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「EO イーオー」”EO”(2022)

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EO-Jerzy-Skolimowski-2022-movie 映画レビュー
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「EO イーオー」(2022)

EO-Jerzy-Skolimowski-2022-movie

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作品概要

  • 監督:イエジー・スコリモフスキ
  • 脚本:イエジー・スコリモフスキ、エヴァ・ピャスコフスカ
  • 製作:イエジー・スコリモフスキ、エヴァ・ピャスコフスカ
  • 製作総指揮:ジェレミー・トーマス
  • 音楽:パヴェウ・ムィキェティン
  • 撮影:ミハウ・ディメク
  • 編集:アグニェシュカ・グリンスカ
  • 出演:サンドラ・ドルジマルスカ、ロレンツォ・ズルゾロ、マテウシュ・コシチュキェヴィチ、イザベル・ユペール 他

巨匠イエジー・スコリモフスキ監督が、ポーランドのサーカス団のロバが辿っていく旅と運命を、雄大かつ美しい映像で巡っていくロードムービー。

ロベール・ブレッソンの「バルタザールどこへ行く」に着想を得た作品で、おおよそあちらが原作と言っていいでしょう。

主人公はロバになっており、出てくる人間たちは登場時間は少ないですが、なかにはイザベル・ユペールなども。

カンヌのコンペで上映され、「帰れない山」と一緒に審査員賞を受賞。アカデミー賞にもポーランドの代表作品として出品されています。

スコリモフスキ監督の新作というのも気になりましたが、やはりロバを主人公にした、動物映画というのも気になったので鑑賞。

GWに公開だったのですが、いつも行く映画館は公開初日からまさかの1日1回だけの上映で都合つかず。平日の夜に都内で観てきました。

「EO イーオー」公式サイトはこちら

〜あらすじ〜

EO-Jerzy-Skolimowski-2022-movie

ポーランドのサーカスで少女とショーをするロバ、イーオー。

少女はイーオーを大切にしていたが、ある時動物愛護団体の運動により、動物をサーカスに使うことは動物虐待であるとして、イーオーは少女から引き離されてしまう。

その後イーオーは様々な人に出会いながら、欧州を巡っていく。

農場、フットボールチームや食肉業者、実家へ帰っていく牧師。

イーオーはただ静かにその瞳で目の前の人々や景色を見つめていく。

感想/レビュー

EO-Jerzy-Skolimowski-2022-movie

ブレッソンの「バルタザールどこへ行く」にほぼ近しい作品となった今作は、ロバのイーオーにくっつきながら、その物言わぬ動物の瞳に寄り添い、時にロバの視点から世界を映し出していく。

多様な人々に会いながらも、人間の傲慢さや身勝手さ、動物に対する態度や扱いを見せていきます。

ニュートラルな姿勢で観客の心を映す

総合してみれば、純朴さと対比しての人間批判と感じ取れますが、スコリモフスキ監督の事象の捉え方はあくまでニュートラルになっていました。

イーオーにはセリフはもちろんなく、シーンごとに合計6頭のロバたちが細かい所作からアクションと言っていい部分までを見事に演じています。

問題は、このイーオーの姿や瞳の中に何を見るかです。

見えてくるものは観客自身が感じることでありつまり心の写し鏡なのかもしれません。

一頭の動物にくっついたカメラで、ある種一生を追っていくドラマとしては、旅をせずに閉鎖された生の悲しさがあるアンドレア・アーノルド監督の「牛」”COW”に近いものを感じました。

あの映画を観たときと同じような、一つの魂への共感や同情を感じました。

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圧巻の映像美

ただスコリモフスキ監督の今作のもっとも素晴らしく印象的な部分は、その撮影と映像美にあります。

ミハウ・ディメクによる映像について、画面構成や色彩の美しさが挙げられます。また映像表現自体にも様々な切り替えが見えます。

時に俯瞰し時に離れ、目にクローズアップし、そしてイーオーの視点を持つ。さらに森を抜けるとき、そして空をかけるとき。

自然の中を抜けていく(おそらくドローン)撮影にもユニークな視覚体験があります。

不思議な映像の中に、豊かな思考の余地をたたえる

円環の中に赤いライトが照らされるOPのイーオー。白馬も同じく円環の中を走らされる。

囲われた中での隷属や閉鎖を感じつつも、イーオーのサーカスにいた頃とその後を見ると安全圏にいるとも見えます。

イーオーの視点になるというのも、けっして決まりきったメッセージが見えるわけでもありません。

荷台の中で外を眺めるイーオー。彼の視点では野原を自由に駆ける馬たちが見える。

そこには自由への渇望や嫉妬があるのかもしれません。あるいは馬になりたい憧れかも。

スコリモフスキ監督は観客に十分な思考の余地を与えています。

EO-Jerzy-Skolimowski-2022-movie

イーオーの夢とも思えるドローンロボットのシーンも印象的です。

これもまた赤いライトの中でのシーンであり、それはイーオー自身が魂を失っていくことや、労働力(ロボット)になっていくような恐れとも感じ取れました。

やや観客を突き放すことも

度々飛んでいくカットで、どのような経緯でそうなったのかがわかりにくいこともあります。

喉を裂かれた運転手の件も急すぎてよく掴みきれません。

ただ、彼ら自身にはあまりドラマはない。

その点では度々イーオーから完全に離れ、見えないはずの部分まで映されているのはなんとなく違和感を感じてしまいますね。

この純朴な命とその瞳から、スコリモフスキ監督は動物への愛を見せています。

饒舌な映像とその中で豊かな解釈の幅を持っているロバ。思考の余地を持たせてくれ、純粋さに触れてそれを心の中にしまっておくような素敵な作品でした。

今回の感想はここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた。

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