「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」(2014)
作品概要
- 監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ
- 脚本:クリストファー・マルクス、スティーブン・マクフィーリー
- 原作:ジャック・カービー、ジョー・サイモン
- 製作:ケヴィン・フェイグ
- 製作総指揮:ヴィクトリア・アロンソ、ルイス・デスポジート、アラン・ファイン、マイケル・グリロ、スタン・リー
- 音楽:ヘンリー・ジャックマン
- 撮影:トレント・オパロック
- 編集:ジェフリー・フォード
- 出演:クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、アンソニー・マッキー、セバスチャン・スタン、サミュエル・L・ジャクソン、ロバート・レッドフォード、コビー・スマルダース 他
いわずとしれたマーベルのヒーロー、キャプテンアメリカの新作です。
前作は「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」(2011)ですが、実質お話はクロスオーバー作品「アベンジャーズ」(2012)の続きとなっています。監督はアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟。
キャプテン・アメリカはじめ、アベンジャーズからはブラック・ウィドウ、ニック・フューリーも参加し、新ヒーローと宿敵も登場。個人的にかなり期待していた作品でした。
主演はもちろんクリス・エヴァンス。そしてサミュエル・L・ジャクソン、スカーレット・ヨハンソンも出演。
そして今作は新たなヒーローであるファルコン役として、アンソニー・マッキーが出演し、さらには大御所であるロバート・レッドフォードも出ています。
レッドフォードがヒーロー映画出演というのも個人的には楽しみにしていた要素。
マーベル・シネマティック・ユニバースのフェイズ2に入る作品となり、ユニバースはアベンジャーズを受けてからさらに拡大していきます。
~あらすじ~
ニューヨークでのロキとの戦いから2年、キャプテン・アメリカ/スティーブ・ロジャースはシールドの隊員として任務に就いていた。
ある任務で、共に潜入したブラック・ウィドウ/ロマノフが何か別の任務を受けていたことを知るロジャース。自身の知らないところである計画が始まっていたのだった。
その計画を進めていたのは上司であるニック・フューリーであったが、彼自身疑問点を持ち計画延期を図る。
しかしフューリーは謎の戦士、ウィンター・ソルジャーに襲撃され、逃れた先でロジャースに計画のデータを託す。
こうしてロジャースは誰も信用できない陰謀の中で闘うことになる。
感想レビュー/考察
超人×ポリティカルスリラー
ジョー・ジョンストンによる前作がレトロヒーロー活劇なら、今回は完全に70年代陰謀論タイプの映画になりました。
「コンドル」とか思い浮かべるような、エレベーターで敵と乗り合わせるシーンもあります。もちろんここではヒーロー映画としてエレベーター内でバトルしますけど。
全編にわたり何かおかしな雰囲気や嫌な緊張感が立ち込め、キャプテン・アメリカの存在を上手く利用した社会風刺にもなっています。
国民を監視盗聴する体制への不信感
この映画でシールドが考える平和への道、監視プログラムによる犯罪者先制システム。まさにアメリカの情報機関による他国の政府、また一般国民への監視を思い起こさせます。
実際のところエドワード・スノーデンが告発したように、アメリカ合衆国(NSA)は各政府や国民に対してまで盗聴を行っていたという、あまりに生々しい体制への不信感がこの作品の根底にもあるのです。
現代のアメリカのこのやり方に、オールドファッションであるアメリカを象徴するキャプテンが挑むというわけです。そういった意味で、最終戦にキャップが昔の衣装で挑んだのは上手いと思いますね。
個人を駒にする組織
今回はメインヴィランがレッドスカルにかわって、ウィンター・ソルジャーとなりました。
アメコミを知っていたり、予告やキャスティングの時点で正体はバレていますが、この構図も私はすごくいいものだと思います。
共にWW2を戦った友と殺し合いをさせられる。キャップが信じていた昔の戦友との絆、信頼が組織に壊されてしまう。
現代での戦いに、義理も絆も無くなってしまった。今日の友は明日の敵。共に戦ったものでも命令が下れば撃ち殺すのが現代のあり方です。
そんな状況にキャップがとる行動。映画館で観ていても感動ものでした。
今回の新たなヒーロー、ファルコン。元航空兵のウィルソンがウイングスーツを装備して活躍します。空中戦が見事でしたね。
硬派な近接アクション
今回戦闘描写はかなりミリタリーで、ここがアイアンマン、ソーとの差別化になっていますね。
キャップは強いですが人間です。斬られれば傷つき、撃たれれば死んでしまう。その設定が陰謀論的な雰囲気には合いますね。
いつ命を狙われるかわからない状況で、信念を基に戦っていくのです。戦闘そのものは、とてもカッコいい。
キャップは飛べないし雷も落とせないし、比較的地味です。しかしそれ故に人間的な動きの格闘術となれば、彼の限界を超えた力に驚きます。
動きもスゴイが力が人間離れしている。今回は足技がすさまじく破壊力抜群でした。
エレベーター内と言う狭い空間でのアクションの組み立て、そこからの落下と言う上下。ハイウェイ上での戦闘に、クライマックスにおける三角に展開したヘリキャリアとそれぞれでのミッション。
どのアクションも空間の設計をきっちりしていて、観やすくなっていたと思います。
ゲスト出演も豪華
さぁ嬉しかったのはR.R、ロバート・レッドフォードの出演です。彼自身「コンドル」(1975)、「大統領の陰謀」(1976)などに出演。
陰謀に巻き込まれ恐ろしい経験をする人を演じました。その彼が今度は策謀を巡らせる側に!雰囲気でますね。出演にはお孫さんの希望もあったとか。
組織が変わっても変わらずに個人を信じ続けるスティーブと、影響されるナターシャ
そうした戦闘描写の硬派さへの転向に加えて、ドラマ部分もすごく好きな作品です。
アメリカの政府や機関への忠誠を誓っているわけではなく、アメリカの精神に忠誠を誓っているキャップ。
彼は政敵とみなされようともその姿勢を崩さず、そして逃げません。
その姿に周囲が動かされていく点がよかった。サムは任務での戦友喪失から前線を退いています。任務のために友を失ったのです。そんな彼が再び立ち上がるのもいい。
しかし一番はナターシャでした。
彼女は暗殺者からシールドのエージェントになり、過去を清算するはずが、結局名前を変えただけでまた組織のために人を殺し、嘘をついている。
自分の置かれた状況に諦めて服従する彼女は、冗談交じりでスティーブと会話する。
しかし「今の君は信じる」といわれた時のその真っすぐさに、また何かを信じようと思い始めます。あの時の微妙な表情の変化はさすがのスカーレット・ヨハンソンでした。
MCUの傑作、間違いなく歴史に残るヒーロー映画
最終決戦には2次大戦時のコスチュームを身にまとい、古き良きアメリカ精神の体現となって戦うキャップ。ウィンター・ソルジャーと対峙しますが、やはり親友のバッキー。
キャップは盾を捨て、「最後まで一緒だ。」というあの台詞まで。思えばナチスにも雷神やロキにも果敢に立ち向かった彼が、はじめて自ら戦闘を放棄するシーンなのです。
個人的には「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」と並ぶ今年のアメコミ傑作映画です。
またひとつ、現代に問題投影をする傑作ヒーロー映画が生まれましたね。
公開時はアレに押されて目立っていませんでしたが、未見の方は是非観てくださいね。
今後は「キャプテン・アメリカ3:シビルウォー」が予定されていて、ホークアイの参加、アイアンマン/トニー・スタークの出演もあり、なによりこの映画が一大イベントであるシビルウォーのきっかけになるようです。期待が膨らみますね!
そんなわけでおしまいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
それではまた!
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