「ブレッドウィナー」(2017)

  • 監督:ノラ・トゥーミー
  • 脚本:エボラ・エリス、アニータ・ドロン
  • 原作:エボラ・エリス『生きのびるために』
  • 製作:トム・ムーア
  • 音楽:マイケル・ダナ、ジェフ・ダナ
  • 編集:ダレイ・バーン
  • 出演:サラ・チャウドリー、ソマ・バティア、ラアーラ・サディク、シャーイスタ・ラティフ 他

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「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」などで高い評価を受けるアニメーション制作スタジオ、カートゥーン・サルーンの新作。

タリバン政権下のアフガニスタンで拘束された父、残された家族のために少年に変装した少女の物語を描きます。

監督は同スタジオの「ブレンダンとケルズの秘密」で共同監督を務めたノラ・トゥーミー。

今作はアカデミー賞の長編アニメーション部門にノミネートされました。

「生きのびるために」というタイトルで2018年にNetflixで配信がありましたが、待望の劇場公開が2019年末に叶いました。

評価の高さは前から聞いていて、海外版ブルーレイを買うか迷っていたのですが、劇場公開決定で年の映画納として恵比寿にて鑑賞。

年末年始ということもあってか、ほとんど満員の劇場でした。

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2001年のアフガニスタン。タリバン政権下におかれた町では厳しい規則と監視、圧政が続いていた。

その町で父と共に物を売る少女パルヴァナがいた。父は元教師であり戦争にて足を失ってからは家にいる。そしてパルヴァナに本を読み聞かせ、教育を与えていたのだ。

しかしある日、女性を外出させること、そして教育を与えたことでタリバンに拘束され刑務所へと送られてしまう。

家には幼い弟以外に男がおらず、パルヴァナは家族を支えるために髪を切り落とし、男装して町へ出ることになった。

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アニメーション、そして物語にいったい何ができるのか。

劇中で父に物語が好きだったと言われ、「物語なんて役に立たない」と絶望を見せるパルヴァナが、今作で見せる彼女の物語。そして彼女が聞かせていくある少年の物語。

アフガン政権下での残酷かつ無慈悲な実情を、アニメーションという媒体に落とし込む中に、物語とそれを語ることの本質が見えました。

非常に光や淡い色合い、絵画的なアニメーションの味わいが深く、まずスクリーンを眺めていくだけでも楽しめます。

紙芝居のようなテイストを持つ少年の冒険記と、現実が生々しくも端々に映るパルヴァナの生。

しかしアニメーションであるので写実ではなく、デフォルメと柔らかさがあるので、これは人を選ばずに観ることができます。

これが実写であったなら、個人的には辛すぎて観ていられなかったかもしれません。

そういう意味でまず一つ、自分の目で直接見るには厳しい、しかし観ておくべき物語へのアクセスのハードルを下げている点で、本作の物語の役割を感じました。

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そして、パルヴァナの語る少年の物語にもまた意味があるのかと。

彼女が語るのは冒険記ではありますが、これはある人の人生。母ですら口にしなかったその生はしかし、忘れていいものではありません。

幼いザキにそのまま語っても、怖がるだけでおそらく意味も解らない。でもおとぎ話にして語れば伝えられる。

そしてストーリーテリングはその生を運び、おかげで私たちは大切な人を覚えておくことができるのです。

冒険談のアニメーションは特に、割と平面でありながら多層的に感じられ、また色彩や光が美しく素敵でした。

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タリバンやアフガニスタン、背景の知識は不要です。

観るべきは全体背景ではなく、この舞台で生きた少女たち。学校へ通えなくなり、女性であるがゆえにあまりに不自由な現実。

少年の姿になったとたんに世界が広がって、誰かと話せるし物は買えるし、パルヴァナの顔が明るくなりますが、同時にその性差の残酷さが浮き彫りになります。

同じく少年としての生を選んだ少女。埋もれた戦車の上で将来を語る。

私はあのタリバン側についた少年すらまた、環境に左右されたようでかわいそうにも思えました。

彼らのどの生も、この作品という物語を通して知ります。そしてどれもが創造物です。

しかし、そうだとしても、舞台が遠い国で名も知らぬ人の生であっても、物語を通し涙することができます。

父の残した話をもう一度読めば、そこには必ず、誇り高き地であることを思い起こせる。

そしてこの作品を観ると、いつの日か、二人の少女が女性として再会する日を願わずにいられないのです。

ノラ・トゥーミー監督はアニメーションという柔らかな素材に、語られるべき物語をのせ、その力と役割を見せました。

素晴らしい作品、少女の話を多くの人が目にしてくれるといいなと感じます。

今回は感想はこのくらいになります。年末年始に色々映画はありますが、こちらもおススメなのでぜひ。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

それではまた次の記事で。

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