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「ウエストワールド」”West World”(1973)

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映画レビュー
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「ウエストワールド」(1973)

  • 監督:マイケル・クライトン
  • 脚本:マイケル・クライトン
  • 製作:ポール・N・ラザラス3世
  • 音楽:フレッド・カーリン
  • 撮影:ジーン・ポリト
  • 編集:デヴィッド・ブレサートン
  • 出演:ユル・ブリンナー、リチャード・ベンジャミン、ジェームズ・ブローリン 他

こちらは多くのSF小説を手掛け、映画化も成功している作家であるマイケル・クライトンが監督した作品。彼は「ジュラシック・パーク」(1993)なんかで有名ですね。

タイトルにはウエストとあるように、西部劇のルックが推されてはいますが、あくまで西部世界です。現代を舞台にテーマパーク内で起こる、空想科学のスリラー。この点もやはりクライトン作品に通じているのでしょうか。

ユル・ブリンナーが悪役を務めていて、「ターミネーター」(1984)の原型ともいえる恐ろしさが見どころ。

広大な砂漠に建設された、デロスという遊園地。そこでは中世の騎士の世界、古代ローマ帝国の世界、そしてアメリカ開拓西部劇の世界が用意されていた。

客は1日1000ドルという大金を払い、このテーマパーク内で実際にその時代の人間になりきって楽しむことができるのだ。

弁護士をしているブレインは、友人マーティンと共に西部の世界へと足を運んでいた。ガンマン、保安官に女たち、酒場での喧嘩や決闘などを存分に楽しむ2人。

しかしそんな時、各エリアでは運営するロボットの故障が目立ち始めていた。

客にけが人が出ない内に園内を閉鎖し、ロボットの修理を申し出る科学者たちだったが、経営者側は利益損失を嫌い受け入れない。そしてとうとう、ロボットの暴走がはじまる・・・

すっごく短めな上映時間。タイトな中にこの映画は4つの世界を詰め込んでいる点に楽しさがあります。現実の私たちがいる世界、そして遊びとしての3世界。ここで私的には高得点。

映画というのは非現実でも空想でも目の前に作り出してくれているだけで嬉しいですし、しかもこの映画ではカットが変われば時代も国も変わってその中へと入っていけるのですから。

3世界を観てその遊びの楽しさに酔いしれつつ、科学者や運営たちが映るとき、そのセコイ現代人間にちょっと萎えてしまう悲しさもありますね。

しかも園内ではセックスも暴力もお客の自由なんですから、まあ利益>倫理な腐ったところも恥ずかしい。

さてジョシュ・ブローリンの親父さんが観れるところも良いですが、やはり目玉はユル・ブリンナー演じるガンマンロボット。

故障が原因と思われますが、執拗に主人公を追いかけてくる姿は、まさしくキャメロンのターミネーター。

常に人のそれではない輝きを持つ目でじっとこちらを見て、表情一つ変えずに延々と追いかけまわしてくる。見た目や言葉ではなく追跡という怖さをもつモンスターです。

音楽と言っていいのかと思うほどの不気味な音。電子音や何かの足音のような音が緊張感を持っていて、ガンマンロボットの追跡時の怖さを引き立てていますね。

地獄の果てまで追いかけてくるのではないかというガンマンロボット。

まったく、自分たちの娯楽のために作り出した「物」に殺されるとは滑稽です・・・

しかし、これは笑い事ではありません。製作時の社会、漠然としたコンピュータ世界への恐怖というのも感じられるのですが、同時にまた制御できると思っていた物が逆襲してくるのは普遍的な危機です。

ベトナム戦争、核兵器。統治制御できると思いながらも、悲惨な結果を招いていた当時からすれば、痛烈な皮肉でもあると感じられます。

また企業が大きくなり、それこそ絶大な権力を持つ人間のように人格化されていくことへの警鐘とも取れますね。

外部からの絶対的な破壊者ではなく、内側からのもの。なんなら人類が産み落としたわが子です。

好き放題に使い、いつしかそれに滅ぼされていく。テクノロジーとバカな人間たちを厳しい目で描く、クライトンらしい映画。

4つの世界を見て回り、最高にカッコよくて怖いユル・ブリンナーも観れる、秀逸なスリラーです。お勧めです。そんな感じでレビューでした。それでは~

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