「グレイテスト・ショーマン」(2017)
作品概要
- 監督:マイケル・グレイシー
- 脚本:ビル・コンドン、ジェニー・ビックス
- 原案:ジェニー・ビックス
- 製作:ローレンス・マーク、ピーター・チャーニン、ジェンノ・トッピング
- 製作総指揮:ジェームズ・マンゴールド、ドナルド・J・リー・Jr、トーニャ・デイヴィス
- 音楽:ジョン・デブニー、ジョセフ・トラパニーズ、ベンジ・パセック、ジャスティン・ポール
- 主題歌:キアラ・セトル “This is me”
- 撮影:シェイマス・マクガーヴェイ
- 編集:トム・クロス、ロバート・ダフィ、ジョー・ハッシング、マイケル・マカスカー、ジョン・ポル、スペンサー・サッサー
- 出演:ヒュー・ジャックマン、ザック・エフロン、ミシェル・ウィリアムズ、レベッカ・ファーガソン、ゼンデイヤ 他
実在の興行師、P.T.バーナムを描いたミュージカル映画となる今作は、こちらが初の長編となるマイケル・グレイシーによる作品です。
主演には「ローガン」(2017)などのヒュー・ジャックマン。またミシェル・ウィリアムズ、ザック・エフロン、レベッカ・ファーガソンらも出演。
また宣伝でも言ってますが、「ラ・ラ・ランド」(2016)で歌曲賞受賞のベン・パセックとジャスティン・ポールが今作の音楽を担当しております。
一応話題作という事で公開週の週末に観てきました。
人の入りも良く、また年齢層が幅広かったですね。
実はアメリカやイギリスでもそうなのですが、今作は初週はそこまで興業が伸びず、しかし2、3週と進むごとに口コミやリピーターが増えていくようです。
イギリスではなんと公開から6週?で週末興行1位になったとか。
今でも週末の回が埋まっていたり、リピーターの人も多くいますね。
~あらすじ~
貧しい仕立て屋の息子であったバーナムと、令嬢のチャリティは、幼いころから惹かれあっており、駆け落ち同然で結婚する。
娘たちも生まれ、幸せの中暮らしていたのだが、バーナムの務める会社は倒産してしまう。
バーナムはなんとか家族を養うためにビジネスを立ち上げようと、世の中のユニークな人間を集めてショーをすると言い出す。
普段は社会で透明人間のように扱われる者たちを主役に、ショーは人気を集めていくが、評論家たちはバーナムを認めなかった。
感想/レビュー
薄く粗末
観客の、私の周りでの評価としてもかなり高く、普段は映画をあまり見ない人が、二回目を観に行ったりするほど人気が出ている本作。
私も一応は公開週の土曜日に観たのですが、ハッキリ言うと粗末な出来と思いました。
表層的で薄く、掘り下げることなく急ぎ足で滑っていたというのが、今作の感想です。ハマらなかったですし、正直言って若干嫌悪感のある部分もありました。
作品が賞レースでも戦っている楽曲そのものに関しては良いものだと思います。
ザック・エフロンの葛藤や、やはり悩める妻役が素晴らしいミシェル・ウィリアムズ、そして圧倒的美しさで持っていくレベッカ・ファーガソン。ここらへんが好きです。
レベッカは威厳を保つギリギリで震えながら台詞を言うあの感じが素敵だと思います。
映像的虚構
しかし、総合的には楽曲の他のセクターの質が低かったかと思いました。
ルックの点で気になって仕方なかったのが、CG処理の部分。今回背景にCGを使うことがこれでもかと多いですが、それがことごとくCGもろ出しでした。
ヒュー・ジャックマンが汽車に乗って歌う場面、汽車も煙も背景の駅、それから遠くからのショットまでCG感が強い。というかCG処理が安っぽい。
劇中で「偽物を売ってる」と言われますが、その通りです。
昨年の「美女と野獣」でも感じましたけども、重要なはずの背景部分やショーの部分が微妙なCGでは、そのライブ感とかも覚めてしまいます。
楽曲の中俳優が踊る。しかしよく作られたセットではなく、ただ合成処理されたものとしか見えないと、なんとも台無しです。
そして私にとって最大の難点だったのが、主人公の倫理観。
まあもしかすると真っ当な人間だったのかもしれませんが、描き方がどの人物も薄いせいで、その発言や行動が非常に淡白で、それゆえに人物自身が軽薄に思えます。
決定的に足りない説得力
バーナムの人格が若干おかしいのはおそらくしっかり描いているのですが、それがあっさりと善人になるのも良くわからないところです。
そして何よりも、劇中でも「あなたの奇想天外なアイディア、あなたのショーが人気なんだ」と言う割に、結局バーナムの何が素晴らしくて、どんな演出が人を引き付けたのか描かれません。
実際あのショー?って何のショーなんですかね。
ひとつでもショーの構成をみせたりしましたか?
バーナムのアイディアもユニークさもどこにも見受けられず、テンポが良いというよりはただ描写不足でダイジェストのようなリクルートからのショーの成功までを観るだけでした。
そこになんの説得力もないままに、さらにほぼ何も描かれないユニークな人たちが集められる。
何の共感もわかなかったというのが正直なところでした。
彼らはまさしくこの映画が平等や個性を謳いたいがために集められ、そこにいるだけです。
押しつけがましい正義感
そもそも、あの人たちはショーに出たかったのでしょうか?
そしてなぜ出たかったのでしょうか?
虐げられ存在すら認められなかった人たちに光を与えた。
たしかにバーナムはそれを成し遂げたとは思いますが、当の本人たちはみんなそれを望んでいたのかよくわからず、そもそも静かに暮らしたい人もいたのでは?と思い、勝手な正義を振りかざしたようにすら思えて不快でした。
楽曲は良いです。
しかしそれは一つ一つの曲がキャッチ―であるというにすぎず、私にとっては画面でくり広げられるドラマを語るものとしては弱く思え、最後まで誰の目的も感情も共有できないまま終わってしまった作品でした。
かなり盛り上がっているようなので、複数回観ているファンがいっぱいいる、ライブ感覚なところで観たら違うのかも?
そんなわけで、今作に関してはあまりノレなかったのでした。
まあ人ぞれぞれなので、話題作である以上自分で確かめるのが一番だと思います。それでは。
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