「グローリー 明日への行進」(2014)

  • 監督:エイヴァ・デュヴァーネイ
  • 脚本:ポール・ウェブ、エイヴァ・デュヴァーネイ
  • 製作:クリスチャン・コルソン、オプラ・ウィンフリー、デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナー
  • 製作:ブラッド・ピット、キャメロン・マクラッケン、ディアムイド・マッキオウン、ニック・バウアー、エイヴァ・デュヴァーネイ、ポール・ガーンズ、ナン・モラレス
  • 音楽:ジェイソン・モラン
  • 主題歌:ジョン・レジェンド、コモン “Glory”
  • 撮影:ブラッドフォード・ヤング
  • 編集:スペンサー・アヴァリック
  • 出演:デイヴィッド・オイェロウォ、カメルン・イジョゴ、ジョヴァンニ・リビシ、トム・ウィルキンソン、ウェンデル・ピアース、テッサ・トンプソン、キース・スタンフィールド、ティム・ロス、コモン、アレッサンドロ・ニヴォラ 他

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1965年、アラバマ州セルマからモンゴメリーまでの、黒人の選挙における有権者登録を求め続いた行進を描く歴史ドラマ作品。

監督はエイヴァ・デュヴァーネイ。ドキュメンタリーなどを手掛け、映画はプロモートからマーケティングまで経験のある方です。

行進を率いたキング牧師をデイヴィッド・オイェロウォ、当時公民権運動と投票権法の推進を求められていたジョンソン大統領をトム・ウィルキンソン、人種隔離擁護派で行進を妨害するアラバマ州知事をティム・ロスが演じています。

一部大統領とキング牧師の関係性の歴史的な正確さで議論を呼んだものの、作品は非常に高い評価を受け、数々の映画祭や賞レースでノミネート。

特にキング牧師を演じたオイェロウォの演技は絶賛され、ゴールデングローブ賞にもノミネート。アカデミー賞では作品賞と主題歌賞にノミネートし、主題歌賞を獲得しました。

公開時まだ学生でとても観たかったのですが、なんかの都合で観ていません。海外行ってた?かなり遅れてのAmazonプライムビデオでの配信版の鑑賞となりました。

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1965年。合衆国は公民権運動の真っ只中にいた。

アラバマ州のセルマでは人種隔離政策がいまだ横行。

黒人に選挙権を与える有権者登録では、不当な障壁を設けることでその登録を阻止、仮に登録されても、住所氏名がさらされその黒人がリンチされるような悲惨な現状だった。

そこで公民権運動の主導者であるキング牧師がSCLCを率いセルマでの抗議行進を計画。

しかし黒人たちの権利活動を好ましく思わない現地白人たちや保安官、そしてアラバマ州知事らの妨害が苛烈になる。

キング牧師は時の政権ジョンソン大統領にもこのアメリカの現状改善に尽力を求め戦いを続ける。

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歴史上の大きな事件たる血の日曜日、そしてセルマの行進を主題に描き、もちろんその偉業やそれを成すために尽力し続けたMLK他活動家の人々を称える作品ではあります。

しかし、単純に事実やアメリカの公民権運動、キング牧師の教科書的な紹介にならず、むしろとてつもなく個人的であり人間的で直接自分に響いてくる作品でした。

まず、ここでデイヴィッド・オイェロウォが演じているキング牧師ですが、彼のたぐいまれな演技、キング牧師の描かれ方がなににしても素晴らしいのです。

オイェロウォが成し遂げているのは、キング牧師を生き返らせること。ここではキング牧師の演説をそのままに再現したりしません。それではモノマネ。

そうではなくキング牧師の話し方や話術テクニックなどを研究し、本質を乗り移してスピーチを行う。

だからこそ、キング牧師本人がまた再来し人の道を説いているように感じました。

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彼は話がうまく、演説の巧みな技巧、頭脳はしっかり伝わりますが、天才というよりもむしろ鍛錬や戦術をしっかり考えた、優れた活動家であると描かれているのが好印象。

曖昧な聖人やスーパーヒーローとしてキング牧師を描かず、あくまで一人の人間であり、彼自身様々な葛藤や忍耐の中、ある意味機械的にも戦略をもって行動しているのがうかがえるのです。

そして弱い部分も不完全な部分も押し出されています。

ついて回っていた女性関連の問題やマルコムXとの関係。キリストのように非人間的な者でなく、彼の中にも後ろめたいものや攻撃性、嫌悪もしっかりと持たせ描いている。

だからこそ、私としては小学生の頃教科書で読み、映像を見たキング牧師よりもっと個人レベルに近づくことができました。

彼の傍ら、1965年のこのアメリカに生き、問題を目撃したような。

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その近さは、ある意味で恐ろしい経験すら身近になります。

キース・スタンフォールド演じるジミー・リー・ジャクソンの死を生々しくする。レストランに怯えて隠れながら一方的に殴られそして冷酷に射殺される。

自分もあの場にいたようです。デモにも参加し、大切な人が殴られるのを見ていた。

その場にいるような臨場感をもたらしながらも実録的ではないブラッドフォード・ヤングの撮影は、今作のあらゆる場面を非常に味わいあり美しいものにします。

画面構成としてもフォーカスの使い方とか、背景に置かれるワシントンの肖像画とか、対話の中における大きな流れ、転換期など示唆的でした。

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理不尽な暴力、不正、非人間的な扱いや行い。それらが目の前で展開された時、人として何をすべきなのか。

この作品はキング牧師らを人間として丁寧に描きながら、やはりドラマをもたらし、私たちに働きかける。

キング牧師の戦略はそのまま有効です。

この惨状をみて、人が人の痛みを推し量り行動できると示します。虐げられる人をみながらその状況を黙認できないのです。

セルマ行進の惨劇をTVで観たとき、民衆が涙し動き出します。

キング牧師が望んだのは人を動かすドラマ。ここでは人命がかかるような危険な場面であり、警棒や銃が無防備な人に向けられることになってしまうのですが、それでも変化をもたらすために必要なのです。

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映画というのもまさにそうだと思います。

できれば人が傷つけられる瞬間など観たくないですし、観なくて済む世界が良いですよね。

それでもこの世界には不正が溢れている。その時自分を鼓舞し立ち上がらせてくれる人やそうしたドラマが必要なのかもしれません。

この映画を通して、公開当時のファーガソン、またその後のウィメンズマーチなど人の行進に対する姿勢が変わると思います。

デイヴィッド・オイェロウォのリードの演技、美しい撮影、感情を揺さぶるドラマチックさすべてが折り重なった力強い作品でした。

現在(2020.4.12)Amazonプライムビデオにて配信中ですので興味のある方は是非。

今回の感想は以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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