「グッドライアー 偽りのゲーム」(2019)
- 監督:ビル・コンドン
- 脚本:ジェフリー・ハッチャー
- 原作:ニコラス・サール『老いたる詐欺師』
- 製作:ビル・コンドン、グレッグ・ヨーレン
- 製作総指揮:ジェイソン・クロース、アーロン・L・ギルバート、ジャック・モリッシー、アンジェイ・ナグパル、ニック・オヘイガン
- 音楽:カーター・バーウェル
- 撮影:トビアス・A・シュリッスラー
- 編集:ヴァージニア・カッツ
- 出演:イアン・マッケラン、ヘレン・ミレン、ラッセル・トーヴィー、ジム・カーター 他
「美女と野獣」や「グレイテスト・ショーマン」のビル・コンドン監督によるクライムミステリー。
ネットで知り合ったあるカップル、一方は実は詐欺師であり、相手の資産をだまし取るために計画を実行するが・・・というお話。
そのカップルを名優イアン・マッケランとヘレン・ミレンという豪華な俳優が演じています。
自分は実はあまりビル・コンドン監督の作品が刺さったことがないのですが、今回は完全に主演の二人目当てで鑑賞してきました。
公開週末に観ましたが、別にサービスデイとかでもなかったですが、割と人が入っている印象で、若い人も見に来ていましたね。
ロイ・コートネイとベティ・マクリーシュは、インターネットの出会い系サイトで出会い、初めての食事を共にする。
ネットでの出会いは失望だらけであるが、お互いにパートナーを失った寂しさを埋め、また素敵な人に出会うことを夢見ていた。
しかし、ロイはパートナー探しの木など全くない、ベテラン詐欺師であった。彼の目的はただひとつ。
ベティの信用を得て油断させ、財産を根こそぎいただくこと。
ロイは着実に計画を進めていくのだが、ベティの孫であるスティーヴンはロイを怪しんでいた。
ダメなところと良いところが全然関係ないところでそれぞれ乗っかってきて、総合的にはまあいいかと許してしまう映画です。
正直ミステリーとしてはこの作品は2幕目以降完全にぶっ飛んでいます。「は?」「どういう話なの?」という展開でミステリーと言っていいのか分からない。
熟年ロマンスと見せかけた詐欺師映画化と思えば、2次大戦からナチス狩りまでよくわからない方向へと進んでいきます。
通常であればこんなに後出し、回想丸入れの脚本は、何でもありすぎて謎を追うことすら意味をなさないですが、ここまで意味の分からない展開をすると逆にドラマになります。
で、そのお話自体はまあ観ていってもいいかなと思いましたが、肝心の騙しに関してはこれは出オチというか、あまりに不利な体勢で映画が始まってしまっているのが残念。
というのも、単純にロイがベティを騙す話ですよ、とは謳っておらず、あからさまにベティも何かたくらみがありそうなわけです。
極めつけのように、ベティを演じているのがヘレン・ミレンなものですから、そりゃもう何か嘘ついているということ自体が保証されているようなものです。
純粋無垢なおばあちゃんなわけがない。
そもそもの後出しすぎる上に想像もできるわけのない昔話、そこに豪華かつ約束されすぎの配役。ミステリーとしては上手ではありません。
では何が良いところだったかと言えば、カーター・バーウェルの音楽、そして何よりも、衣装です。
ムーディな音楽が良い感じだなというOP以降、とにかくヘレンとイアンのファッションショー。
彼らのチャーミングさは非常に大きいですが、さらに二人のファッションがもう綺麗カッコいい渋い素敵オシャレで目が幸せです。
イアンは仕立てに行ったりのシーンもありますが、スーツスタイルに傘とハットまで英国紳士のファッションが柔らかさもありながらカッチリに合っていますし、ヘレンの淡いピンクの使い方とかほんとオシャレ。
ってことで、見た目に楽しめる映画です。
まあ中身としては加害者の薄い意識と、被害者の絶対にぬぐえない傷。
まるで「ハロウィン」のマイクとローリーみたいな関係、昨今の女性の口を封じてきた男性社会への制裁みたいなものがありますが、それもまた設定からはだいぶ突飛な題材に思えます。
ミステリーとしてはあまりに、観客が考えることに意味がなさすぎる話の展開をしますが、展開される話自体はまあそれなりに楽しめるものです。
何にしてもこのヘレンとイアンの二人の演技力、人としてもつチャーミングさ、そして様々に変わる衣装が大きな柱として立っている印象。
正直良い作品とは言えませんが、主演二人の力を理解してそこに全投げする姿勢はわりと豪快で潔いものだと感じる作品でした。
ヘレン・ミレンとイアン・マッケラン両方好きなら観ていいでしょう。ミステリーや騙しあいを楽しみたいならお勧めできません。
ということで感想はおしまいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
それではまた。
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