「アンチャーテッド」(2022)
作品概要
- 監督:ルーベン・フライシャー
- 脚本:レイフ・リー・ジャドキンス、アート・マーカム、マット・ホロウェイ
- 原案:レイフ・リー・ジャドキンス、ジョン・ハンリー・ローゼンバーグ、マーク・D・ウォーカー
- 原作:ノーティードッグ『アンチャーテッドシリーズ』
- 製作:チャールズ・ローヴェン、アヴィ・アラッド、アレックス・ガートナー、アリ・アラッド、マーク・D・ウォーカー
- 製作総指揮:ルーベン・フライシャー、ロバート・J・ドーマン、デヴィッド・バーナド、トム・ホランド
- 音楽: ラミン・ジャヴァディ
- 撮影:チョン・ジョンフン
- 編集:クリス・レベンゾン、リチャード・ピアソン
- 出演:トム・ホランド、マーク・ウォールバーグ、アントニオ・バンデラス、ソフィア・テイラー・アリ、タティ・ガブリエル 他
PS3時代の2007に登場してから10年近く作品を展開し、数々の賞を獲得してきた「アンチャーテッド」シリーズ。
長らく実写映画化の噂もあったシリーズがついに映画化されました。
監督は「ヴェノム」などのルーベン・フライシャー。
主人公ネイトを演じるのは「スパイダーマン シリーズ」や「悪魔はいつもそこに」など大活躍中のトム・ホランド。
またネイトと共に冒険する野心家を「パトリオット・デイ」などのマーク・ウォールバーグが演じ、財宝を狙う組織のボスとして「ペイン・アンド・グローリー」などのアントニオ・バンデラスが出ています。
2009年ころに企画進行を始めながらも、ゲームとの整合性や忠実度から難航し、実際に映画撮影が始めるまでにかなりの時間がかかってしまったようですね。
私はアンチャーテッドシリーズ未プレイですし、そこまで興味もなかったのですが、公開作品スケジュールでちょうど都合がよかったため見てきました。
通常字幕での鑑賞ですが若い層が多く来ていました。IMAXの方はかなり満員に近い状況でした。
~あらすじ~
ネイサン・ドレイク(通称:ネイト)は海洋冒険家フランシス・ドレイクの末裔だが、幼い頃、唯一の肉親である兄のサムと生き別れ、今はNYでバーテンダーとして働いている。
ボトルを扱うその器用な手さばき、そして類まれなるスリの能力を見込まれ、トレジャーハンターのサリーから50億ドルの財宝を一緒に探さないかとスカウトされる。
信用の置けないサリーだが、消息を絶ったサムの事を知っていたことから、ネイトはトレジャーハンターになることを決意する。
早速、ネイトとサリーはオークションに出品されるゴールドの十字架を手に入れる為、会場に。
この十字架は財宝に辿り着く為の重要な“鍵”で、モンカーダ率いる組織も狙っていた。
オークション会場での争奪戦の末、なんとか十字架を手に入れたネイトとサリーは、500年前に消えたとされる幻の海賊船に誰よりも早く辿り着く。
しかしその海賊船ごと吊り上げられてしまうが――
アメリカ、ヨーロッパ、アジア、世界中を駆け巡り、果たして二人は50億ドルの財宝を手に入れることができるのか?
そしてネイトは兄サムと再会できるのか?トレジャーハンターとしての冒険が始まる。
「アンチャーテッド」公式サイトより抜粋
感想/レビュー
アンチャーテッドとゲーム映画の歴史
アンチャーテッドシリーズ自体は未プレイ。学生自体に大ヒットは知っていましたし、PS3のベスト盤を買おうか迷っていたこともあったのを覚えています。
結局ニコニコ動画だかYouTubeだかでプレイ実況を見るにとどまっていました。
ただ、その動画のプレイを見ているだけでも、シームレスな展開でのカットシーンとプレイシーンの切り替わりとか、往年のアドベンチャー物への敬意、没入していく世界とスリリングさは伝わってきました。
当時から「映画のようなゲーム」と評されていましたし、システム的にも他のゲームと比べれば映画化というのはしやすいのかもと感じていました。
10年代のあたりで、ゲーム業界の興隆が極まり、映画俳優のモーションキャプチャの参加や脚本家の参入など、アメリカでは特にゲームに対する投資が増えていましたね。
その中で初期段階からゲームの実写映画というのはいくつか公開され、「プリンス・オブ・ペルシャ」、「アサシン・クリード」、「ウォークラフト」などがありました。
実際昔からゲームの映画へのメディア変遷は多く、トゥーム・レイダーシリーズはアンジーの力もあって有名ですし、バイオハザードなどのホラーゲームは結構コンスタントに制作されています。
21年にはCAPCOMのヒットタイトル「モンスターハンター」も公開されたりと、今やゲーム映画というのは一つのジャンルでしょうか。
害はないトム・ホランドのアイドル映画
そんな中で、映画化しやすそうだとか映画のようだとか言われる作品の筆頭でありながら、実際にプロジェクトが動いたのはかなり遅くなりましたこのアンチャーテッド。
中身はどうだったのかといえば、普通です。
悪くはない。ほかのゲーム原作映画がやらかしていることに比べればある程度楽しく、娯楽になりそして大事なことなのですが、害はないのかと思います。
一番印象として残ったのは、この作品が旬な俳優であるトム・ホランドのアイドル映画として成立している点です。
ファン向けかと思います。
小ずるいトムホ。バーテンダートムホ。イきりトムホ。お兄ちゃん大好きトムホ。やはり根はいい子トムホ。
彼のルックスの少年っぽいかわいらしいところは、兄のサムを慕う感じに適しています。
またワークアウトシーンからアクション含めての身体能力の高さは、スパイダーマンから彼が好きな人にはサービスです。
実際のゲームのネイトはもう少し歳いってた気もしますが、まあ主人公が好ましく映るというのは大切かと思います。
で、害がないというのはゲームを貶めることはないからです。
根本的な改変とか世界観を壊すこと、もしくはゲームがつまらなそうと感じることはなかったです。
またメッセージ的な部分も(ほぼ無いというのもありますが)間違ったものを広めることはなかったかと思います。
人物のドラマも脚本もあってないような、なんとなく気の抜けた感じがしますが、悪さをしていないというので大丈夫です。
冒険自体の意味合いが薄い
ただし、それゆえにやはり特色もないと感じてしまうのが正直な感想です。
パルクール的なネイトの動きがどれほどだったのかという点で見ても、ほかの作品群と比べては見劣りしますし、アドベンチャーとして、冒険映画の系譜で見てもピンときません。
それは冒険の旅路自体にはあまり意味合いが見えないことと、財宝が本当にただの財宝に過ぎないことがあげられます。
なくなったもの=goneといなくなったもの=missingについて、兄弟の会話の中で展開されていますが、この点もっと、財宝と兄のサムを同調させても良かったのかと思います。
サムは死んだという点で話が進むので、財宝探しと兄探しがあまりシンクロしていないように思いました。
また、旅の中で見つけたものはなんなのでしょうか。
ネイトがすごく孤独に生きているという描写があれば、この冒険を通してサリーとクロエに出会ったこと、その友情が彼にとって見つけた宝物ということもできるでしょう。
しかしネイト個人の現在のステータスは不明です。
実写映画である質感の薄さ
ただ一番私が気になったのは実は映像面です。
オープニングでネイトが目覚めて連なる貨物にしがみついている時にすでに出ていましたがCG感の強さ。
終盤に至ってもそうなのですが、グリーンバックであることが分かりすぎる。
技術的な部分の不足もあると思います。
ただここはトム・ホランドが体を張ってることもありますし、しっかりしてほしいところでした。
そもそもコンピュータでのグラフィックスゆえに何でも描ける代わりにいかに現実に近づけるかが課題のゲームを、すべてが現実なのでいかにして嘘を取り払うかの映画に落とし込むのだから。
重力をあまりに感じない着地や人体の動き。運動エネルギーがない。
映像面はゲームではなく生身の実写なので頑張って欲しいところです。
ゲームの方からのカメオもありますし、その他ファンなら気の付くサービスもあるのかもしれません。
楽しむこと自体ができないわけではないのですが、全体にはやはりアンチャーテッドをプレイするのがベストなのかも?
そもそも時間を作品が支配する映画というメディアと、個人それぞれが時間を支配するゲーム。繋がり方も異なるメディアでの移行ってほんとうに難しいんですね。
トム・ホランドファン向け映画としては良い感じになっていますので、その天気になる方は映画館でぜひ。
今回の感想は以上。
最後まで読んでいただきどうもありがとうございました。
ではまた。
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