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「生きる Living」”Living”(2022)

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living-2022-movie-Bill-Nighy 映画レビュー
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「生きる Living」(2022)

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作品概要

  • 監督:オリヴァー・ハーマナス
  • 脚本:カズオ・イシグロ
  • 原作:黒澤明『生きる』
  • 製作:スティーヴン・ウーリー、エリザベス・カールセン
  • 製作総指揮:ノーマン・メリー、ピーター・ハンプデン、ショーン・ウィーラン、トーステン・シューマッハー、エマ・バーコフスキー、オリー・マッデン、ダニエル・バトセック、カズオ・イシグロ、ニック・パウエル
  • 音楽:エミリー・レヴィネイズ=ファルーシュ
  • 撮影:ジェイミー・D・ラムジー
  • 編集:クリス・ワイアット
  • 出演:ビル・ナイ、アレックス・シャープ、エイミー・ルー・ウッド、トム・バーク 他

黒澤明不朽の名作「生きる」を1950年代にイギリスを舞台にしてリメイクした作品。

2011年「Beauty」で注目を集め、その後「Moffie」(2019)でBAFTAノミネートも果たした南アフリカ出身のオリヴァー・ハーマナスが監督を務めます。

主演は「人生はシネマティック!」などイギリスを代表する名優ビル・ナイ。

また「心のカルテ」「シカゴ7裁判」などのアレックス・シャープが、ビル・ナイ演じる主人公のオフィスに入る新人役を演じます。

またオフィス内で自身のキャリアを伸ばそうと奮闘する女性を「ルイス・ウェイン  生涯愛した妻とネコ」などで注目を集めたエイミー・ルー・ウッドが演じています。

その他「Mank /マンク」でオーソン・ウェルズを演じたトム・バークなどが出演。

今作は東京国際映画祭でもプレミア公開されていましたが、すでに年が明けてから一般公開が決まっていたのでその際にはスルー。

様々な映画賞へのノミネート、受賞を果たし非常に高く評価され、アカデミー賞でも主演男優賞と脚色賞にノミネートしていました。

一般公開されたので早速観に行ってきました。ファーストデイだったのでほぼ満員での鑑賞になりました。しかしシニア層ばかりで若い世代がいなかったですが。

「生きる Living」公式サイトはこちら

~あらすじ~

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1953年のロンドン。第二次世界大戦からいまだ復興中のイギリスのこの地で、役所に勤めているウィリアムズ。

生真面目で部下には敬遠され、家では息子夫婦にやっかいもの扱いされている。ただ家と役所を往復するだけの毎日を送っていた。

しかしある日彼は医師から、癌のために余命はあと半年であると告げられる。

死を目前と知り自分の人生を見つめなおし始めるウィリアムズ。

羽目を外しに出かけ遅くまで飲んだり、仕事をさぼってぶらついたりとする中で、事務所でキャリアを伸ばそうとしていたマーガレットを見つける。

彼女は役所から別の職場への転職を進めており、ウィリアムズは推薦状を書くことに。

活力に満ちるマーガレットと過ごすうち、ウィリアムズの中で生きることへの熱意のようなものが生まれ、新たな一歩を踏み出す決意が生まれていく。

感想/レビュー

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リラックスして自己を確立した

黒澤明監督の「生きる」はあまりにも名作であり、そして時代を切り取っているにもかかわらず普遍的な意義を持つ一つの芸術として偉大です。

それを背景に持っているとなると、イギリスを舞台にしたリメイクを、しかもこの2020年代に作り上げることはとてつもないプレッシャーではないかと考えました。

それでも、観てみてすごく感じたのはもっとリラックスした、こわばらない自然さでした。

大きな存在が成し遂げた部分を、逆に安心して飛び込める舞台として使うような、いい意味で気の抜けたスタイルが感じ取れます。

往年の名作をリメイクするから・・・みたいな覚悟とかは感じません。仰々しさもなく、素朴と言っていい。

でもだからこそ、イギリス版としてのアイデンティティを確立できていると思いました。

脚本上の変更点はもちろんありますが、それだけではなくて、変に原作意識をしないのが良い判断なのかもしれません。

どの時代でも刺さる

イギリスらしさを持ちつつ、共通項と普遍性も確立している。

普遍性に関しては監督の素質もあるのかもしれません。

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オリヴァー・ハーマナス監督の「Beauty」は差別主義者が実は同性愛者であり、自己嫌悪ゆえの暴力性を描くもの。

そして「Moffie」はアパルトヘイトの時代である80年代に従軍した青年の、黒人差別と自己の同性愛者であることの隠蔽をテーマにしている作品。

どちらも、人間性を描いていますし、後者は時代劇ながらすごく現代的な題材を混ぜ合わせています。

遠い昔の話・・・とはならない。

そんな感覚を持っている、そして表現できるハーマナス監督だから、今回のリメイクも同じように今の時代を描いていると思えるほどに響くのかと。

共通点は抑制

原作とは製作の時代が異なり、またイギリス的リメイクを果たしつつも、共有するものがあると感じます。

それはお互いの文化的なものなのか、感情に対して抑制が働くことです。

全体の空気を重視したり、読みあいのような人間関係を持ち、そして大きく感情や欲求をあらわにはしない。

不器用なほどに自分を言いあらわせないウィリアムズのもどかしさは、ビル・ナイが演じることにより親しみを増し、すごく入り込みやすく感じます。

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再生と明かりとしての若い世代

ウィリアムズとは異なり、自己を表現し伸ばしていこうとするのは若い世代です。

アレックス・シャープ演じるピーターも周囲の空気を読もうとはしますが、やはり言うところでは言う。

また何よりも輝くエイミー・ルー・ウッド。キャリアのために奔走する彼女は優しく他者に関心があり穏やかです。

しかし自己実現をしっかりと持ち決してひるまない。明るい太陽な存在としてエイミーが素晴らしい存在感を放っています。

彼らはこの時代の、戦後のイギリスの光です。その光を受けてウィリアムズは公園の計画を進めていく。

小さな目の前のことを

ウィリアムズ含めて大人たちは、ぼやけて個人の判別もつかないようなシルエットで、スーツに身を包み毎日出勤する。

そしてやるべきことをただいつも先延ばしにして過ごしていた。

さながらその”個”のなさと”生”の不在はゾンビですね。ただこの状態というのは現代の全ての人に当てはまっていくと感じます。

大きな冒険もしないし世界を変える革命も起こさない。ただ目の前のファイルの処理を、誠意をもってやるだけ。

ミニマムな一歩だからこそ、観客にもまねできる範囲だから、とても共感しやすいのです。

正直なところ、往年の名作のリメイクなんて聞いた時には不安でした。監督もあまり知らなかったですし、ビル・ナイは好きですがやはり時代性もあるかな・・・と。

しかし今作は素敵なリメイクになりながら、普遍性を保ちさらに自己を確立。これは必見の作品だと思います。

今回の感想はこのくらいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた。

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