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「セイント・フランシス」”Saint Frances”(2019)

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「セイント・フランシス」(2019)

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作品概要

  • 監督:アレックス・トンプソン
  • 脚本:ケリー・オサリヴァン
  • 製作:ジェームズ・チョイ
  • 音楽:アレックス・バビット、クイン・ツァン
  • 撮影:ネイト・ハートセラース
  • プロダクションデザイン:マギー・オブライエン
  • 出演:ケリー・オサリヴァン、ラモナ・エディス・ウィリアムズ、チャーリン・アルヴァレス、マックス・リプシッツ、リリー・モジェクウ、ジム・トゥルー=フロスト 他

これまで短編作品を手掛けてきたアレックス・トンプソン監督の長編デビュー作。

自分の予期せぬ妊娠に驚きながら、乳母の仕事を始めた女性が子どもの世話やカップルとの交流を通し人生を見つめ直していくコメディドラマ。

主演はケリー・オサリヴァン。彼女は今作の脚本も執筆しています。

小さな映画祭ではいろいろとノミネート、受賞をしているようで、私も批評筋での評価の高さで知った作品です。

アメリカでは普通に公開はしたそうですが、イギリスではコロナの影響で映画館が閉まってしまい、映画館再開の封切り作品になったとか。

日本での公開については今現在(2020.9.29)は未定のようです。

<2022.4.14>日本公開は2022.8.19となっております。(ファッションプレス 映画『セイント・フランシス』女性のリアルをユーモラスに描く、完璧とは程遠くても人生は愛おしい)

公式サイトはこちら

~あらすじ~

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ブリジットは34歳。ウエイトレスの仕事を続け、結婚もしておらず定まらない自分の人生に気怠さと憂鬱な感情を抱えて過ごす。

あるときブリジットは26歳のジェイスと出会い、一緒に過ごすようになるが、あるとき予期せぬ妊娠をしてしまう。

その一方、ブリジットは乳母の仕事をするようになり、あるカップルの長女の面倒を見ることに。

フランシスという女の子の世話や、カップルの結婚生活、自身の妊娠を通して、ブリジットは自分の人生と向き合っていく。

感想/レビュー

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描かれてこなかったものを高密度、ナチュラルに見せる愛しい作品

もしかすると、2020年のベストかもしれません。トップ10には入れると思います。

この作品は笑えるユーモアに溢れながらも、数多あるメインストリームの作品、または少し小規模な作品でさえ描いてこなかった本当の人生を、あまりに見事にまとめ上げてものすごい密度でみせてくれます。

観終わってただただこの作品が好きで好きで、愛おしくてたまりません。

すっごく楽しいし、憤りや不安、悲しさや嬉しさを絶えず作品と共有し、清々しい気持ちで涙を流します。

何にしてもどうやったらこんなに現実的、観ているこちら側の日常のそのまま延長線上でいながらも、しっかりとドラマに描けるのでしょう。

手持ちカメラでの撮影もすごく効果的に思えますが、まずダイアログからしてすごく好きでした。

みんなの台詞がそれぞれ生身で、生きていて、自然なんですよ。

そんな風にしながらも節々に言動でクスッと笑わせてくれるその軽さが、実は結構重めの要素を軽くし観やすい。

しかし決して軽々しいというまでないがしろにせず、大切に扱われています。

ケリー・オサリヴァンの脚本が完璧だということですね。

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生理、妊娠と中絶、育児ストレス、産後うつ、セックスでの女性の負担や、ゲイのカップルが直面する社会的な意識または無意識の差別/不理解。

そこに年齢を重ねていくこと、人生の不安や対人関係、社会的なポジションまで乗っけてきています。

すべてがバランスよく、分離して描かれずつながりを持ち生きています。

アレックス・トンプソン、これが長編作品初監督とは本当に素晴らしい。

教育的だったり説教をたれることもなく、女性としての生をフランシスという幼少期、ブリジット、マヤとアニーの二人の生活から抽出。

登場人物はみんな独立した個人でありながら、どこか繋がることができます。

小さなディテールが、この物語を現代に留めているのも効果的です。

ミレニアル世代であるジョイスの考え、ブリジットの母は冷戦を青春時代として、マヤの家の前にはBlack Lives Matterの看板があり、男の子の家の冷蔵庫にはAll Lives Matterのマグネットが。

今を生きるからこその苦しさとか。

それらをセンターにこれ見よがしには置かずに、この世界のなかにただ存在しているものとしてでも見過ごされないように配置する。

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そして今の時代だからこそ炸裂する女性映画だとも言えるでしょう。

フェミニズムとされる映画(素晴らしい作品も多いですが)は女性の生きることに関して社会的側面が多い一方で、今作は日常として、女性が人生を歩むことにスポットライトを当てています。

コメディテイストで笑わせてはくるんですけど、生理のおりもので服やシーツが汚れてしまうとか、出産にかかわる身体的・心理的負担、また年を重ねていくことの周囲や社会からの目線など、切り離せないはずなのに、普段は映画でメインに据えられない要素です。

別に悪を倒すとか、世界を救うとか、大成功などを描かずとも、女性としての生を描けます。

個人的にはマイク・ミルズ監督の「20センチュリー・ウーマン」をさらに飛び抜けて押し出したように感じました。

今を生きる人を優しくハグする

そしてこの作品は明確に何かを確定させるとか、解決するとかでもありません。

人生はそうしたものだけではない。

ただ続いていくというのも人生ですね。

めちゃくちゃ不完全な人生でも、大切な友達を得てブリジットはまた歩いていく。

キャリアとかパートナーを持つこととか、誰だって不安だと思います。

アレックス・トンプソン監督はそんな不安いっぱいな人生を歩むすべての人に、リラックスできる笑いと優しいハグをくれるんです。

素晴らしい作品ですので、是非日本劇場公開を楽しみにしたいですね。

とううことで感想は以上。

アレックス・トンプソン監督、ケリー・オサリヴァン。

素晴らしい才能に出会い、映画がまた1つ進んだ瞬間を観た作品でした。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ではまた次の映画記事で。

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