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「マトリックス レザレクションズ」”The Matrix : Resurrections”(2021)

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「マトリックス レザレクションズ」(2021)

  • 監督:ラナ・ウォシャウスキー
  • 脚本:アレクサンダー・ヘモン、デイヴィッド・ミッチェル、ラナ・ウォシャウスキー
  • 製作:グラント・ヒル、ジェームズ・マクティーク、ラナ・ウォシャウスキー
  • 音楽:ジョニー・クリメック、トム・タイクワー
  • 撮影:ダニエル・マッサーセシ、ジョン・トール
  • 編集:ジョセフ・ジェット・サリー
  • 出演:キアヌ・リーヴス、キャリー=アン・モス、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、ジェシカ・ヘンウィック、ジョナサン・グロフ、ニール・パトリック・ハリス、ジェイダ・ピンケット・スミス 他
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作品概要

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1999年の世紀末に登場しあらゆる概念やコンセプトを覆し新世界を切り開いた「マトリックス」

作品はシリーズと化しその後「マトリックス リローデッド」そして「マトリックス レボリューションズ」が立て続けに2003年に公開されました。

それから実に20年ほどの年月を経て、再びシリーズに新しいチャプターが書き加えられることに。監督はシリーズを撮り続けてきたウォシャウスキー姉妹のうちのラナ・ウォシャウスキー。

主演は久しぶりにネオを演じることになった「ジョン・ウィック」シリーズなど現在もアクションスターとして活躍するキアヌ・リーブス。また映画史に残る女性キャラトリニティをキャリー=アン・モスが再び演じます。

その他に最近は「アクアマン」「キャンディマン」で印象の強いヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世が新たなモーフィアスを、ネオを導いてく戦士をジェシカ・ヘンウィックが演じます。

マトリックスを再び起動するという話自体は以前からも何度かネットで話題には上がっていましたが、2019年には正式発表があり、キアヌの看板になっている「ジョン・ウィック」の第4作目と同時公開ということで湧きあがりました。

しかしコロナ感染症の流行を受けて撮影が中断したりとあって公開もずれていき、最終的には当初の2021年5月から12月へと移動。

ちなみにアメリカなどではクリスマスの週に公開なのですが、日本だけなぜか最速公開になっているんですよね。

初週末にIMAXにて鑑賞しました。その前にリバイバルで1作目のIMAX版も観ていたし(2020年にはドルビーシネマでも観ましたが)、配信版でシリーズも見返していて結構マトリックス熱が熱かったです。

お客さんの入りは結構いい感じで、やはりシリーズのファンらしい人が多かったですね。

「マトリックス レザレクションズ」の公式サイトはこちら

~あらすじ~

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大人気ゲーム「マトリックス」3部作を生み出したゲームクリエイター、トーマス・アンダーソン。

彼はしばしば現実と仮想空間の認識が曖昧になる症状に悩まされており、個別セラピーを受けてピルを処方され暮らしていた。

社内では「マトリックス」の第4作品目の企画が立ち上がり、トーマスもプロジェクトに参加するが、妄想や幻覚が激しくなることに不安を覚えていた。

そんなある時、トーマスは彼自身がうみだしたマトリックスのキャラクターであるモーフィアスと遭遇し、さらに自分の上司がエージェント・スミスとして自分に襲い掛かってきた。

混乱した彼は気づけばセラピストの前におり、ひどい症状から自分が正気を失いかけていると考える。

目の前の世界から逃げ出したいと思った彼がビルの上から飛ぼうとしたとき、見知らぬ女性が現れ彼を救い、不思議なドアへ導く。この先に真実があるのだと。

感想/レビュー

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トリロジーはすべて鑑賞しましょう

まず初めに言っておかなければいけないのですが、これを初めてのマトリックスにすることはできないことです。

大変かもしれませんが、これはマトリックストリロジーの続編であり、1~3作目をすべてしっかりと鑑賞しておくことが必須です。その点だけはご注意を。

さて、各所で、そして私自身もすごく懸念しておりまた楽しみでもあった作品。

やはり「マトリックス」シリーズが小学生の頃にドはまりした世代としても、こうして久しぶりにその新作、新たなストーリーが語られるというのは嬉しい限りです。

ただ同時に、昨今本当に昔の名作の続編やリブートが多い中で、果たして何を語ろうというのかという点については不安を覚えていたのも事実でした。

徹底した自己内省、コード分析

そこで今作はマトリックスという映画がどんなものであったのか、作品そして監督が経験したことがどんなものだったかを内省し、非常に細かいところまで分解していった作品になっていると思います。

非常にメタ的であり、かつ現実とは何かで遊んでいる。

この時代に実に20年を超えて再びマトリックスを起動するのは、結構苦労するところだったと思います。

そもそもマトリックスとは何なのか?については一般常識になってしまっているため、1作目のような衝撃は期待できません。

今まさに異世界転生とかは(少なくとも日本では)流行っているトピックですが、99年にその逆になっている現実の崩壊を描いた1作目。

さらにアクションを突き詰めてアイコンを増やしていったリローデッドもレボリューションズも一応は物語に集結を迎えていたため、どういった切り口で語り始めるのか。

特に前半部分のネオが再びマトリックスから目覚めるまでの下りについては、自己意識がこれでもかと高い上に非常に皮肉が効いていて楽しめました。

現実に目覚めるための「マトリックス」。サラリーマンとして働き、まさに会社にとっては電池のように生きたトーマス。そこにモーフィアスが現れ真実へ導く・・・

ネオの現在のマトリックスを説明するように1作目の映像がデジャヴとして挿入されながら、この伝説すらも商品となりそしてフランチャイズとなっていく。

ネオの物語がこの映画の中でそうなったことと、私たちの現実でも「マトリックス」というシリーズがフランチャイズになったことがシンクロします。

ワーナーブラザーズの名前まで出して、結構メタ的視点を与えます。

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折り重なるレイヤー構造

もちろんメタ構造自体は「デッドプール」とかでの第4の壁破壊などにも見られていますので、新しいことではないです。

しかし、さすがレイヤーが一つ多いですね。

映画の中の現実、映画の中で虚構として存在し現実のふりをしているマトリックス、そして観客が持っている現実の3層設定になっています。

この辺りを眺めている序盤、こういう語り口になっているんだな・・・とかなり楽しんで観ることができました。既にマトリックスとは何なのかが観客に知られているという設定すらも活かしています。

知っているからこそ、その認知を”映画シリーズ”として茶化すことも可能なわけです。

くり返しながらも上書き、解放

しかしそれではなぜ、そんな構造までもってして再び再起動する必要があったのか?

そこで私が感じるのは2つの理由。

一つはマトリックスという映画を解放すること。

もう一つは伝説をリピートさせながらもアップデートすること。

解放についてなのですが、子どものころに感じていたものと関連します。

リローデッドとレボリューションズを楽しみながらも、実は抱えていたモヤモヤ。

トリロジーとして展開した故に、機械VS人間のストーリーを帰結までもっていき、終わりというものを描いたわけですが、実は1作目自体の終わり方との連動は微妙に思っていたのです。

それは可能性について。

1作目の終わりは、かなりオープンだったと思います。

心を開放し、現実に目覚めたネオ。彼を探知したり追跡したりはできない、エラーメッセージの後、ビルどころか空を飛んでしまう。

この大きく開けたらストがすごく好きで、子どもながらに無限の可能性が最高だと思っていました。

続編もアクションのすごさなど良いのですが、どんどんと運命は一つに集約されましたので、今作の展開と最後に関してはまたオープンになってすごく好きです。

話が開けたと同時に、映画自体もまた創造主のもとに戻ったと思います。

マトリックスは解放と目ざめを促したにもかかわらず、結局はフランチャイズと商品化、ビジネスになり、そして意図とは異なる方向の意味付けすらされてしまう。

それがラナ監督の手に戻ることで、この映画はまた解き放たれたということです。

当初はワーナーもウォシャウスキー監督を外してでもシリーズの続編なりを企画していたとのことなので、本当に失いかけたのです。

他者が勝手に決めた自分=マトリックスという映画を進められそうだったのですね。

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トリニティを現代的に描く

さらにアップデートに関して。

今作は確実に1作目と呼応している話運びになりながらも、その主軸となる人物や最後に空を飛び立つ人物の変化が楽しめます。

ネオがマトリックスにとらわれてサラリーマン生活。彼をさがす現実側の者たち。エージェント、機械軍。

たしかにデジャヴのような作品です。

しかしその中で確実にアップデートがされている。それは今作がトリニティをいかに扱うかに表れていました。

伝説はネオという男性を救世主とし、彼を支え合いする者としてトリニティを配置しました。再びそれを現代に描くとして、そのままでいいのか。

今作はネオを主人公として進行しながらも、とにかくトリニティをもっとも重要な存在としていて、これはまるでネオを追い続けた1作目のようでありながら、確実に変化しています。

このところはなんとなく筋書きは同じでも現代の新たな神話を語った「クリード チャンプを継ぐ男」のような熱さを感じました。

最後に流れる音楽についても、リピートのように”Wake Up”なわけですが、今回はカバーになっていて歌っているのはSophia Uristaさんで、女性なのですよ。

監督自身が経てきたこと、変化が現れ、押し込められていた女性が選択し覚醒する。

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共生、戦わないことでの解放

子どもを使って抑圧しようとしたことに対するトリニティの反応。

彼女とネオは最終的にシステムから解放される、でもマトリックス自体を叩き潰そうとはしません。

トリロジーは人間か機械かの2択になっていました。青いピルと赤いピルどちらがいいのか。

自分に目覚めるということは大切で、他者に自分を作られプログラムされてはいけない。でもだからと言って、すべての繋がりを絶って世界から出ていくのか。それは違うということでしょう。

ネオもトリニティもお互いを必要としている。繋がることが大切です。

今回のミッションの成功も、人間と機械が協力してこその者でした。

どちらか・・・という二者択一さは現代には合いませんからね。分断のある今こそ、仮想現実も機械すらも認めながら、決して自分を封印せず目覚める必要がある。

その両方を勝ち取っていくこの二人の姿がまぶしいのでした。

1作目そのものはスタンドアローンな作品だと今でも思っていますし、それを越えてはいないかなと思います。

でもまあレボリューションズよりは良いですし、なんだか解放されたような終わりが私はすごく気に入った作品でした。むしろいろいろと時間がたった現在としては必要なピースなのかもと感じます。

某強力なアニメの劇場版などに押されてしまっていてIMAXで観るのがかなり貴重な体験と化してしまったのがちょっと惜しいですが、年末年始のお休みにはぜひ。一応過去作を観てから観に行きましょう。

というところで感想はおしまい。最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

ではまた。

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