「DUNE/デューン 砂の惑星」(2021)
- 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
- 脚本:エリック・ロス、ジョン・スペイツ、ドゥニ・ヴィルヌーヴ
- 原作 フランク・ハーバート『デューン』
- 製作:メアリー・ペアレント、ドゥニ・ヴィルヌーヴ、ケイル・ボイター、ジョー・カラッチョロ・Jr
- 製作総指揮:トーマス・タル、リチャード・P・ルビンスタイン
- 音楽:ハンス・ジマー
- 撮影:グリーグ・グレイザー
- 編集:ジョー・ウォーカー
- 出演:ティモシー・シャラメ、レベッカ・ファーガソン、オスカー・アイザック、ジェイソン・モモア、ジョシュ・ブローリン、ゼンデイヤ、ハビエル・バルデム、ステラン・スカルスガルド、シャーロット・ランプリング、デイヴ・バウティスタ 他
作品概要
有名なSF大河小説であるフランク・ハーバートの「デューン」。1984年にはデヴィッド・リンチ監督が「デューン 砂の惑星」を撮りましたが、今回再びの映画化。
監督を務めるのは「灼熱の魂」や「ブレードランナー2049」などのカナダ出身のドゥニ・ヴィルヌーヴ。「ブレードランナー」の続編を作った後、今度は超大河小説のリブート?リメイクということで大作をかなり任せられると、ヴィルヌーヴ監督もだいぶ大物になりました。(一方で商業的なプレッシャーがかかるようにもなったのかな?)
主人公ポールを演じるのは、「君の名前で僕を呼んで」など今を輝くティモシー・シャラメ。そして両親の役にはオスカー・アイザック、レベッカ・ファーガソン。
ポールの親友であり戦士を演じるのは「アクアマン」のジェイソン・モモア、またポールの夢に出てくる謎の女性をゼンデイヤが演じます。
その他にハビエル・バルデムにステラン・スカルスガルド、シャーロット・ランプリングなどかなり豪華な面々がそろっています。
この作品も2020年の公開スケジュールにいたものの、他の対策の例にもれずコロナ感染症拡大を受けて公開は延期に。結果として2021年に公開されることになりました。
自分は原作にもリンチ版にもなにも思い入れがないために、あくまでヴィルヌーヴ監督の新作という位置づけで鑑賞を待っていた作品。さすがに歴史ある作品だからか、年齢層はかなり幅広く劇場に来ていました。
あと、若い女性はティモシー・シャラメ目当てだったりするようです。
今回はIMAXにて鑑賞。
~あらすじ~
遥か遠い未来。アトレイデス家は銀河を収める皇帝から、砂漠の惑星デューンの管理を任せられた。
その惑星では銀河中のエネルギー源になる香料(スパイス)であるメランジが採取できることもあり、この惑星を制する者は強力な力を得ることになる。
アトレイデス家の後継者ポールは、両親や武術鍛錬役であるガーニーたちとデューンへと移り住み、統括管理を始めた。
しかし、このアトレイデス家の任務は、デューンをはじめに制し80年以上も支配していたハルコンネン家と皇帝が仕組んだ罠であった。
皇帝の思惑に感づきながらも、アトレイデス家はデューンの原住民であるフレメンの一族との協力を模索する。彼らの砂漠の知識、力、シャイ=フルードと呼ばれるサンドワームを掌握すれば、皇帝やハルコンネン家も凌駕できると信じていた。
しかし、内通者の存在により皇帝とハルコンネン家の大規模な夜襲に会い、ポールは母とともに砂漠へと逃れ、追撃をかわしながらフレメンの助けを求めに行くことになった。
感想/レビュー
デューン砂の惑星という作品の歴史
デューン砂の惑星は過去にデヴィッド・リンチ監督が映画化をしましたが、絶妙に微妙な何とも言えない評価になっているということは知っています。
未見なので大したことが言えないですが、当時劇場に見に言った方はなんだかパッとしないと言っていました。
無理やりにでも2時間ちょっとにまとめようとした結果、そもそもの大河ドラマがダイジェスト化してしまい、また把握もしずらい感じになったと。
結果としては世紀の駄作だの珍作などと言われているようですが、それゆえにちょっと観たくもなりますね。
また、初めはリンチ監督ではなくて、あのアレハンドロ・ホドロフスキー監督が映画化を進めていたのですが、彼は忠実に必要な上映時間を(10時間)求め、モメまくって企画が消え去ったという経緯もあります。
題材として結構小難しかったり、多種多様な用語に紐づく世界観があったりと、本当に広い世界であるために、これまでの試みも結構難航したわけですね。
さて、それでは今回の新生デューンはどうだったのでしょうか。
ヴィルヌーヴ監督の過去作に感じる資質
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の抜擢に関して、「メッセージ」に「ブレードランナー2049」と、ある程度難解もしくは描くのに、映像化するのに苦労するである題材をクリアしてきたことが要素としてあるのかなと感じました。
「プリズナーズ」などにおける圧倒的な世界への空気、没入の感覚。
「灼熱の魂」で象徴されるように、親子もしくは親の大きな影響を受けて苦難に立ち向かう子どもの視点という要素。
それら過去作で描いたことそれぞれが監督の資質になるため、ヴィルヌーヴ監督が選ばれた理由かもしれません。
共通して私が感じることは、その画面の静けさだったり、淡々としたような美しくたたずむような映像の連続の中で、人の感情や業というものがそれこそ津波のように押し寄せたり、張り詰めた水面のような静けさを持ったりと、人物の内面が主軸となるということです。
映像的には決して動的、衝動的ではないのだと思います。
むしろ、その中で揺れ動き荒れ狂う感情ドラマこそが、ヴィルヌーヴ監督の持ち味かなと思っています。
とまあ、デューンの話からそれたような気もしますが、とにかく資質としては叙事詩ではなくて、叙情詩として展開される(と勝手に思う)このデューンのチャプターを任せられる監督として、良い人選と思うのです。
結果としてそうだったかは別として。
中途半端で終わりを自覚しない映画
正直にいうとパッとしませんでした。上映時間は2時間35分くらいあり、それで話のスタートラインに立つところで終わりますと。
期待したことと違うのかもしれませんが、静かなトーンでじっくり進み、抑揚も感じないままにやっと本題に入れると思ったら映画は終わりました。
今作はしれっとですが、”DUNE part1″とタイトル表示がされますが、続編ありきの作成です。第一章です。
しかしそれが問題なのではなくて、この作品自体が終わりを持っていないように感じること。
そして終わらせ方を迷う中ではっきりと分からずに幕引きをしてしまうことです。
例え連続性がある作品だったとしても、その作品だけで見てスタートとゴールは明確である必要があります。
「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」でルッソ兄弟は明らかに続きのあるチャプターを、サノスの物語とすることで見事に1つの映画にしてみせましたが、今作はどうでしょうか?
私には明確な目的も狙いも終わりも見えません。
正直ぶつ切りとも思えますし、またやっとスタートラインに立ったら終わってしまった印象です。
ポールの視点において叙情詩として描くとして、今作のゴールは何だったか。フレメンに合流し仲間入りすることは事実でしかないのでそれを区切りとは言えません。
各種の用語や世界観の作り込みは流石ですし、そこまで置いてけぼりにはならないのですが、肝心なドラマがどうにも響いてこないのです。
運命を受け入れること、立ち上がることがポールの命題?だとすると前半に明確にそれを拒んだり逃げたりしていないと意味もなく思います。
また最後は初めての殺しをして終わっていきますが、相手の殺害=覚悟という点でも、はじめはどうしても殺しができないなんて描写もなかったです。
生命の躍動が感じられない
何度も見せられるティモシー・シャラメのアップと憂い顔。度々現れるゼンデイヤはこちらにほほえみ続け、本人がようやく出てくれば特に何もなく作品が終わる。
役者陣は本当に豪華です。ハルコンネン側のグロさなどすごいですし、顔役たるオスカー・アイザックも、レベッカ・ファーガソンも、ちょっとしたところかつヴェールで顔を隠しても印象を強く残せるシャーロット・ランプリングもさすがと言ったところ。
そして映像のレベルも凄まじいものがあります。
広大な背景と対比する人間のシルエット。香料の煌めきとかサンドワームの迫力。各惑星ごとの環境についても。
一方でメカや美術は私はすごいと思いません。漆喰のような質感や球形、チョココロネ宇宙船はドラゴンボールでありますよね?
あと羽のついたトンボみたいな船は、ブラックパンサーのワカンダの戦闘機に似すぎてて新鮮さはなかったです。
またヴィルヌーヴ監督にはアクションの資質もあまりない気がします。
印象的なところもなく、またこれだけの多文明がある世界ながらも、ガジェットも同じ(良いものは共有されるので仕方ないですが)ですし、何にしても戦い方に特徴がありません。
ちなにみ一番ハマれなかったのは作り込んだ世界のわりに生きていないこと。
クールで圧倒的ヴィジュアルを追求したからでしょうか。原作がそうだからでしょうか。
とにかくどの惑星もシーンも、そこに人々が生きている感覚がない。
だから距離を感じてしまいのめり込めなかったのかもしれません。
終始ローテンションで静かな絵面、抑揚の感じられないドラマ。立ち上がりが遅すぎて疲れた先に、「ここからが始まり」と言って終わってしまう作品でした。
確かに映像美と言える力強い(特にIMAXでは)画面はあると思いますが、その壮大さにストーリーすらも飲み込まれてしまったような気がします。
私個人の意見ですが、やはり続編ありきであろうとも、壮大なサーガのうちの1ピースであろうとも、映画というメディアに入れ込むのであれば、その中で明確な始まりと終わりを設けてドラマチックに描いてほしいなと思います。
ポールの叙事詩に乗れたという人はいいのかと思いますが、自分にはあまり合いませんでした。
映像美で持っていくだけの力がある可能性も秘めているため、どうせ見るならやはり圧倒的なIMAXなどの大きなスクリーンが良いでしょう。
ちょっと残念な結果でしたが、続編が来るのなら楽しみに待ちます。そもそも続編の制作にOKが出てないのにこの作品の内容な時点ですごく不安でもありますが。
というところで感想は終わりです。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
それではまた次の映画の感想で。
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