「サイド・エフェクト」”Side Effects”(2013)

「サイド・エフェクト」(2013)

  • 監督:スティーブン・ソダーバーグ
  • 脚本:スコット・Z・バーンズ
  • 製作:ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ、グレゴリー・ジェイコブズ、スコット・Z・バーンズ
  • 製作総指揮:ダグラス・ハンセン、マイケル・ポレール、ジェームズ・D・スターン
  • 音楽:トーマス・ニューマン
  • 撮影:スティーブン・ソダーバーグ
  • 編集:スティーブン・ソダーバーグ
  • 出演:ルーニー・マーラ、ジュード・ロウ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、チャニング・テイタム、ヴィネッサ・ショウ、アン・ダウド 他

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「オーシャンズ11」のスティーブン・ソダーバーグ監督が描く、うつ病の女性が処方された薬の副作用により、夫を殺害してしまった事件をめぐるミステリー。

うつ病を患う若い女性エミリーには「キャロル」などのルーニー・マーラ。そして彼女の担当医になる主人公はジュード・ロウが演じています。

また前任の医師の役にはキャサリン・ゼタ=ジョーンズ、そしてエミリーの夫役にはチャニング・テイタムが出演しています。

いろいろなジャンルを手掛けていくソダーバーグ監督ですが、今作ではサスペンスやミステリーの巨匠たるヒッチコック作品群との比較やそれらを引用しての賛辞を受けるほど高評価を博しました。

ちなみにソダーバーグ監督は今作でいつもの名前で撮影と編集もやっていますね。

日本でも北米公開同年に公開されていましたね。学生のころに観ましたが、最近もう一度改めて見直す機会がありましたのでここで感想を残しておきます。

ちなみにタイトルのサイド・エフェクトはそのまま”副作用”という意味になりますね。作中でもそこが争点にはなります。

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うつ病を患っているエミリー。彼女の夫はインサイダー取引によって有罪判決を受け服役していたが、ついに出所した。

新しい生活が始まり、支えとなる夫も戻ったのだが、エミリーは依然としてパニック障害などに苦しんでいた。

ある時、エミリーは車で壁に突っ込むという自傷行為を起こし病院へ。そこで偶然精神科医のバンクスと出会い、彼の診療を受けることになった。

そこでバンクスは新しい抗うつ剤であるアブリクサをエミリーに処方。不可解な行動という副作用が出るものの、エミリーはアブリクサが必要だと処方続行を望んだ。

しかし、ある時最悪の出来事が起きてしまう。

新薬の副作用で引き起こされた夢遊病で、エミリーは意識もないままに夫を刺し殺してしまったのだ。

そしてエミリーの心神喪失が問われると、その新薬処方の責任問題として今度はバンクスに批判と疑いの目が向くのだった。

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作品評に多いように、確かにヒッチコック作品との比較もうなずける、それだけ良質なミステリーだと思います。

謎めいた要素や魅惑にやや性的な要素すら加えている。そして主人公の男が巻き込まれる形で(つまり大きな陰謀に完全に偶然捕まる)関与することや精神疾患の心神喪失などが扱われる点は大いに似ていると思います。

OPはトーマス・ニューマンのスコアもいい役目を果たしており、綺麗で見事なものです。穏やかで美しい音色の中アパートの一室が映し出され、しかし床に広がる血痕から一気に不穏な音色へと変えていく。

確かにヒッチコック的な始まりまかなと思います。

それらを踏まえたうえで、しっかりと舞台というか根底にある部分を現代アメリカに置き換えて展開するところが素晴らしいと思いました。

とにかくこの作品のそこにはアメリカ社会の現状というか、そもそもの社会の精神が異常をきたしているところがうかがえます。

みんなして精神薬飲みまくって生活して、それが普通ってことが異常です。

そしてまずもってエミリーの夫であるマーティンの罪がインサイダー取引というものおもしろいところ。暴力犯罪ではないんですよね。

しかしリーマンショックを経てからのアメリカとしては到底許せないというか、この資本主義の結晶体たる金融証券の産業で結局はズルをして儲けていたというところ。

で、その罪自体もまたそのあとの展開に必須の要素になっていますので巧みに構成されています。

今作の脚本は本当に素晴らしいところ。

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作品の序盤は完全に薬の副作用を主眼にして展開していきます。

エミリーの行動は薬によるものとすれば、心神喪失で無罪を勝ち取れる。しかし、その一方で処方したバンクスへ起訴対象が移るのもまずい。

目の前にこのジレンマをぶら下げるからこそ、本当の事態に気づけない。しかし、ソダーバーグ監督はしっかりと演出によって後半部分への布石を積んでいきました。

違和感や疑問点がその場に残されないのは素晴らしいです。

よく後半部分への伏線回収と称して、その時点では全く意味が分からない、意味がないものや人間、行動が移されることがありますが、それらは伏線ではないんですよ。

その時点でもしっかりと意味を持って、話に必要なピースとなっていながら、のちに状況が変わったとき、全く別の意味合いを持ち始める要素こそが伏線です。

アブリクサへの執着、ふと映される駐車場係員の名札、そしてはっきりと移されないエミリーの発作。

その繊細な扱いによって、目の前の新薬開発による事故をとらえるプロットは自然な形でしかし確実に驚きも持ちながら、精神疾患は嘘ではないか、そして巧みな罠を紐解く推理へと展開される。

話を転がしているのに、そして急展開といっていい驚きがあるのに、そこには無理やりな力とか理不尽さもないのでしっかりグリップしていきます。

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とにかくソダーバーグ監督はどんなジャンルであろうとものにしてしまう、見事な手腕を持っているんです。

そして今作でそれを成立しうるのは、ルーニー・マーラの演技の力があると思います。か弱く精神的に追い詰められた妻を見事演じながらも、演技の中での演技を見せていく彼女には圧倒されました。

特に終盤に抱えてはエミリーの演技の裏側までも映すようなシーンがありましたね。

電話をかける前にその緊迫した妻の雰囲気を作りこんでからかけていくあたりや、最後にシーバートの前でこれまた一芝居打つシーン。

自分はとにかく演技の中の演技が好物なので、ルーニーのそれをすごく楽しんで観ました。

エミリーのカウンセリングなどクローズアップが多いですが、その中でもほんのりとエミリーの傲慢さが見えているのが上手いところ。彼女がセラピーで語る想い出。

あれは夫との話のようで実は、裕福で何もかも思いのままだったころを懐かしんでいるだけです。夫との想い出ではないんですよね。

あのあたりにややふてぶてしさを残せるルーニーがナイス。後演者でいうと、アン・ダウドがこのミステリーに感情的な部分を与えてくれていて、その小さな役回りの中で印象強かったです。

副作用という題名はまさに序盤を現すのに最適ですが、それ自体がミスリード。本当はこの資本主義やグロテスクな豊かさに対する副作用なのかもしれません。

富や名声などを得ると、それを失うことに恐れそして憎しみを持つ。エミリーもそして他の精神科医たちも。

アメリカ社会の毒を題材にしたすごくおもしろいミステリーでした。

今回の感想はこのくらいになります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではまた。

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