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「シェーン」”Shane”(1953)

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映画レビュー
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「シェーン」(1953)

  • 監督:ジョージ・スティーブンス
  • 脚本:A・B・ガスリー・Jr
  • 原作:ジャック・シェーファー
  • 製作:ジョージ・スティーブンス
  • 音楽:ヴィクター・ヤング
  • 撮影:ロイヤル・グリグス
  • 編集:ウィリアム・ホーンベック、トム・マクアドゥー
  • 出演:アラン・ラッド、ジーン・アーサー、ヴァン・へフリン、ブランドン・デ・ワイルド、ジャック・パランス 他

西部劇の中でも傑作と名高い、ジョージ・スティーブンス監督の今作。アラン・ラッド演じる主人公シェーンは映画史に残るヒーローとして、また劇中最後の台詞”Shane! Come back!”も有名ですね。

本作にはキャプラ映画でおなじみだった名女優ジーン・アーサーも参加しています。

アカデミー賞では撮影賞を受賞。さらに作品、監督、脚色、そして助演男優賞には2名がノミネートしております。

アメリカ西部劇を観ていく上では、必見の作品であり、またホームステッド法やジョンソン郡戦争を背景としている作品としても勉強になるものです。

ワイオミング州の山々、ジョンソン郡の開拓地には牧畜業者と入植農民が暮らしていた。

ある時流れ者のシェーンというガンマンがジョー・スターレットの農家にやってくる。ジョーはシェーンを警戒するのだが、それもそのはず。

ここではライカー率いる牧畜業者が暴力も辞さずに農家を苦しめ、この地からの追い出しを図っているのだ。

ジョーはシェーンがライカー一味とは無関係だと知ると、無礼を詫びて家に招いた。そこでシェーンはジョー、妻のマリアンそして幼い息子ジョーイと親交を深めていく。

背景について少し調べてみたのですが、面白いものです。

ホームステッド法はまあ公地を一定期間以上自分で耕せば、私有地にできるというもの。そして今作で起きているのがジョンソン郡の戦争。その法案を悪用した牧場主ら大企業たちと、その虐待的な行為に耐えかねた小さな農家たちの闘争。

これは実にアメリカらしい。

真面目に働く人間が自らの地を切り開くアメリカ精神に、圧政に対抗する自由な個人の構図。まさしく西部の物語ですね。なので必然的に、今作はスターレット一家が善人で、ライカ―が悪役なのです。

土地の広々とした空間は、撮影で目いっぱい映し出されます。遠くから馬に乗った一団が近づいて来たり、向こうで家が燃え、そこにこちらから駆けていくなどいかにも映画らしい空間の使い方を見せてくれます。

さて、アメリカ西部劇の流れ者ガンマンと言えば必ず名前が挙がるのが、このアラン・ラッド演じるシェーンですね。

アランはちょっと二枚目な男だったのですが、今作では寡黙ながら頼れてそれでいて憂いもあるカッコいい男になっています。彼の印象はこの先のガンマン、マカロニに多く出る荒野の一匹狼たちに受け継がれていった気がします。

そういえばイーストウッドの「ペイルライダー」(1985)は今作のオマージュですね。

そんなシェーンを見る少年ジョーイ。彼の視点から語られる本作で、ジョーイはシェーンとの友情をはぐくみ、憧れを抱くのです。

何かと俊敏で警戒を怠らないシェーン。初めて見るこのできる男にジョーイは魅せられていきます。

一家と仲良くなっていく過程に時間はかけませんね。切り株のシーンは涙の出るほど良いシーンです。美しい。馬を使わず、自分の手で何とかしたいというのもうまいものです。

しかし、ジョージ・スティーブンス監督が作ったのは、単純にヒーローが現れて事態を解決するような映画ではありませんね。

今作は徹底して暴力の描写がすさまじい。ここは時代性もありますから、今から見るとどうかは分かりませんが、明らかに観客に不快感や恐怖を覚えるように演出しています。

ジョーイに見せる早撃ちはそのカッコよさはあるにしても、銃声の音量がすさまじい。

オーバーに大きく、銃の音が心臓をびくっとさせるあの怖さが感じられます。ドンパチは見せ場なはずなんですが、その音量にどうしてもひやっとするんですね。

また喧嘩のシーンが大きく2つありますが、どちらも血がすごい。あざが少しできるとかはあるにしても53年の、しかも西部劇の殴り合いにしては俳優たちの顔が血だらけ。カッコいい傷ではなく、陰惨さも感じます。

極めつけはシェーンがジョーを引き留める、あの夜の殴り合い。音楽もなく、殴る音と興奮した家畜たちの泣き声が心をざわつかせます。

正直言えば不快になるのです。乱される。しかしこれこそが身の回りで暴力が起きるときの感覚です。

シェーンは長らく暴力と銃から逃げ、捨てようとしました。しかし立ち上がる。ふと禁じられた関係すら匂わせる、夫人との関係もきっぱりと「夫婦のため、ジョーイのため。」と切り捨て、彼は決戦に赴きます。

不気味なウィルソン。シェーンも彼のような人間だったかもしれませんね。

過去は明かされないものの、シェーンは背負うものが多すぎるのです。それでは安息の地は得られない。このように広い大地でもシェーンは絶対にスターレット一家のような幸せを手に入れることはできない。

そんな風にさせてはいけないから、ジョーを止めてシェーンは肩代わりするようにライカ―と決着をつけたのでしょう。そして自分に、銃に力を感じ憧れるジョーイを諭すのです。

帰る家のないこのガンマンは、ただ流れていくしかない。銃を捨てることはできず、それでもシェーンは自分にできる精一杯をしてこの地から銃をなくします。自分を含めて。

ジョージ・スティーブンス監督は西部に生きる開拓者の人々を称えながら、銃と暴力を否定した神話的映画を作りました。

シェーンは見る人に寄り添いつつも、決してとどまることのできない、アンチヒーローのような存在。映画史に残る男です。この素晴らしい西部劇は必見ですね。

ヴィクター・ヤングのテーマ曲の優しさも素晴らしいので、曲も聞いてみてほしいです。

ちなみに、実は今作は犬の名演が観れますよ。棺桶にそっと手を置き、決闘の際は空気を察してそそくさと出ていく。わんちゃん最高。

というところで終わります。シェーン、カムバック!のあるラストシーンは今でも鑑賞のたびに目頭の熱くなるものです。それでは、また。

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