「レジェンド 狂気の美学」(2015)

  • 監督:ブライアン・ヘルゲランド
  • 脚本:ブライアン・ヘルゲランド
  • 原作:ジョン・ピアソン
  • 製作:ティム・ビーバン、エリック・フェルナー、クリス・クラーク、クウェンティン・カーティス、ブライアン・オリバー
  • 製作総指揮:ケイト・ソロモン、アメリア・グレンジャー、ライザ・チェイシン、オリビエ・クールソン、ロン・ハルパーン、トム・ハーディ
  • 音楽:カーター・バーウェル
  • 撮影:ディック・ポープ
  • 編集:ピーター・マクナルティ
  • 衣装:キャロライン・ハリス
  • 美術:トム・コンロイ
  • 出演:トム・ハーディ、エミリー・ブラウニング、デヴィッド・シューリス、タロン・エドガートン 他

イギリスの犯罪史に残るギャング兄弟の伝記を、「LAコンフィデンシャル」(1997)でアカデミー賞を獲得、「ミスティック・リバー」(2003)でもノミネートを果たしているブライアン・ヘルゲランド監督が映画化。

監督としては「42世界を変えた男」(2013)などを撮ってる人です。

扱われるのは悪名高きクレイ兄弟。彼らは「ザ・クレイズ冷血の絆」(1991)でも映画化されているようです。(これは未見)

あんまし大きな公開ではないですが、トム・ハーディファンは結構観に行ってるようですね。私も彼の演技目当てでした。

ちなみに今作はR15指定・・・なのですが、一体何が引っ掛かった?ホモセクシャル描写だとすれば、ちょっとやり過ぎ。

1960年代初頭のロンドンで、誰もが恐れる兄弟がいた。レジーとロニー、一卵性双生児のクレイ兄弟だ。ハンサムで実業家肌の兄レジー、暴力性が高いが純粋なロニー。

2人の勢いは止まるところを知らず、クラブ、カジノの運営に始まり、マフィアや政府高官とのつながりまで手に入れる。

成長していく兄弟であったが、レジーは部下の妹であるフランシスと恋に落ちる。またその一方で、ロニーの異常行動も目立ち始めていた。

上映時間131分。クレイ兄弟の過去は話に示されており、フランシスとの恋から始まる物語なんですが、この兄弟のメインの人生を最後まで描いています。

これ自体は悪くはないのですが、なぜだかだるい。

長く感じてしまうのは、編集によるペース配分が問題なのか、はたまた脚本上での本作の焦点の絞りきらなさによるものか。

スコセッシ監督の「グッドフェローズ」(1990)では幼少期から結婚生活に成功に逮捕までやりきっているのに、長く感じません。決してダメダメではないにしろ、全体を語るには遅いテンポだと感じました。

この兄弟の悪さ。それを推し出す場面がもっと欲しかったかもしれません。

拷問、乱闘、問答無用の脳天撃ち。要素はあれどイマイチカタルシスが足りなかったと思います。溜めに問題があるのかな?

ある程度観客にこれからどうするのか予測を可能にしているので、急激さが削がれていますね。ジャックを殴るのもお決まりになってしまっていたので、シーン全体が先読みできてしまうのです。

様々なところで音楽が使われていて、ミュージックボックス映画でもあるこの作品で、ロニーが音を中断するのは良い感じだと思います。

彼が悩みの種。片割れであるロニーという存在が、レジーのリズムを崩してしまう。

空白を作りつつフランシスを捉えるカメラも良い感じですが、より対比的にするためにも同様の構図でのツーショットが前半にあると良いのになあとか思ってしまいました。

演技面は非常に満足です。

奥さんを演じるエミリー・ブラウニング。静かな演技というのを貫いていて、抱え込みやすい女性としての哀しさを湛えていました。

もちろん、目玉であるトム・ハーディの双子演技は存分に楽しめるものでした。今はこう同ショット内に合成しても違和感がかなりなくなりますね。そこは技術的にもすごいんですが、やはり演じ分け。

レジーに関してはトム・ハーディのハンサムでイギリス紳士な部分を押し出していまして、スッキリとシンプルなスーツに綺麗に身を包み、物腰も柔らか目。

優しい笑顔を見せる部分もあり、ハーディの一つのスタイルが注ぎ込まれています。

対してロニーの方は、「ブロンソン」(2008)で見せたような体から溢れる狂気を体現しています。メイクも手伝いながら、サスペンダーがまるで拘束具化のようにも見える、まさに狂犬。

不服そうに口をつぐんだり、目を見開いたり。乱闘シーンでの戦闘スタイルの違いもしっかりしていて良かったです。

フランシス始め他の人物といる時に、その体の動かし方などでしっかりレジーなのかロニーなのか、しゃべらずとも分かる。フィジカルな演技の光るところかと。

タロン・エドガートンとのイチャイチャもなんか自然な感じ。レジーと並んでも全くそんな感じしないのに。凄いね。

ちょっともったいなかったのは、これまた一人二役としてはおもしろい喧嘩シーン。

もちろんダブルを使う必要があるわけですが、まあ髪型や体つきは良いとして、手が・・・窓枠に着くハーディの手が片隅に残っていたので、喧嘩の時に床に着いた手がかなり違うのが目立ってしまっていました。指の太さがね、違うのです。

レジーを基本的には主軸に置きながら、ギャング世界とプライベートな家庭を両立できない姿を描きます。

兄弟ゆえに切り捨てられない、全てを超えて存在する一線。本作では最終的にそこに着地していると思います。しかしだとするならば、より兄弟のみに焦点を絞って、フランシスの方はサイドに置いてほしかった気もしますが・・・

搾りきれずに、夫婦と兄弟の両方に足を突っ込んでゆっくり歩いた感じの映画でした。トム・ハーディのフィジカルな演技は楽しめますので、私的にはそこである程度満足な映画でした。

そんなかんじのレビュー。それでは、また。

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