「ヤング≒アダルト」(2011)
- 監督:ジェイソン・ライトマン
- 脚本:ディアブロ・コーディ
- 製作:ディアブロ・コーディ、リアンヌ・ハルフォン、メイソン・ノヴィック、ジェイソン・ライトマン、ラッセル・スミス、シャーリーズ・セロン
- 製作総指揮:ヘレン・エスタブルック、ネイサン・カヘイン、ジョン・マルコヴィッチ、スティーヴ・M・レイルズ
- 撮影:エリック・スティールバーグ
- 編集:デイナ・E・グローバーマン
- 出演:シャーリーズ・セロン、パットン・オズワルド、パトリック・ウィルソン、エリザベス・リーサー、コレット・ウォルフ 他
「JUNO/ジュノ」のジェイソン・ライトマンが同作の脚本家ディアブロ・コーディと再びタッグを組んで監督した作品。
ヤングアダルト小説の作家として都会で働くも人生の見えてこない女性が、高校時代の元カレともう一度よりを戻そうと地元へ戻っていく話。
主演は「タリーと私の秘密の時間」でもライトマン監督と組んだシャーリーズ・セロン。
その他「アクアマン」などのパトリック・ウィルソン、「レミーのおいしいレストラン」のパットン・オズワルドが出演しています。
批評家から良好な支持を得ていて、とくにシャーリーズ・セロンとパットン・オズワルドの演技は好評。
セロンはゴールデングローブにノミネートしています。
今回アマプラで配信されていたので鑑賞してみました。
かつて高校時代は学校の人気者で花形学生だったメイビス。
いまは地元を離れミネアポリスでヤングアダルト小説の執筆をする彼女も、37歳を迎えて自分のステータスに危機感を覚え始めた。
そんな彼女のもとに、元ボーイフレンドで地元に残っているバディから、赤ちゃんの誕生パーティの招待メールが届く。
今更元恋人からメールが来たことに戸惑いながらも、なんと彼女はバディとよりを戻せるかもと期待を胸に、誕生パーティに出席するために地元へと帰るのだった。
「JUNO/ジュノ」監督、脚本コンビによるドラメディ。
ディアブロ・コーディの脚本に関して、おもしろい仕掛けになっているなと思います。
すでに年齢的には大人になったメイビスの台詞の部分。
映画でも、実際に喋っているティーンからヒントを得て小説に台詞を落とし込んでいるわけです。
それが同時に、彼女は未だにそのティーンレベルの会話が実生活における振る舞いと言葉のチョイスのベースになっていることへ繋がります。
未熟さや笑ってしまう恥ずかしさも、この造形がかなり貢献していると感じるののす。
もちろんそれはシャーリーズ・セロンの演技力をもってしてはじめてメイビスになると思います。
観ていて痛々しい彼女の振る舞いや空回りする努力?にどこか、華やかさを持たせるのも流石です。
ただ同時に完全に面影がないわけではなく、やはりかつては高校のクイーンであった感触があるんです。
そして同情を引き出してしまうのも巧い。
やってることや言動的には完全に嫌な女ですが、嫌悪感をもってしまうというよりも、「そうじゃない」と心配して見てしまいます。
ただ、セロンのメイビスだけがセンターであったら、ある程度おもしろい、こじらせた女性のドラメディで終わっていたと思います。
そこで観ている人に近しい?、いや人間として繋がっていけるのは、パットン・オズワルドが演じたマットの存在です。
彼は持たざる者であり、そして世界の真理を痛いほどに理解した人間です。それでいて彼はその傷ゆえなのか、どこまでもメイビスを抱擁することのできる人間なのです。
町の人間はみな馬鹿で先を見ないで生きていると妹が言いますが、マットは先を失ったと思ったからこそ、先を意識し様々な人生について考えたのかと思います。
その周囲と異なる頭の良さが彼に深みを与えているのかもしれません。
メイビスは自ら破壊的な方へ進むように見え、それにたいしてマットは外的要因から人生を破壊されてしまったわけです。
立場のことなる、自分を不幸と思う人間が寄り添っていくのは、不幸な人間ドラマをみて癒しを得る映画と観客の関係にも見えてきました。
ただディアブロ・コーディの脚本が暮れているのは、メイビスに比べるとなんとも大人でビターなエンディングです。
人によっては、結局高飛車で侮蔑的な女性が特に成長せずに帰って行っただけに思えますでしょうし、何か”結末”が用意されていないことに肩透かしを食らうかもしれません。
ただ私としてはこの話全体を通して、ままならない人生とそれを許容、受け入れて生きていくことを、むき出しに描いてくれている点に感謝しています。
ありきたりなドラメディの呪いから解き放たれるような解放と爽快さにあふれていてとても好きです。
そもそもこの話、ディアブロ・コーディが実際にコラムか何かで読んだ実話がもとらしいのです。
そこでは実際に地元に戻った女性は高校時代の元カレと見事復縁してのハッピーエンドだったそうですが、彼女は”そうでなかったら?”と苦い展開を切り出したとのこと。
単純明快に”幸せ”を得るのではなく、自分が自分の生き方やありかたを受け入れることこそ生きていく上では幸せなのかも?とほんのり健やかな空気にしてくれる作品でした。
笑えるところも多く、セロンもパットンも本当に見事な演技で楽しめます。けっこうおススメの作品でした。
今回の感想はこのくらいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
それではまた次の記事で。
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