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「パラダイスの夕暮れ」”Shadows in Paradise” aka “Varjoja paratiisissa”(1986)

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「パラダイスの夕暮れ」(1986)

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作品解説

  • 監督:アキ・カウリスマキ
  • 製作:ミカ・カウリスマキ
  • 脚本:アキ・カウリスマキ
  • 撮影:ティモ・サルミネン
  • 出演:マッティ・ペロンパー、カティ・オウティネン 他

アキ・カウリスマキ監督の初期の傑作であり、「真夜中の虹」「マッチ工場の少女」と共に「労働者三部作」として知られる作品。これらの作品は世界中で高い評価を受けました。

主演は「マッチ工場の少女」でも出演しているカティ・オウティネン、またマッティ・ペロンパーと、カウリスマキ監督映画の常連二人が努めます。

「パターソン」などのジム・ジャームッシュ監督がこの作品発表時、最も美しい映画と評したことも有名です。カウリスマキ監督作品の中でも必見の作品として良く上げられるので、配信で見つけて鑑賞して観ました。

~あらすじ~

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仲間の死によって独立の道を断たれた、ゴミ収集車の運転手ニカンデル。彼はスーパーのレジ係イロナに恋をしており、彼女をデートに誘いましたが、ビンゴ会場に連れて行ってしまい、大失敗してしまう。

ところが、仕事をクビになったイロナがある事情を抱えながら彼のもとに転がり込んでくる。2人の関係は順調に進んでいくかのように見えたが・・・。

感想レビュー/考察

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アキ・カウリスマキ監督の目線。それは淡々とはしているのですが同情と共感に満ちています。

見つめている相手をどうにかしようというのは感じられず、美しく描こうともしない。美しくはないから。かっこよくも描かれない。かっこよくないから。

ただこの作品にはそういった変な手を入れる行為がないからこそ、もっと純粋な喜びとか救いが感じられました。

社会の隅っこに確実に生きている人々に、強いスポットライトではなくて優しい明かりを灯してみせるカウリスマキ監督。

この作品は監督の作品の中でも最もエンディングにおけるカタルシスや多幸感が強い作品でした。あとは私としては「浮き雲」も素晴らしいと思いますね。

ストーリーとしてはごみ収集人で質素に暮らす地味な男が、出会って惚れた女にできる限りのことをしつつ、女は新しい職場の金持ち上司になびき、それでも結局は男のところに来てしまう。

2人が互いに落ち着ける相手として意識しているのに、すれ違いが重なってなかなかうまく行かないもの。

別にドタバタとはしていないですが、すれ違いコメディ、すれ違いロマンスとしての楽しさとおかしさはあります。

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ここでカウリスマキ監督のいつものテイストである演出の抑制、演技の落ち着きがまた効いています。主人公を演じたマッティ・ペロンパーはなんだかぬぅーっとしていて無表情だし感情的ではない。

でも彼自身がイロナのことが好きなのは伝わりますし、誘ったのに来なかったときの寂しさといら立ちとか、イロナの前で強がるところとか、過剰にならない程度でこちらがくみ取れる演技を見せています。

イロナを演じているカティ・オウティネンも同じく、行動で感情を示していてリアクションは薄い。

このぎこちなくて静かででもちょっと感情的にめんどくさい人間臭くてたまらない関係性が素晴らしい。

そして最終的には思い切ってプロポーズするニカンデル。ここでの「食事はイモになる。」というセリフがまたいい。着飾らないし変なハッピームードもない静かで起伏のないプロポーズ。

うだつの上がらない社会の端っこの人間の人生の岐路。ここであの酒飲みのフィリッパが友としていろいろと協力してくれるのがまた素敵。カウリスマキ監督の映画には、真の友人が出てくると思います。

それは何か大きな窮地やここぞというときに助けてくれる人。

最後の船での門出。視点が見送る側なのがおもしろい。フィンランドから眺めている。幸せな二人という構図だったりではないんですよね。どことない哀愁もこのせいかも。

この作品の制作時、監督は29歳。29歳でセックスにもよらないロマンス映画を渋いテイストで撮ってしまうとは驚きです。

労働者のロマンスを、着飾らないでありのまま描き出したとても美しい作品でした。おすすめ。

今回の感想はここまで。ではまた。

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