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「レイジング・ファイア」”怒火”(2021)

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「レイジング・ファイア」(2021)

  • 監督:ベニー・チャン
  • 脚本:ベニー・チャン、ドニー・イェン
  • 製作総指揮:アルバート・ヤン、エドワード・チェン、イーチー・チェン
  • 音楽:ニコラス・エレラ
  • 撮影:マン・フォン・ユエン
  • 編集:パン・チンヘイ
  • 出演:ドニー・イェン、ニコラス・ツェー、チン・ラン、サイモン・ヤム、パトリック・タム 他

作品概要

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「WHO AM I?」や「レクイエム 最後の銃弾」など警察をテーマにアクションを作品を撮ることが多い香港のベニー・チャン監督が、「ローグ・ワン/スター・ウォーズ ストーリー」などのドニー・イェン、「ジェネックス・コップ」などのニコラス・ツェーとタッグを組み贈るアクション映画。

過去のある事件から道を分かれた二人の警官が、それぞれの正義を貫くために再開し、闘いに身を投じていきます。

ドニー・イェンとニコラス・ツェーは2006年に「かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート」で共演して以来久しぶりに同じスクリーンに登場。

今作は中国でのすさまじい興行収入を記録、さらに海外でも評価を得るなどまさに香港アクション映画の復活ともいえる名声を轟かせています。

日本では2021年11月の東京国際映画祭でプレミア公開され、その後12月になって一般公開がされました。

私自身は最近の香港映画にはあまり詳しくなかったのですが、映画祭や一般公開時の好評、そしてドニーさん目当てで年末年始の休暇に鑑賞。

休みに入ったとはいえ、小さな映画館で朝の回だった影響か余り混んではいませんでした。

ちなみにこの作品を撮影後、2020年の8月に監督のベニー・チャンは他界。今作を遺作とし残していきました。

「レイジング・ファイア」公式サイトはこちら

~あらすじ~

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香港警察のベテランであるボンは、長年追いかけてきたベトナムマフィアの麻薬取引現場を特定し、ついに一味を逮捕する機会を得る。

しかし直前にボンは今回の作戦から外されてしまう。香港警察の上層部からの圧力が加わったのだ。

いら立ちを隠せないボンだったが、悲劇が続く。

麻薬取引現場に何者かが襲撃、ベトナムマフィアと香港警察を惨殺して回ったのだ。

襲撃の裏にはかつてボンの後輩でありある事件から刑務所へと入っていた元警官ンゴウと彼の仲間たちがいると踏んだボンは、手かがりを掴むために取引を行っていた香港側のマフィアのアジトに単身乗り込んでいく。

ンゴウの目的とは?そしてボンと袂を分かつことになった4年前の事件とは?

それは香港警察全体を揺るがしていく壮絶な死闘へと繋がっていく。

感想/レビュー

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燃え盛る焔として吹き上がる香港アクション映画の流儀

実は香港アクション映画って子どものころ、ほんとに小学生のころとかによく見ていた記憶があります。それ以降はあまり注視してきませんでした。

昨今は中国との合作も増えて、その中でそもそもの映画製作の本数がだいぶ減ってきているということや、やはり中国当局との関係性からの制約というものも多いというのは、おおよその業界のこととして聞いていたくらいです。

その中ですごく久しぶりに「香港アクション映画の華麗なる復活」と聞こえてきたのがこの作品。

ベニー・チャン監督の遺作となってしまった今作ですが、迫力のカーチェイス、銃撃戦、武器や徒手での近接格闘などの炸裂するすさまじい熱量の作品に仕上がっています。

スターの存在感やアクションという動作を投資手の演技も重なることで、近年ハリウッド大作などに押され気味であったこの香港アクションの切れ味を肌で感じるものになっています。

陽と陰の明快さと、それぞれの掘り込みの深さ

今作の中心は陽と陰の二つに分かれた香港そのもののような、ドニー・イェン演じるボンと、ニコラス・ツェー演じるンゴウ。

2人とももともと正義を貫くための警察組織の人間で兄弟のような間柄でありながらも、まさにその組織の在り方によって人生を大きく変えられてしまった人物でです。

2つの対立というシンプルな構造にしてクライマックスに向けて走っていく今作ですが、実はボンもンゴウもそれぞれ正義を追い求めています。

ンゴウは決して私利私欲のために動いているわけではないのですね。彼の追い求める者はたった一つ。それは警官になされなかった正義を求め、彼と仲間たちの人生を奪ったものからも、人生を奪うことです。

明快な構造ながらも、人物の造形の点では結構複雑に、厚みのある人物を作り上げています。

まずドニー・イェン演じるボンですが、過去の事件について”社会一般的、人としての正義”を貫いたゆえに、ンゴウの恨みを買ってしまう。

そもそもの判断こそ辛いものでありましたが、彼自身の警察での立ち位置もまた辛いものになっています。

それは”警察組織としての正義”を貫かなかったことですね。だから同じようなことがあった時、同僚よりも社会正義を優先しかねない彼を、上層部は快く思いません。

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そしてンゴウ。強硬的な捜査を求められながらも、上部は彼と仲間を裏切り監獄にぶち込んだ。復讐の鬼と化すンゴウは怪しく強烈。

正直ドニー・イェンの”おまえはその上腕二頭筋をどこに隠してるんだ”としか言いようのないボディやキレッキレのアクション目当てで観ていたのですが、ンゴウを演じるニコラス・ツェーにクラクラします。

くしゃっとしてつやのある髪にワイルドな髭、サングラス。一方警察時代はピシッとした印象にメガネ。ニコラス・ツェーエロ過ぎ。

背景の厚みを増す適切な描写

ここでベニー監督はその二人に関する描きこみについて、全体統制からも適切な深さを与えていると思います。

あまり説明的にならず、話を前に進めながら、どちらの言い分もわかるゆえに切なさもある戦いになっていきます。

ボンは妻がいますね。家庭を持ち、(今作では家族にも危機が及びますが)守るものがあるということは組織に居続けることも必要なのですよね。

対するンゴウのほうは刑務所で過ごす間にパートナーも去ってしまい、守るものはない。

まともな就職もできないことも示唆され、またンゴウの仲間も社会的にひどい目にあっています。

それでも仲間の絆はどちらもある。特にンゴウは最初の取引現場の襲撃の跡が好きです。

みんなでカップ麺?みたいなインスタントラーメン食べてるんですよね。

金を奪ったから豪遊するわけでもない感じ、また、みんで一緒にご飯たべるところ。ンゴウは悪に染まってしまいましたが、彼ら仲間たちは虐げられたものとしてすごく結束が強い。

こうした部分から闘いの意味合いが生まれています。

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映画を撮るという手段でできることを貫く

クライマックスの銃撃戦から決戦は見事すぎる出来栄えですね。

ストリートでの銃撃戦はやはり避けて通れない「ヒート」の影響を感じさせますが、空間のスケールを活かしたいかにも映画らしいアクションでした。

そして最終決戦。凄まじすぎて目で追うのがやっとの闘い。

ドニー・イェンとニコラス・ツェーの二人がそれぞれのキャリアと技量を入れ込んだアクションシークエンス。コーディネーターはドニーさん本人と、名だたるアクション監督である谷垣健治氏。

ンゴウの過去背景からも合理的な選択であるバタフライナイフでのミニマルなアクションから、大ぶりのハンマーを使う闘い。

ハンマーについては割と短く印象だけで戦う作品が多い中で、結構長いことその特徴を活かしていますね。まさに怒りの鉄槌。

熱量のすごさに大満足のベストバウトでした。

香港の映画はやはりどうしても中国からの制約がかかるところでしょうけれども、この香港デモのなかで民主主義の脅かされる時代、そして香港警察側の対応の酷さも記憶に新しい時代。

こうして警察権力の在り方を背景としたアクション映画を使用してできる限りの範囲まで攻め入っていくベニー監督の熱い思いを感じます。

単純に香港アクション映画を復興するだけではなく、今香港が置かれている状況というものを踏まえながら、映画を撮るという手段でできることを貫くベニー監督にも、盛大な拍手を送りたいですね。

というところで今回の感想はこのくらいです。

まだ劇場で観れるところもあるようですので、少しでも気になる方、アクション映画ファンは必見でしょう。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

それではまた。

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