「ビニー/信じる男」(2016)

  • 監督:ベン・ヤンガー
  • 脚本:ベン・ヤンガー
  • 原案:ベン・ヤンガー、ピッパ・ビアンコ、アンジェロ・ピッツォ
  • 製作:ブルース・コーエン、エマ・ティリンガー・コスコフ、チャド・A・ヴェルディ、ノア・クラフト、ベン・ヤンガー
  • 製作総指揮:マーティン・スコセッシ、ジョシュア・サソン、ミシェル・ヴェルディ、マイルズ・ネステル、リサ・ウィルソン
  • 音楽:ジュリア・ホルター
  • 撮影:ラーキン・サイプル
  • 編集:モリー・スチュアート=ポインター
  • 出演:マイルズ・テラー、アーロン・エッカート、キーラ・ハインズ、テッド・レヴィン 他

ベン・ヤンガー監督による、伝説のボクサー、ビニー・パジェンサの伝記映画。彼は世界タイトルを獲得した後、首の骨折をする大事故にあいましたが、奇跡の復活をし再びリングにたった男です。

そのビニーを演じるのは、「セッション」(2014)のマイルズ・テラー。彼のコーチ役には「ハドソン川の奇跡」(2016)のアーロン・エッカート。

作品自体が去年秋ごろかに、海外紙の批評面で高い評価をきいたので知っていましたが、公開はけっこう遅れましたね。

公開2週目に観たので、人の入りは落ち着いていたように思えます。

プロボクサーのビニー・パジェンサは、世界王者のタイトルをとろうと躍起になっていたのだが、引き際を知らない無鉄砲さを突かれ、タイトルマッチに敗れる。

プロモーターも愛想を尽かし、ビニーは孤立するが、新しいコーチにケビン・ルーニーを迎えたことで状況が変わる。彼の力を引き出すベストな階級を見極めたケビンと共に、ついにビニーは世界王者の座を手に入れるのだった。

しかし、頂点に立ったその時、全てを変えてしまう出来事がビニーに降りかかる。

伝記映画ともなれば、話で驚かすことはできないわけでして、その見せ方にかける部分が大きいと思います。その点、少しスコセッシ的なものはあれど、今作は語り口としては普通に思えました。

ビニーの人生の一部として、彼の物語として観ると、斬新だとかは感じません。

私としてはそこよりも、ボクシング業界の描写が好きでした。

ビジネスなんですよね、徹底して。ビニーのドラマが個人的になり、熱くなればなるほどに、「そんなこと知らん」とばかりに冷静なビジネスマンのプロモーターたちが効いてきていました。

運営上リターンが少なければ、経費がかかりすぎるのであれば切る。で、リターンが大きそうなチャンスにはしっかり現れる。観客がビニーの復活劇に燃えるとき、ここぞと出てくるビジネスマンには皮肉なテイストすら感じます。

結局この感動的な一人の男のドラマすら、彼らにとっては商材なんですよ。

このシニカルさが実はけっこう好きなところでした。世界をビニーにぶつけるとして、最後まで世界はシステマティックなのですから、逆を言えばそのシステムを利用して、復活のチャンスを得る。そういう意味では両者勝っているのです。

さてと、語りには感心しませんでしたが、演技は必見レベルです。

マイルズ・テラーのおかげで、普通のストーリーテリングにも一つ芯が通っています。

最後にビニー・パジェンサ本人の映像が流れますが、マイルズ・テラーとルックは全然違うんですよね。それでもマイルズはビニーの持っていた突き抜けた頑固さをしっかり出していました。主演が固く、地盤として映画を支え、まさにリードらしく引っ張ってくれています。

加えてアーロン・エッカートの名演。

これは父役を演じたキーラ・ハインズもそうですが、この二人が脇としてホントに良かったと感じます。

マイルズ・テラーとアーロン・エッカートのいるシーンでの、あのいちゃつき具合が良いものです。トレーニングを初めて、2人の秘密として共有している時は、演技にもアンサンブルがあったと思います。実はそこが残念なところでもありまして、そういったアンサンブルが少なかったのがもったいないのです。それぞれ良い演技はしているものの、絶妙な表情を見せるのは単独でのオンスクリーン。

父親を演じたキーラ・ハインズも、最後にはボクサーとしてでなく息子としてビニーを見ているわけで、セコンドを外れて客席から息子を見る姿はこっちもみていていたたまれないものでした。

しかし父と子の何かというシーンもなく、やはりそれぞれがそれぞれの場面で良い演技をしているところ止まりです。それぞれが良いだけにやはり残念なところでした。

飛びぬけてはいなくとも、偉大な男の信念の話をそぐことはなく伝える映画で、そこには素敵なリードの力と、まさにセコンドとして素晴らしい演技があるものの、決して何かスポーツ映画史に残るシナジーを生んではいませんでした。

アーロン・エッカートは特に良いのですけどね。なんかもったいないような。

そんなところで感想は終わりです。それでは、また~

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