「Love, サイモン 17歳の告白」(2018)
作品解説
- 監督:グレッグ・バーランティ
- 脚本:アイザック・アプテイカー、エリザベス・バーガー
- 原作:ベッキー・アルバータリ 「サイモンVS人類平等化計画」
- 製作:マーティ・ボーウェン、ウィク・ゴッドフリー、プーヤ・シャーバジアン、アイザック・クラウスナー
- 音楽:ロブ・シモンセン
- 撮影:ジョン・ガレセリアン
- 編集:ハリー・ジャージアン
- 出演:ニック・ロビンソン、キャサリン・ラングフォード、アレクサンドラ・シップ、ホルヘ・レンドボルグ・Jr、ローガン・ミラー、ジェニファー・ガーナー、ジョシュ・デュアメル 他
ベッキー・アルバダーリによる小説を、グレッグ・バーランティ監督が映画化した作品。
主演には「キングス・オブ・サマー」(2013)や「ジュラシック・ワールド」(2015)のニック・ロビンソンが務め、ドラマ「13の理由」のキャサリン・ラングフォード、またニックの演じる主人公サイモンの両親には、ジェニファー・ガーナーとジョシュ・デュアメルが出演しています。
北米での高評価や興業的成功を受けて注目していた作品。ゲイの少年が主人公の青春映画として話題でした。
その頃から楽しみにはしていて、まあ小さいながら劇場公開するかと思っていたんですが、日本は配信だけの予定観たいです。
なので、北米版のブルーレイ買いました。安いし。
~あらすじ~
17歳のサイモンは、他のみんなと変わらない普通の高校生。
友達と車で登校し、授業を受けて、家で遊んだりパーティに行ったり。いつも冗談を飛ばす父や何かと気にかけてくる母、料理にハマっている妹に囲まれて過ごす。
ただ一つ、彼には秘密がある。
彼はゲイなのだ。
ある日サイモンは、学校のチャット部屋に書き込みを見つける。
ブルーと言うハンドルネームで、サイモンと全く同じく、普通の高校生だけど、ゲイであることを隠していると告白した投稿だった。
サイモンは偽名を使い、ブルーとチャットをするようになるにつれ惹かれていく。
そして、友達にどうにかバレないようにブルー探しを始めるのだった。
感想レビュー/考察
学園もののロマンティック・コメディでありながら、主人公がゲイの少年であるという今作ですが、その題材テーマをしっかり組み込んではいますが、根底にはちゃんと青春ロマコメがあってとても面白いです。
楽しく見れるタイプなんですよね。
確かにLGBTを扱うので難しいかもという感覚がありますが、実は今作が成し遂げている点として、そのLGBTというどうしてもまだセンシティブな要素のハードルを下げたことがあります。
それは今作がコメディだから軽いということではなく、この作品ではやけに大がかりにゲイを取り上げていないことだと思います。
ひとつ、人に言えない秘密とだだ設定して、社会的な問題にはしません。あくまでサイモン彼自身が隠したいと思っているだけです。
正直いって、ピーター・パーカーが自身がスパイダーマンであることを隠そうとするくらいなものです。
そしてそれを隠そうとすることによって、友人や大切な人を傷つけてしまう、ジレンマに陥る姿がユーモラスかつ温かく描かれています。
出てくる登場人物もみんな魅力的です。
学園ドラマとして楽しいというか。あの教頭?おもしろすぎるし、演劇部の先生も最高です。
そして、実はみんな直接言えない何かを抱えているのです。まあ性的アイデンティティーではなくとも、人に想いを寄せていることを直接言えない点ではサイモンとじつはみんな一緒なんですよね。
ただサイモンは自分自身の秘密だけは、絶対に受け入れてもらえないと思っている。
誰しも拒絶が怖い。
自分の想いを伝えて、NOと言われるのが怖くて仕方ない。
はたして自分のありのままを見せたら、世界がそれを受け入れてくれるだろうか?
かなり普遍的な部分に根幹を置くことで、共感を引き出します。
そこでサイモンは、自分を守るためにけっこうメチャクチャしてしまって、それがおかしくもありながら、切なくもあります。
サイモンは人の本音、趣味趣向を曲げる行為に出てしまうんですよね。
自分がゲイなのに、無理して女の子と付き合ったその辛さを、大事な友人に押し付けてしまったわけです。
序盤で見せた車での登校が一人になって繰り返される寂しさ。
もはやゲイだなんだは関係なくて、友情のお話になり、サイモンは逃げ怯えることを止めます。
ストレートの人もカミングアウトすれば良いというシーンには笑いましたが、サイモンのカミングアウトからのジェニファー・ガーナー演じるお母さんと、ジョシュ・デュアメル演じるお父さんの愛情には涙が溢れます。
全く動揺してないわけではないですが、理想的な抱擁でした。
LGBTはあくまで自然に、青春ドラマを描ききる今作。
しかし確実に、今作以後学園ものが変わると思うシーンが一つ、それはサイモンがブルーを観覧車で待つシーン。
果たして今まで、多くの同級生たちに見守られながら、ゲイの子が想いを寄せる相手を待つ映画があったでしょうか。
そして一番上で、ゲイの少年たちがキスをして、それを見上げる友達みんなが拍手喝さいを送る映画があったでしょうか。
少なくとも今作以後、これが当たり前になる。そしてこの作品を観て育つ若い観客たちにとって、ゲイが主役の青春映画がスタンダードになるんです。
グレッグ・バーランティ監督がもたらしたのは、誰もが共感できる世界への怖さと勇気、苦くも楽しい青春と、何よりこれからの世代のマイルストーンです。
多面的に成功している本作。
LGBT、青春、普遍的な怖さ。全部を軽快なリズムと可愛らしいユーモアで包んでいてとてもおすすめです。日本では配信だけでしょうけど、映画館で観たいなあと。
とにかく配信でもいいので観てみてください。
感想はこのくらいで。それでは、また。
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