「花嫁の父」(1950)
- 監督:ヴィンセント・ミネリ
- 脚本:フランシス・グッドリッチ、アルバート・ハケット
- 原作:エドワード・ストリーター
- 制作:パンドロ・S・バーマン
- 音楽:アドルフ・ドイチュ
- 撮影:ジョン・アルトン
- 編集:フェリス・ウェブスター
- 美術:セドリック・ギボンズ、レオニード・ヴァシアン
- 衣装:へレン・ローズ、ウォルター・プランケット
- 録音:ダグラス・シアラー
- 出演:スペンサー・トレイシー、ジョーン・ベネット、エリザベス・テイラー 他
「若草の頃」(1944)や「巴里のアメリカ人」(1951)のヴィンセント・ミネリ監督作品で、スペンサー・トレイシーのお父さんにエリザベス・テイラーの娘という豪華な家族の物語。
といってもタイトル通り内容は普通の家族のお話です。
アカデミー賞に3部門ノミネートしていて、主演のスペンサー・トレイシーの親父っぷりが私はとても好き作品です。
スティーヴ・マーティン主演でリメイクなんかもされたりしていますね。そっちは未見ですが。
結婚式の後、疲れ果てた父スタンリーは座り込み話し始める。娘の結婚というものが何なのか、娘を送る父というのがどういうものか。
話は3か月前に遡る。スタンリーはよき妻と3人の子供と暮らしていた。何気ない日常、家に帰れば家族がいる。そう、娘のケイだって「お帰り」と迎えてくれたのだ。そんな中では予想もしなかった。
スタンリーは疲れた様子で、その愛娘ケイが結婚していくまでを話していく。
スペンサー・トレイシーだ。お父さん感が半端ない。素晴らしいですね。彼にはちょっとしたお茶目な部分や子供っぽさも感じられて、非常に多面的で深みある父親となっています。
終始美しいエリザベス・テイラーに振り回されるんですが、肝心なところでは父親っぽく。と思えば拗ねたり凹んだり。観ていて飽きません。長いこと着ていなかった礼服を、なんとか着ようと頑張る子供っぽさといったらかわいいものですw
娘との関係性に関しても、母を間に挟んだり一緒に画面に映らなかったりと。娘をすごく考えているのに、物理的な距離が離れていきます。
タイトル通り一応はスタンリーに焦点があるんですが、妻のほうにも目を向けていまして、スタンリーがさんざん不安と心配で寝れないというから付き合ってみれば、さんざん話して寝てしまう。
妻は逆にそのせいで寝れなくなったり。夫婦というか一組の男女である暖かな笑いなんかもありまして。結婚準備で盛り上がる妻に、経済面でぶつくさ言う夫。
娘の結婚から自分たちの結婚、そして愛情も再確認するような部分もあります。
久しぶりの友人たちやら、緊張し親としての責任もある場面が多い中で、お互いに頼ったり信頼したりが見えてくるのも良いところでした。
地面がブヨンブヨンして恥ずかしいかっこうになるあの悪夢。
父の不安は、娘を失うことと共に、その送り出す瞬間に父親としてしっかりと役目を果たせるかにあります。スタンリーは自分が大事な役割であることにも緊張しっぱなし。
何とか式を挙げて、ここからがこの映画で私が一番好きなところ。それは娘との別れです。
「もう娘とは会えない。家に帰ってもケイが迎えてはくれないのだ。」
感動の手紙とかスピーチとか、涙溢れるお別れシーンなど無いのです。式からはスタンリーがケイに話すどころか一緒にいるシーンもありません。
騒がしい中で気づけば娘は行ってしまう。このあっさりと、どこか突き放すような別れ方が非常に巧いと思います。盛り上げず感情的にもしないところが、余計に喪失や恋しさを増していてリアルです。
電話で「さよなら」と言って終わるだけ。
それだけでもすべての感謝や愛が伝わるのが親子ってものでしょう。いちいち言わなくていい、涙を流して見せなくていい。お父さんも娘もわかっているんですね。
暖かな家族のあわただしい結婚劇。きらびやかなエリザベスに、かわいいスペンサー。あれこれいって最後はシンプルかつ真っ直ぐに愛を確かめるおススメの作品です。
というところでレビューおしまいです。それではまた次で。
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