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「捜索者」”The Searchers”(1956)

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映画レビュー
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「捜索者」(1956)

  • 監督:ジョン・フォード
  • 脚本:フランク・S・ニュージェント
  • 原作:アラン・ルメイ 「捜索者」
  • 製作:メリアン・C・クーパー
  • 音楽:マックス・スタイナー
  • 撮影:ウィントン・C・ホック
  • 編集:ジャック・ムーレイ
  • 出演:ジョン・ウェイン、ジェフリー・ハンター、ヴェラ・マイルズ、ナタリー・ウッド 他

西部劇の巨匠ジョン・フォードが、「駅馬車」(1939)でも組んでいるジョン・ウェインを主演にした作品で、強烈な主人公や雄大な撮影が印象的。

公開時は鳴かず飛ばずだったようですが、後年評価されたタイプの作品です。今ではフォード監督の代表作として紹介され、また西部劇映画の最高傑作とも称えられています。

始めて観たときは、コマンチ嫌いでちょっと異常なくらいのイーサン(ウェイン)が強く印象に残りました。

南北戦争が終結して3年、1868年のテキサス。

南軍に所属していたイーサンが、久々に兄夫婦の家を訪れる。家族との再会を楽しみながら、イーサンはかつて彼が拾った混血の子、マーチンに対し冷たく接する。

そんな中インディアンにより牛が盗まれ、地元の有力者であるクレイトンと共に奪還へと出かけていく。しかし牛泥棒は彼らを家から引き離すための囮だった。

急ぎ家に引き返すイーサンであったが、時すでに遅し。兄夫婦は惨殺され、姪のルーシーとデビーは連れ去られていた。

家族の復讐のため、イーサンはクレイトンらと家族を殺したインディアンの捜索の旅へ出る。

今作はとにかく西部の雄大な荒野を、山々を映す撮影が素晴らしいです。オープニングカットでは家の中から、画面に枠を作ってその開いた扉から向こうの景色が見えますが、カメラが戸を抜けたときの壮大な景色と言ったら。枠を設けたことでより広く感じるわけですね。

そしてこの建物内からの枠をとおして外を移すショットはとても大事な意味を、全編通して持っています。

長旅になる今作では、モニュメント・バレーやら、大きな洞窟、川、牛の群れなど自然風景が盛りだくさん。そこをさまようウェインたちがこれまた小さく映ったり、叙事詩的ですね。

スカ―率いるコマンチの拠点を、荒野の高台の上から観察しているショットなど、奥行きや高低差までもいれた撮影はいかにも映画らしい空間の捉え方と見せ方で圧倒してきますね。

さて、ここでまた特徴的なのはウェイン演じるイーサンの人物像です。

とにかく苛烈。彼がインディアンに詳しく、また経験豊富な戦士であるのは各所に示されますが、全然英雄的ではありません。むしろ残酷な復讐者や、憑りつかれた殺人鬼のようにも見えるほどに恐ろしく感じます。

良く知っているのは相手をとことん苦しめたいから。

死者にすら侮辱を与える姿は、いわゆる王道西部劇の主人公とは思えません。ここにはアンチヒーローの源泉とも感じられる主人公像がありまして、ある意味この徹底した過激さがイーサンに心酔してしまう理由であり、また最後の切なさに一押し加えることにもなっていると思いました。

と、イーサンだけ見ればけっこうハードコア的なんですが、序盤の襲撃から旅立ち以後は、フォード監督らしい人情溢れるコミカルなやり取りも増え、酒場でマーチンには酒を飲ませないとか、彼のロマンスでの喧嘩など笑える部分もしっかり。

コマンチに捕えられた白人は、種族の一員として暮らす。

デビーは「私は彼らの一族なの。」と言いました。一度は彼女を殺そうとしたイーサンも、彼女をあるべき場所へ返すことを選択しました。

そしてデビーは元の家族に、マーチンは混血であっても、彼女の兄でありまた彼を待つ家族がいます。

しかしイーサンはどうでしょう?

何度も出てくる、内側から入口の枠を通して外を観る画面構成。それは内側に属するものを迎え入れるものです。マーチンの初登場時も、そしてラストカットでも。

ですがイーサンはその枠を通って中へは入りません。ただ一人枠の外側に立ち、身を返して歩いていく。皆に帰るところ、いるべき場所があるのに対し、イーサンは最後まで平穏の地を持てなかったのですね。

長い旅、雄大な荒野を捜索したイーサンとマーチン。この映画での主題歌のように、一番探していたのは、安息の地でしょう。

しかし結局、哀しい男はそれを得ることはできずに、これからも捜索者であり続けるのでしょう。

切なくも、英雄的で余韻の素晴らしい西部劇。お勧めの作品です。

そんなところで終わりますね。ではまた~

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