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「ガールフッド」”Girlhood” aka “Bande de filles”(2014)

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Girlhood-Bande de filles-movie-2014 映画レビュー
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「ガールフッド」(2014)

  • 監督:セリーヌ・シアマ
  • 脚本:セリーヌ・シアマ
  • 製作:ベネディクト・クーヴルール
  • 音楽:ジャン=バティスト・デ・ラウビエ
  • 撮影:クリステル・フルニエ
  • 編集:ジュリアン・ラシュレー
  • 出演:カリジャ・トゥーレ、リンゼイ・カラモウ、マリエトゥ・トゥーレ、アッシャ・シーラ、イドリッサ・ディアバテ 他

Girlhood-Bande de filles-movie-2014

「水の中のつぼみ」「燃ゆる女の肖像」などのセリーヌ・シアマ監督が、2014年に撮った少女の成長期を描くドラマ。

パリ郊外の貧困地区で育つ少女が、不良グループに仲間入りし、様々な経験をしながら成長していきます。

主演を務めたカリジャ・トゥーレなど主軸となるキャストは街中でスカウトされたとのことで、彼らの演技も含めて非常に高く評価されています。

こういったアプローチはアンドレア・アーノルド監督の「フィッシュタンク」などでも成功していたり、監督によってはすさまじく効果的に使われていますね。

この作品の存在は当時にセンセーションを起こしていたので知っていたのですが、待ってればそのうち日本公開すると思っていてスルー。

結局日本での一般公開はしなかったようで、そのままなんだかんだで数年間放置してしまいました。

「燃ゆる女の肖像」を観るのと一緒に海外版ソフトを購入して初めて鑑賞しました。

Girlhood-Bande de filles-movie-2014

パリ郊外の地区に住む少女マリエメは、高校進学を希望するも教育プログラムがなく、就職をすすめられる。

家では虐待的な兄に苦しみ、妹たちの面倒を見る毎日に、彼女は嫌気がさしていた。

そんなあるとき、3人組の女子グループに出会い、彼女たちと一緒にパリへ出かけることになる。

不良グループではあるが、自由に楽しく今を過ごす彼女たちと親交を深め、マリエメはすっかり仲間入りをしていくのだった。

Girlhood-Bande de filles-movie-2014

正直に言えば、観たことのない、感じたことのある作品です。

セリーヌ・シアマ監督はフランスの郊外、治安の良くない地区で育つアフリカ系の女の子を題材にしています。

しかもギャング(不良グループ)に入っていく。

それ自体はあまり観たことがありません。

フランスのパリではなく、白人でもなく。しかし確かに存在するアフリカ系のフランス人。

マリエメの青春はあるのに映画に登場してこなかった物語。

だからそれを語ることそれ自体に意味があるように思えます。

ただ、それが社会性を押し出したものには決してなっていなくて、マリエメを利用して主張する搾取的な構造ではないんです。

もちろん格差や差別が強く存在します。

この物語のキックオフは、マリエメに対する不当なシステム、教育を奪うことから始まっています。

彼女は後に分かっていくように間違いなく賢い少女ですが、環境は彼女を差別していますから。

Girlhood-Bande de filles-movie-2014

それでも、この映画は青春映画です。

全てマリエメ視点で、近い距離から一緒に楽しさや辛さを分かち合っていく。

シアマ監督は最後までマリエメ含めて少女たちをカテゴライズしなくて、彼女たちのアイデンティティの模索を真っ直ぐ描いています。

ショッピングモールにたむろい、ダイナーで駄弁って、たまに他の女子グループと小競り合う。

途中のケンカとか、もちろん褒められることではない行為もありますが、とにかく仲間内での楽しさとか、絆とか、すごく共感できるはずです。

これまた良くない方法で集めたお金で、酒を買ってホテルの部屋をとるマリエメたち。

リアーナの”Diamonds”にのせてはしゃぐ彼女たちの姿はホントに美しいシーンです。

退避するように、親しい妹たちとの空間や空気を破壊する兄に対する恐怖も伝わります。ある人物が家にいるだけで、抑制され気を使い、音を立てることもビクつく感じ。

接点のない遠い存在を画面に観ているだけなのに、一体化するような。映画の魔法がここにあります。

Girlhood-Bande de filles-movie-2014

作品は全編通してマリエメのアイデンティティの模索。

エレクトリックな音楽が挟まれ暗転から再展開をする仕組みで、大きく4つにわかれます。

そこでブレイズからストレートに髪を変え、服装もレディたちのようにスキニーパンツにデニムやブラックレザーが入る変身を。

さらにブロンドのウィグやドレスで、地元のギャングの元で働くように。

そして最後は、彼女自身が現れます。

それまではどこかに所属していたマリエメが最後には完全に自立するショット。

自分の居場所を探し、人との距離とか依存からの脱却とか、いろいろ経て自分を見出していくのは、どこか自分を見ているように思えます。

多くの映画や、フランスが描かれるところで登場しない、メインにならない。カテゴリだけが残り背景も過去も未来も描かれない存在。

そこに光を当てて、でも取材対象のようにはせずに、観ているこちらにつなげてくれる。

ラスト、この先の彼女も観たいと思っている時点で、だいぶ引き込まれてます。

シアマ監督の優しい視点、そして今作で輝く、街中でスカウトされた俳優たち。赤裸々であり現実で、すごく素直で。

とにかく素晴らしい映画でした。この作品の存在そのものが、多くの光を当てられてこなかった人たちに勇気を与えますし、見えない世界をみせてくれますし。

総じて放置していた自分がバカだと思いましたね。そのくらいもっとリアルタイムに観たかった。(ずっと観ないままでなくて本当に良かったけれど。)

どこかで機会があれば絶対におすすめ。興味があれば海外版ソフトは普通に買えますので是非。

今回の感想は以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた。

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