作品概要

2021年に登場し人気を博し、オブ・オデンカークをアクション映画のスターに押し上げた「Mr.ノーバディ」の続編となる本作。
前作のスタイルとテンポを受け継ぎながら、さらにスケールアップした戦いと家族のドラマが描かれます。
メガホンを取るのは、アクション巧者ティモ・ジャヤント
- ティモ・ジャヤント(代表作:「KILLERS キラーズ」「ヘッド・ショット」)
最強キャストが集結──前作メンバーに豪華新キャストが参戦
- ハッチ・マンセル:ボブ・オデンカーク(代表作:「ベター・コール・ソウル」「Mr.ノーバディ」)
- ベッカ・マンセル:コニー・ニールセン(代表作:「グラディエーター」、「ワンダーウーマン」)
- デヴィッド・マンセル:クリストファー・ロイド(代表作:「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ、「アダムス・ファミリー」)
- レンディーナ:シャロン・ストーン(代表作:「氷の微笑」「カジノ」)
とにかく1作目が本当に好きで楽しんだので、続編の話はうれしかったですね。
一時オブ・オデンカークが別のドラマだったかの撮影中に倒れたってこともありすごく心配しましたが、その後無事復帰して今作にも望んでくれたようです。
キャストもそのままにしつつ、シャロン・ストーンが悪役で参加。予告編から結構な強烈印象。最近あまり映画館に行けていませんでしたが、さすがにこれは見逃せないので東京国際映画祭の始まる前にと、公開週末に早速鑑賞。
しかし、回数少ない。。。おかげかかなり混んでいましたし、観客の反応も良くて楽しかったですが。
~あらすじ~

ロシアンマフィアとの壮絶な闘いから4年。ハッチ・マンセルは、焼き払った3000万ドルの穴埋めとして組織に多額の借金を背負い、休む間もなく危険な任務をこなす日々を送っていた。
その代償として、家庭は崩壊寸前。妻や子どもとの距離を埋めようと、家族で久々のバカンスに出かけるが、訪れたリゾート地は巨大犯罪組織の密輸ルートだった。
やがて、地元の保安官との些細な衝突をきっかけに、ハッチは再び暴力の連鎖へと引きずり込まれる。休暇のはずが、組織を相手にした壮絶な全面戦争の幕が上がる。
感想レビュー/考察

続編への期待と不安:前作の良さを壊さずにどう発展させるか
2021年の「Mr. ノーバディ」は使い古されてきた着想の話しながらも、純粋にエンタメとしての質を高めた痛快な作品でした。
そしてなにより、ボブ・オデンカークを一躍アクションジャンルにおけるアイコン、スターに押し上げました。
続編というのも嬉しいところですが、もちろん不安もありました。
続編は期待もありつつ、好きだった1作目を壊さないか不安になるものです。続編づくりのよくあることは、数を増やす、舞台を大きくする、、、といったところでしょうか。
ただ今作はそのへんを過度に拡張せず、むしろ驚くことにドラマ部分をまた別の着眼点から描き出すことで、アクション映画としての”らしさ”を保っていたと感じます。
前作は言ってしまえば、冴えないおっさんの夢物語です。
うだつの上がらない夫、お父さん。
堅実な仕事でありながら、妻の方が高給取り。妻は一緒に寝るのも苦痛に感じているくらいの夫婦関係の冷め具合。
息子にも娘にもなつかれず。
そんなどうしようのないしょぼくれに対する一種のファンタジーです。実は父さんは各諜報機関が恐れる最強の殺し屋だったのだと。

冴えない男の夢物語から、家族ドラマへの転換
そのカタルシスを忘れないように、今作は大きくプロットを変えませんでした。なので同じことの繰り返しとも言えますし、前作のようなフレッシュさはありません。
しかし今回は家族特に親子の面にドラマを置きます。マンセル家の中の3世代の親子と、彼らと対比的に別にもう一組の親子を置いているのです。
親子関係をもってして、今回はハッチが闇の人格を離れたいというストーリー。
自分の能力とスキルを活かした仕事をしつつ、仕事に没頭して家族との心がまた離れてしまったわけです。
だからこそ休暇をもって関係性を直しに行こうとする。
でもジョン・ウィックよろしく凄腕の殺し屋というのは辞めたくても辞められない。
トラブルに巻き込まれ否応なく対処し、結局家族と一緒に過ごせないハッチを、これまた独特な魅力でボブ・オデンカークが演じます。
親子三世代が映す“暴力の連鎖”と再生の物語
父の暴力性を見て、それにならう息子。
ハッチは自分の父に影響をうけ。そしてハッチもまた自分の息子に影響する。暴力の連鎖のような関係性ですが、息子が最後に相手を生かすという判断をするのはいいポイント。
待ちを牛耳る役を担わされているワイアット。彼もまた父親の負の遺産を受け継いだせいで暴力の世界に生きている。
そして彼は息子にはその世界に入らせまいと必死に働き、借りを返そうとしているのです。ハッチと同じ境遇なんですね。

ティモ・ジャヤント監督の手腕:重くせず、あくまで“楽しい”を貫く
ただティモ・ジャヤント監督はそこを不必要には掘っていかず、なのでライトなトーンで楽しむことができます。
根幹にあるのは、観客が見たいものを魅せるというファンサービス。楽しさを貫いた姿勢です。
娘のあたまを叩く店員。それを見たハッチーーーーーー来たぜ!始まるぞおおお!
巻き込まれてしまうどこか不憫なハッチが大暴れして、ただの観光客が何で?となる敵を見て笑う。そして見事なDIYで遊園地をデスアトラクション満載に魔改造してたくさんの殺しのアイディアでぶっ飛ばす。
それぞれがノリノリのアクションに、やはり見やすい殺陣と撮影もあったりでナイス。工場の外観を捉えた固定のカメラで、ハッチが車で移動したり入っていったと思ったら銃撃音が聞こえてとか、演出にもなんとなくエレガンスも。
とにかく、1作目で好きだったものをそのままのこして、それが好きだった観客に対して必要なものをちゃんと提供してだらだらせずまとめた映画。
この2作目を見たならば、3作目もいけるぞ!と思わせてくれる良作でした。
今回の感想はここまで。ではまた。


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