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「すべてをかけて:民主主義を守る戦い」”All In: The Fight for Democracy”(2020)

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映画レビュー
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「すべてをかけて:民主主義を守る戦い」(2020)

  • 監督:リサ・コルテス、リズ・ガルバス
  • 脚本:ジャック・ヤンジルソン
  • 製作:ステイシー・エイブラムス、ダン・クーガン、リサ・コルテス、リズ・ガルバス
  • 音楽:ギル・タルミ
  • 撮影:ヴォルフガング・ヘルト
  • 編集:ナンシー・ノヴァック
  • 出演:ステイシー・エイブラムス 他

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リサ・コルテス、リズ・ガルバスの二人が、アメリカにおける選挙制度と投票抑圧の実態を、2018年のジョージア州知事選挙にて立候補者ステイシー・エイブラムスが訴えた事実をもとに製作したドキュメンタリー映画。

ステイシー・エイブラムスさん本人のインタビューのほか、様々な人物のインタビューと実際のニュース映像などを交えて、投票権の成り立ちから追っていきます。

作品はアメリカの一部地域ではスクリーンでの上映もあり、またAmazonプライムビデオにて配信されています。

時期的には2020年のドナルド・トランプ政権が終わるか続くかの大統領選直前に公開ということで、非常にタイムリーな話題を扱う作品になっています。

日本での配信は少し遅れてはいるのでしょうか。しかし鑑賞することはできました。

最近ドキュメンタリー映画を見るのに結構はまっています。短めってこともあるんでしょうけれど、なかなか公開されていないものなんかも配信でどんどんりりいーすされているのでうれしいですね。

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ジョージア州知事選に出馬したステイシー・エイブラムス。

彼女は当選すれば、ジョージア州では初めての黒人女性の知事になる。

しかし選挙の結果は対抗馬であるブライアン・ケンプにわずか0.2%ほどの得票差での敗北となった。

エイブラムスは敗北宣言のスピーチにて敗北を認めなかった。

それは敗北とは公正な選挙におけるものであり、今回の選挙ではそれが欠如していると訴えたからだ。

ジョージア州知事選での投票抑圧について、マイノリティや有色人種に対する不利な登録方法、選挙区引き、そして当日の混乱を交えて彼女は、アメリカにおける選挙制度の歪みを指摘する。

建国から民主主義国家として選挙を重ねてきたアメリカの、その制度の裏側に迫っていく。

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この作品はともすれば報道番組です。

特集!大統領選を控えるアメリカ その選挙制度は信用に値するのか?

投票の権利というものをアメリカがイギリスから独立したその時から、世界対戦そして公民権運動、歴史的なバラク・オバマ大統領の誕生そしてドナルド・トランプの再選がかかっていた2020年アメリカ大統領選まで通して追っていく。

この作品自体の公開は2020年の9月頃とのことで、まさに近々の話題である当時に現れたのです。

あまりのタイムリーさで、この選挙に向けての問題提起としてのニュースレポートや特番のようです。

しかし、ステイシー・エイブラムスさんを中心に数々のインタビューや資料映像、そして上手くまとめられているアニメーションなども含めて、このドキュメンタリーは一度みて終えるものではなく、投票権のように繰り返しその意味や価値、示すものに立ち返る価値があると主張しています。

そしてここには少なからず、民主主義国家という顔をしている私たちの日本でも充分に留意されるべきことも描かれているのです。

様々な司法、政治にかかわる人たちのインタビューやニュースでの会見映像だけでなく、まさに市民の権利として、現場の声たる人々の声もしっかりと映し出されているのは好感が持てます。

アメリカの歴史まで含めての国レベルの議題ではあるんですが、しっかりと民衆を置いてきぼりにせず、政治話に終始しない姿勢はスマート。

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なんというか信じがたく、また信じたくもないような歴史の事実を流れるように見せられていくわけですが、国王による統治などから脱却し民主主義国家として設立されたアメリカの実情には愕然とします。

ただ、適宜アニメーションだったり数字を示していくのは、その事実をしっかりと書き留めていくようで思考が整理しやすく感じます。

投票抑圧の要素を列挙していく際にもここは非常に効果的で、スクリーンをホワイトボードとしてしっかりと視覚文字情報に落とし込みながら進むのは、このように情報量の多いドキュメンタリーにおいて観客の視聴の手助けになっています。

過去から現在、ジョージア知事選に戻ってくるような構成も含めて、実際には結構難しめの話をたくさんしつつも、構成はシンプルになっていますね。

個人名や法制度、人種差別の歴史とかジム・クロウ法とか、わかっていれば確かに入りやすいであろう部分もありますが、決して知識レベルを求めてきません。こういうところは政策目的としても理にかなっている気がしますし、優しく感じました。

セルマの事件は「グローリー 明日への行進」の強さを今一度思い出しましたし、女性が参政権を獲得するための戦いについては「未来を花束にして」が思い起こされました。

まあ総じて憤りが強い作品です。

投票の抑圧とか、あまりに理不尽な選挙区引き、投票の妨害行為など、人々が長時間並ばされ、しかも投票システムがうまく動かない。

それなのに未集計票もあるなかで知事選出を確定してしまう。票とは意見であり、それを入れる権利はそこに市民として存在しているという証になります。

だからこそ票を数えないということは、その人を無視する行為であり許されない。

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さて、これを見てからの2020年アメリカ合衆国大統領選挙はいかなるものだったのか。

ドナルド・トランプ前大統領は投票所の締め切りを要求し、さらに負けた州においては逐一不正投票を臭わせました。

そこには何の根拠も結局は示されません。

不正選挙、不正投票の疑いはないのになぜここまでそれらを防ぐための制約が加えられていくのか。誰のためなのか。

この作品はそこにこそ大きな意味を持っていると感じはします。それでもそれだけのためのドキュメンタリー作品ではないと言いたいです。

日本において投票を行っている自分のことも大いに考えるきっかけになります。

自分は投票権を持っていなかった中学生のころから、親に連れられて市長選やらいろいろな選挙に行きました。そこで追い返されることはなく、歩いて5分ほどの場所でおそらく投票は3分ほどで終えています。

投票権を得てからも、なんの苦労もなく、選挙権保持者登録にないなどと止められることもなく、短時間で投票をしてきました。

この当たり前を獲得するために何が行われてきたのか、そしてこれを守っていくために意識が必要であること。

他国のことであると片づけることもできますが、民主主義を掲げるのであれば私は自分の権利を知り、そして他者がその権利を侵害されることを許せません。

市民が大きな力を持ち声を聴いてもらえる機会である選挙。

日本でも18歳以上は投票できますが、国籍法にて日本国民とされる必要があり、帰化していない外国人とされる方たちは除外されています。

緊急性の高いドキュメンタリーではあるのですが、やはりここも一つの時代のターニングポイントとして覚えておく必要があります。立ち返りながら先に進めているのか見直していく。

Amazonプライムビデオにまた一つすごく意義深いドキュメンタリーを観れました。

ちょっと散漫ですが、感想は以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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