「ザ・ウォーク」(2015)
- 監督:ロバート・ゼメキス
- 脚本:ロバート・ゼメキス、クリストファー・ブラウン
- 原作:フィリップ・プティ 「マン・オン・ワイヤー」
- 製作:トム・ロスマン、スティーヴ・スターキー、ロバート・ゼメキス、ジャック・ラプケ
- 製作総指揮:シェリラン・マーティン、ジャクリーン・ラビーン、ベン・ワイズバーン
- 音楽:アラン・シルヴェストリ
- 撮影:ダリウス・ウォリスキー
- 編集:ジェレマイア・オドリスコル
- 出演:ジョセフ・ゴードン・レヴィット、シャルロット・ルボン、ベン・キングスレー、クレマン・シボニー 他
観てきましたよ(やっとか)。ゼメキス監督の新作。
なんだかんだ言うと去年の・・・いつだっけ?もう夏終わりとかには注目してたんですよね。しかし公開があまりに遅れるもので、興味の持続が難しい。
観ずに終わるのは・・・と思い、映画館で見た方が良さそうというのもあり決心。批評家からの評判も良い本作ですが、なるほど面白い。
以前にアカデミーを取った、同じくフィリップのドキュメンタリー「マン・オン・ワイヤー」もありますが、今回はドキュメンタリーでなく普通の映画、ライブアクション。それを選んだからこその部分もしっかり感じられ、また視覚的にも納得の一本に。
さすがに公開から少し経つので、今は人は少なめでした。大きなスクリーンのうちに行けば良かった・・・
フランス人フィリップ・プティ。
子供のころにサーカス団の綱渡りを観て以来、彼はそれに魅了された。一人で幾度となく練習し、そのほかにもジャグリングや手品も覚え、青年になるころにはパリの街でストリートショーをするようになる。
あるとき新聞に目を通すと、そこにはアメリカのニューヨークで建設中の建物の記事があった。
空高くそびえ、エッフェル塔よりも高い二つの塔。ワールドトレードセンターに魅せられたフィリップは、その間にワイヤーを張り、その上を渡ってみせると決意した。
フィリップの語りで進んでいくお話。
ナレーション込みで過去を振り返る形で観ていく形式ですね。ここは実話でありかなり有名な話ですので、このスタイルでもなんら問題は無いかと。フィリップの人物造形はかなり分かりやすい形です。
フランス訛りの英語のチャーミングさもあり、狂人、ともすれば独りよがりとも思える男。楽観的で真っ直ぐ。彼と映画中ずっと、画面の中も外のナレーションも一緒に過ごすわけですが、私はそれが好きでした。あまり嫌味な感じとかがなく、突き抜けたバカな感じがしましてね。
言ってしまえば明らかすぎる、分かりやすすぎる。そこは好みが分かれそうな、各人物たち。
ですがこの映画、実話でありつつケイパーものというかチームものです。それ故に無駄な書き込みを落として、キャラがそれぞれ分かりやすいのは個人的にいい点だと思います。
バランス取りが好みです。友人たちもしっかり印象に残りますし。
さて、メインのシーンはやはりクライマックスのWTCの綱渡り。視覚効果がこれでもかと活かされたまさにハイライト、傑作の瞬間でした。
実際にジョセフ自ら、12フィート(役3.7m)の高さで綱渡りをし、CG合成をしているということで。
視覚的にここは楽しさと緊張とが素晴らしい。ドキュメンタリーでもなく、実写映画。だからこそ、フィリップと一緒に、観客はWTCの上まで上がり、フィリップと一緒に準備し、そして綱渡りをする。カメラが寄り添うのは彼ですから、彼の受ける興奮と恐怖も共に受けることになります。
映画を観ていて、ついつい体を横に、首をそらしていました。なんというか横目で画面を観るような姿勢に。とにかく息をのみ、怖かった。早く渡り切ってくれ、終わってくれと思うほど、思わず体が座席にしがみつくほど、視覚効果が強烈。
ナレーション仕立てで語る映画。あの時に、あの現場に連れていってくれた本作ですが、フィリップは最後の瞬間に、すべての要素に感謝しました。
同じように、WTCにも感謝をしています。
あの大きな本棚とバカにされていた舞台も、フィリップの綱渡りで命を吹き込まれ、人に愛されるものに。物質的な素晴らしさ以上に、そこに込められた人の想いがそれを美しくしてくれる。
私はWTCには行ったこともないのですが、それでもこの映画は私をそこへ連れていってくれました。だからこそ、ラストで美しい太陽の光を浴びながらそびえる二つの塔には、思い出ができます。今は無くなっても、人の心には永遠ですね。
時も場所も超えて、そこにあったものへ心を寄り添わせてくれる。それはフィリップと一緒にあの上へと昇ったからこそです。実写にした意味がそこにある。
体感型の中でも美しい旅をさせてくれたおススメの一本です。
そんなところでおしまいです。それでは~
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