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「夜の人々」”They Live By Night”(1948)

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they-live-by-night-movie-1948 映画レビュー
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「夜の人々」(1948)

  • 監督:ニコラス・レイ
  • 脚本:チャールズ・シュニー
  • 原作:エドワード・アンダーソン「Thieves Like Us」
  • 製作:ジョン・ハウスマン
  • 音楽:リー・ハーライン
  • 撮影:ジョージ・E・ディスカント
  • 編集:シャーマン・トッド
  • 出演:キャシー・オドネル、ファーリー・グレンジャー、ハワード・ダ・シルバ、ジェイ・C・フリッペン、ヘレン・クレイグ 他

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「理由なき反抗」などの巨匠ニコラス・レイが初監督を務めたフィルムノワール。

脱獄した青年がある女性と出会い、己の過去を振り払おうとしながら二人で幸せを目指していくクライムロマンスになります。

出演は「ベン・ハー」などのキャシー・オドネル、またこの作品と同年に「ロープ」に出演し注目のファーリー・グレンジャー。

フィルムノワールの中でもとても評価されている作品のようですね。

あのロバート・アルトマン監督がのちに「ボウイ&キーチ」というタイトルでリメイクをしていることでも有名です。

クライテリオンのコレクションにあって名前は知っていたのですが、今回ブルーレイが安く購入できたので初めて鑑賞しました。

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殺人の罪で刑務所に入っていたボウイは、そこで知り合ったT-ダブ、チカマウと一緒に脱獄に成功する。

その際に彼らが隠れ家として利用した家に、一人娘のキーチがいた。

彼女は裏の世界の手伝いを経験しているからか、冷静かつ年頃の女の子らしさもない。

しかしボウイにとっては初めて出会う同年代の女性であり、また誰もがボウイをひよっこ扱いする中で、キーチだけは彼をまともに扱ってくれた。

ボウイは仲間と銀行襲撃の計画に成功し大金を得る。

彼はキーチに想いを伝え、二人は共に旅へと出るのだが、平穏を望む彼らに、過去が付きまとう。

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ノワールでありながらロマンスである、それならば他にも名作がずらりとあると思います。

しかし、クライム要素も入りながら、青春映画というか、若者のロマンスであることが、すごく特徴的かつ愛おしい作品でした。

おそらくこれは、裏世界に入りこんだ大人の男と女ではなく、ある意味で無垢な男女の不遇な悲愛だからかと思います。

置かれた環境からどうにか逃げ出そうと、幸せを掴もうとする。

目の前の儚く安定も薄い幸せを、なんとか自分のものにしようとする二人がとにかく全編通して切ないのです。

ここでは過去に愛や安らぎを与えられてこなかったボウイとキーチが、互いにそれを与えあうことで絆を強めていきます。ただ常に、警察の手というスリルが用意されています。

ボウイがキーチにプレゼントするのが腕時計なんですが、アクセじゃないし時間という何か期限を感じさせる要素なのも、二人のロマンスと全体のスリリングさが組み合わされていて巧いところ。

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キャシー・オドネルが最初に出てくるところでは、陰影の濃いショットでありまた彼女は表情がキツく、女優としてはかなり美しくない映されかたです。

それが会話の節々で、ボウイに好意を向けられる際に緊張がほどけつつ、困惑もしている表情が見事でした。

さらに幸せな日々をおくると、明るくなんとも可愛らしく美しい表情を見せてくれ、その幅広さに感心してしまいます。

ファーリー・グレンジャーもまた、絶対に影を落とすことなく、少年の可愛らしさを持ち続ける顔つきが素敵です。

そんな二人を映し出す撮影は、やはりどこか寂しい。

車内のシーンも多い今作ですが、その状況がボウイにとって心休まるのかが重要です。銀行強盗の運転手と、キーチとのドライブではまるで異なる。

そして俯瞰のショットがOPとEDで呼応する。距離があって孤独なショットであり、やはり近くに行かなければ、その人が見えてこないと言うようです。

途中のバス車内とか、二人に良い感じに光が当たってるのも印象的で、注視することが強調されていたように思えます。

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世界にはお互いしかいない。

この感覚こそ全てだと思います。キーチもボウイもお互いの他に彼らを愛する人間が存在しないのです。

若者が出てくる作品として、こんなにも孤独な登場人物はいないですね。

40年代に若者のロマンスとしては暗く孤独で切ない。

ただ現実に恵まれた中産階級や、暖かな大人たちに囲まれていない、夜に生きた彼らがいる。

今作はそんな、決してハリウッド黄金期の華やかな光が当たらない人々に、あえて静かで優しいスポットライトを当てているように思えます。

この視点はなんとなく、大人の理解の及ばない若者の話「理由なき反抗」につながっているのかな?

そしてその暖かさは同時に、「俺たちのような泥棒」”Thieves like us”という言葉で批判を繰り出すとも思えます。

道中で結婚式を挙げてくれたあのおじさんが、「結局私も泥棒みたいなもんなんだ。」と言いますが、ボウイとキーチ、この二人から真っ当な生を奪ったのは誰だったのか。

若者から何か輝くものを奪った大人たちがいると思えてならない。

非常に美しく儚く、なんとも愛おしいノワールロマンス。多くの映画人やファンが今尚愛しているというのも納得の素晴らしい作品でした。

感想はここまでとなります。

たまにはクラシックな作品を味わうのも、やはり楽しいものです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた次の記事で。

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