「エヴォリューション」(2015)

  • 監督:ルシール・アザリロビック
  • 脚本:ルシール・アザリロビック、アランテ・カバイテ
  • 製作:シルビー・ダントン、ブノワ・ケノン、ジェローム・ビダル
  • 音楽:ザカリアス・M・デ・ラ・リバ、ヘスス・ディアス
  • 撮影:マニュ・ダコッセ
  • 編集:ナシーム・ゴルジ・テヘラン
  • 美術:ライラ・コレット
  • 出演:マックス・ブラバン、ロクサーヌ・デュラン、ジュリー=マリー・パルマンティエ 他

「エコール」(2004)やその他脚本家としても活躍している、フランス人監督ルシール・アザリロビック。彼女の最新作が今作ですね。

私は監督の前作は観たこともなく、今作は彼女の手がけたショートフィルムの併映版もあったのですが、私は見られませんでした。

主演の少年には今作がデビューのマックス・ブラバン。

また「エール」(2014)に出演のロクサーヌ・デュランが主人公と交流する看護士役で出ています。

規模が小さい公開でしたが、そこそこ人は入っていました。万人におすすめどころか、映画をそこそこ観てても人を選ぶタイプだと思います。しかし、個人的には自分を浸すことのできる作品でした。

少年と女性しか住んでいない、周りを海に囲まれた小さな島。

そこに暮らす少年ニコラは、ある日海を泳いでいると、岩場に少年の死体が横たわっているのを目撃する。腹には真っ赤なヒトデがくっついているその光景は、幻想なのか現実なのかも分からなかった。

ニコラはそのことを母には黙って過ごした。そしてニコラをはじめ島の少年たちにあることが起きたころ、彼らはそろって島の病院へと連れて行かれる。

オープニングショットからこの映画は自分を確立して見せます。

ワイドスクリーンで映し出される、海の中からその上を眺めるロングショット。あの海中の色合い、音。なんて神秘的かつどこか畏敬の念すら覚えるような、そして全編にわたる不気味さすらここで始まっている感覚も持っています。

何かが外の世界をうらめしそうに水中から観ているのか、そして少年はそんなものの前に迷い来た哀れな存在のようにも思えました。

今作に深く根ざす、生。生き物の生まれた場所である海。原始。

しかし映画はさっそくそこに死を横たえます。

いやはや不気味、しかし美しい。神話のような印象を常に持ちました。神々の島、おとぎ話の島。残酷でいて荘厳なものなのです。

少年と女性のみが住む、世界から、すくなくとも私たちの住むこの世界からは隔絶された舞台。

映画はこの島の中でのみ展開し、不思議な文化なのか宗教なのかわからない、しかしそれ以外に何もない中で観客を魅せていく。

主人公ら少年は生き生きと、それは色に表れているようにも思えますね。肌の色、唇、髪。ニコラの履いている真っ赤な短パンも印象的になっていますね。

赤というのは血を思わせ、それは生きていることでありまたどこか残酷な色です。ヒトデの色とニコラの色、なにか印のような赤の使われ方です。さながら生贄の印や、選択の証のようですね。

しかしキャストとしても世界観の統一には徹底するものが見えます。

母親たち、そして看護士たちはみな色白でそして眉の色なども薄く、生命力に架ける印象を持たせます。

コンピュータとか、照明だったり、ある程度は現実の匂いを残しているのに、なぜこうも異世界へ浸っているような感覚になるのか。

夜の闇に浮かぶ数々の光、浜辺での儀式。美しさと不気味さが同時に画面に映っていたところですね。病院の壁の緑の色合い、そしてなぜか常に濡れているような質感。

ここにも水、海をなんとなく感じるものです。OP以来、水の中というのはどことなく怖い印象が植えつけられていますし、かなり不快な、しかしビジュアルの引きつける力に目をそらさずにはいられない強さがあります。

個人的にはとにかくこの島の異様でいながら人を魅了する雰囲気、空気、ルックを楽しむことができましたね。

非常に気味の悪い触手や吸盤、胎児などありつつも、この映画キモいかと言われれば、美しいとも答えてしまうでしょう。

何らかの生産プロセスに巻き込まれ、少年は体に何かを宿す。

独身ではなく、母という役割を持っているとされる女性たちは、この少年たちにその役割を担わせているのか。

ともすれば、今作は女性が当たり前のように背負う命を生むものとしての役目を、男性に追わせるという実験かもしれません。

ひとつの体にふたつの個体。母たちの浜辺での儀礼は、さながら個体が群れてひとつになり動くようですし、少年にはその個とは別の個が埋め込まれる。

嫌悪感ある融合ですが、あのニコラの色と同じく赤を持つ看護士との交流では最終的に素敵な融合があったように感じます。

口をつけ深く泳ぐふたりは、それこそ空気を共有してひとつとして生きる姿にも思えました。

最後に映る大きな工場。現実世界に戻ったような、それでいてまた壮大な生産プロセスに放り込まれたような感覚。

圧倒的なおぞましさと美しさの調和。地獄ではなく異界。語りは少なくも、おとぎ話のようですね。

ルシール監督の持つビジョン、正直このバランスは奇跡ではないかという本当に見事な世界構築に感服です。

今思うと、年間ベストに入れたかったなぁ・・・もうランキングとかじゃなくて好きな映画の羅列にするかw

というわけで、キモ美しい非常にビジュアルの印象深い映画でした。

それでは、また。

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