルーズが、今作のヴィランに「キングスマン」(2015)などで活躍のソフィア・ブテラが出演しています。
公開した週末に観てみましたが、トム・クルーズ効果はまだあるようなのか、結構人が入っていました。私はユニバーサルクラシックモンスターは一部を子供の頃見たことがある程度で、以前のリブートシリーズ「ハムナプトラ」もテレビで見たことがある程度です。
~あらすじ~
軍人でありトレジャーハンターとしても活動するニックは、相棒のクリスと共にイラクで遺跡発掘をしていた。偶然にも大きな地下空間を発見し、そこに古代エジプトの墓らしきものを見つける。
軍と共にやってきた研究者のジェニーは、この遺跡がエジプトから離れたイラクにあること、また墓ではなく監獄としての設計であることを不思議に思うが、お宝を見つけたと思ったニックは、頑丈な拘束を破壊し、沈められていた棺を引き上げてしまう。
棺を空輸することになった一行だが、クリスの様子がおかしくなったうえに、機体に大量のカラスが突撃してくるのだった。
今作はミイラの映画。モンスター映画。
そこにキャスティングされたソフィア・ブテラの魅力は素晴らしいものがありました。どこまでCG処理されようが特殊メイクをされようが、彼女の眼差しには十分すぎる力があります。
繊細な目の演技により、アマネットは妖艶であり攻撃的、時に脆く弱々しい姿にも感じられ、恐怖とともに何か憐れみを感じることもあります。そしてそう感じさせておいてなお、根底に渦巻く悪意をほのかに残すところも本当に巧いと感じます。台詞をすごくしゃべるキャラじゃないだけに、彼女がいてくれたことはホントに今作にとって大きいと思います。
で、それだけ見ているとこのミイラ王女様が大暴れして、時に人を誘惑し時に良心を利用してくる極悪怪物映画になるかと思えば、ここにトム・クルーズ映画のラベルが上からべったりと貼られてしまうのです。
トムと言えばなんだかよくわからない不死身感。それはMIシリーズの印象が強くあるからなのか、今作はトムがアクションして走り回って、転げたり落っこちたり。それはそれでいいのですが、モンスター世界において、普通の人間であるはずのトムがここまで不死身だとモンスターの怖さも減ってしまいます。
人が木の上まで飛ばされて落ちてくる。アマネットが怪力をみせようが、トム・クルーズ相手ではコメディになってしまいます。
強大な悪にしては力描写がいまいちで、少しでも炸裂しているかと思えば、トム・クルーズがなんだかんだで無事であったり、その描写をコメディに持って行ってしまう。
で、何しに出てきたレベルのラッセル・クロウ。ダークユニバースのための、MCUのシールド的な位置なんでしょうけども、世界を統合するどころか余計に混乱させているように思えました。
ジキルとハイドは別人にしか見えないくらい、精神が肉体を変容させる怖さがあるはずですが、ちょっと顔色悪くなって本人らしい素行になったラッセル・クロウってだけでした。
とりあえず観終わってみたときに、興奮も恐怖も文句すら何もない。何もなかったというのが個人的に一番驚きました。そこまでこの作品に、作品の世界の中に引きこまれないまま観終わったということです。
引き込みの浅さに関しては、私としては、今作が持ちすぎた役割と目的の多さのせいではないかと思っています。
始まってすぐにアマネットのお話を全く関係のない、画面に登場してもいないラッセル・クロウがほんとにそのまま”説明”するところで不安でしたが、あれこれと観客に見せておく必要があるために、全体にまとまりが欠け、それぞれの要素の相互作用もありません。
それどころか、各要素が邪魔しあっていたとすら感じます。
立ち上がりだからこそ、あまり風呂敷を広げずにしっかりジャンルの確立をみせてほしかったです。
ソフィア・ブテラは身体能力的にもモンスターの演技としても素晴らしい要素だったので、彼女を完全主役にして現代人を次々ぶっ殺す方向で作ってほしいくらいです。
この先のダークユニバース、バルデムさんのフランケンシュタインの怪物やらジョニデの透明人間などがあり、噂レベルでは半漁人とかも?今回でほのめかされていますし、モンスターたちの復活はすごくうれしいのですが、モンスターをしっかり主人公にしてほしいところです。
今回はこのくらいで、それではまた~
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