「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」”My Salinger Year”(2020)

「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」(2020)

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作品概要

  • 監督:フィリップ・ファラルドー
  • 脚本:フィリップ・ファラルドー
  • 原作:ジョアンナ・ラコフ『サリンジャーと過ごした日々』
  • 製作:リュック・デリー、キム・マクロー
  • 製作総指揮:フィリップ・ファラルドー、ジョアンナ・ラコフ、ナイマ・アベド、フサイン・アマルシ、エミール・ジョルジュ、セリーヌ・ハダド、メアリー・ジェーン・スカルスキー
  • 音楽:マーティン・レオン
  • 撮影:サラ・ミシャラ
  • 編集:メアリー・フィンレイ
  • 出演:マーガレット・クアリー、シガニー・ウィーバー、ダグラス・ブース、ブライアン・F・オバーン、コルム・フィオール 他

「グッド・ライ 〜いちばん優しい嘘〜」などのフィリップ・ファラルドー監督が、ジョアンナ・ラコフによる「サリンジャーと過ごした日々」を原作として映画化した作品。

ニューヨークに作家を夢見てやってきた女性と、彼女が働くエージェンシー、そしてサリンジャーとの交流を描きます。

主演は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」などのマーガレット・クアリー。またボス役に「怪物はささやく」などでも活躍し続けるシガニー・ウィーバー。

その他、ダグラス・ブース、ブライアン・F・オバーン、コルム・フィオールらが共演しています。

フィリップ・ファラルドー監督作品って初めての鑑賞になります。正直鑑賞予定にはなかったのですが、連休中に観るものもあまりなく何となくラインナップから選んでみました。

マーガレット・クアリーが主演を務めるというのも、重要な役は多くても主演では観たことがなかったので興味もありました。

連休の終わりの方に公開されましたが、やはり他の大作が多いのもあってちょっと観客は少な目でした。

「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」の公式サイトはこちら

〜あらすじ〜

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西海岸で暮らし、詩を愛し自分も作家になりたいと夢見ているジョアンナは、友人を訪ねてニューヨークへやってきた。

彼女はこの地で作家を目指したいと強く思い、地元で歴史のある出版エージェントに就職する。

そこはあのJ・D・サリンジャーの代理人を務めることで有名なエージェントであり、稀にだがサリンジャー本人から電話も来る。

とはいってもジョアンナはサリンジャー書籍を読んだこともなく、あまり感激することもない。

しかも、彼女の仕事はサリンジャー宛の熱意のこもったファンレターに、「サリンジャー本人はいかなるファンレターも受け取れません」という定型文を送り返すという退屈なものだった。

ニューヨークで人間関係も築く中で、たくさんのファンレターを読むうちにジョアンナはしっかりと心を込めて返信したいと思うようになってくる。

感想/レビュー

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文学を舞台に王道のストーリーを展開

そこかしこで言われていますし、今作の予告を観ても分かることですが、文学版「プラダを着た悪魔」といった装いの作品です。

熱意ある未熟な主人公と、就職したエージェント、厳しいカリスマ上司。

恋愛と自己の形成や自立。

このドラマは何度も繰り返されてきたお話です。

そして今作はそんなお話を、良くも悪くもまた繰り返すような映画になっていました。

良くも悪くもというのは今作が決してその王道に定型化された作品の要件を満たしていないわけでもなく、若干のチャレンジを見せないこともないからです。

悪くないのは、沿っていくべきプロットをそのまま沿っているから。

逆に良くもないと感じてしまったのは、結局のところ題材を文学においている点以外には、真新しいことも見えないからです。

画面構成や演出にやや遊びがある

実話をもとにしているからこそ、モノローグが入っているという回想する構造を取っています。

その前提があるからこそ、例えば画面内における人物の配置と関係性についての描写とか、ふと訪れるフラッシュモブ的なシーン、登場人物が偶発的にも並び立つこと。

また意識下の人間が登場したり自分自身が見えたりという非現実的な演出も楽しむスパイスとして入っているわけです。

前提のおかげで突飛とまでいかず滑稽にもなっていません。

ミニチュアハウス的にジョアンナが彼氏と壁越しに並ぶショットとか、オフィス内でのドアの開いている/開いていないの意味合いだったり。

全体に暖かく美しい色彩を持つ画面と同時に楽しめるところです。

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また主演のマーガレット・クアリーは印象深い瞳を活かしていると思います。

彼女の大きなまるっとした瞳が輝いたり驚いたり焦ったり。

また勝手な意見ですが、ちょっと頭弱い系のキャラ(「ナイス・ガイズ」ではポルノ女優、「ワンス・アポン・・・」ではヒッピー)を演じる印象が強かった彼女が、悩める文学女性として奮闘するのも応援したくなるところ。

シガニー・ウィーバーが上司として厳しめスタンスで登場しますが、私としてはそこまで怖くないというか。

宣伝に登場しているポスターなどが随分と彼女の怖い上司感を煽っていたせいか拍子抜けです。

ただもちろん、人としての温もりと、後半の弱った姿については流石の演技を見せていました。

安定している作りがリズムを生まない

一番の問題点は安定しすぎたことでしょう。

演出にはすこしの冒険が見えても、脚本上にはない気がします。

原作がそうであり、そして大本の実話はそうならば仕方ないですが。

いかんせん、何かが起こりそうだ!というたびにその潮流を掴みそこねてしぼんでいくばかりな気がしました。

盛り上がりきらないというか。

また一番気になってしまったのはジョアンナ自身が創造性をあまり見せないことです。

ファンレターへの返信というのは、彼女の中での情熱に触れれば情熱が湧くという証明であります。

しかしその湧き上がった情熱の形、特に詩については特に示されません。

内面に存在するキャラクターが現実とクロスして話しかけてきているあたりとか、仕組みはおもしろいと感じますし、スタートラインに立つという話だとすればこのくらいなのかもしれません。

しかしそれでも、失敗しないような枠組みの中で安定的な出来にしかなっていないのがちょっと残念にも思える作品でした。

孤高の作家っぽいサリンジャーに対しての異なるイメージを提示している点など、別の面で原作に魅力ある点もあります。

主演のマーガレット・クアリーは彼女自身の魅力、また衣装のカラーリングやヘアスタイルなども多く楽しめる存在です。

ストレートな”何者かになろうとするもがき”の話として決して悪くはない。しかし映画館で臨むというよりむしろ、お茶をしてクッキーを食べつつ、ソファで湯たりとみるのが素敵そうな作品でした。

というところで今回は短めですが感想は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

ではまた。

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