「未来よ こんにちは」(2016)

  • 監督:ミア・ハンセン=ラヴ
  • 脚本:ミア・ハンセン=ラヴ、サラ・ル・ピカール、ソラル・フォルト
  • 製作:シャルル・ジリベール
  • 撮影:ドニ・ルノワール
  • 編集:マリオン・モニエ
  • 衣装:ラシェール・ラウー
  • 美術:アンナ・ファルゲール
  • 出演:イザベル・ユペール、アンドレ・コルマン、ロマン・コリンカ、エディット・スコブ 他

 「EDEN/エデン」(2014)などのミア・ハンセン=ラヴ監督による新作。主演にはポール・バーホーベン監督の「エル」でゴールデン・グローブ主演女優賞を獲りました、フランスを代表する女優、イザベル・ユペール。今作はベルリン映画祭で銀熊賞を獲っていますね。

先週日曜に行ってはいましたけども、小さいスクリーンというのもあり満席に近い感じでした。かなり人が入っていて、年齢層は高めなものの、若い女性もチラホラいて、どうやらユペールのオシャレさが魅力のようです。憧れの存在なのかな?

哲学の教師をしているナタリー。同じく教師の夫と、2人の子供と暮らし、認知症気味の母の面倒もあり騒がしくも、充実した日々を送っていた。

しかし、ある時夫が浮気を告白する。離婚することになり、子供たちは独り立ちし、そして母も他界した。ここにきてナタリーは自由と孤独に直面するのだった。

手短に言えば、このような素敵な作品を観れて大変幸せです。

イザベル・ユペールがとにかく適度な距離感で、観客の共感を得つつも必要以上にナタリーに同化させることなく、一人の女性の人生とその変遷を信じさせてくれています。大げさにドラマ化していなくて、それがまた説得力を持っているのだと感じます。

で、今作で非常に巧くて感心し続けていたのは、その撮影にありました。

撮影そのものがこの映画の主題部分を表していると言いますか。この作品ってカメラがとくかく動き回るんですよね。ある程度の長回しもありますし、またユペール自身がかなり移動するというのもあり、追いかけるカメラがパンというか、動いています。

ナタリーは電話をしていてもぬかるんだ砂浜を歩き、母のために行ったり来たり、家でも動き回りそして座っているかと思えば、バスに乗っていてこれまた移動している。

常に移りゆく世界そのものを撮影の仕方を通してずっと伝えていきます。

ナタリーは哲学者として、若い世代に哲学と思想、教育を与えていきます。

この映画には母、ナタリー、子供たちなどいろいろな世代が出てきます。彼らそれぞれがそれぞれの深さで哲学と思想を持っていて、その衝突も描かれています。そしてさらに、世界と同じように、個人というのも移りゆくのですね。

昔とは違う思想を持つようになった夫、さらに考えを発展していた教え子、ナタリー自身も。

それは個人の中だけでなく、やはり人間の関係という者も同じことですね。なんだかんだでずっと連れ添うのだろうと思っていた夫との関係も、子供たちとの関係も。母はいつまでもいるわけではないし、子供だっていつかは独立、より切り離された個人になるものです。

そのままであるものは無い。

自分も自分と他の人との関係も、そして世界も常に流動的。

その大きな流れを受け入れて、新しい世代、明日を見つめていくところに、真の自由を見た気がします。ナタリーの物語でありつつ、これを極限まで個人的な話にはしていないため、性別も世代も何もかも違う私でさえ自分の物語とできる。フィクショナルに生み出された人格とこうして気持ちよく繋がれるって本当に素晴らしいものです。

ミア・ハンセン=ラヴ新作。ユペールのリードの絶妙さが光るものです。

映画館から出て、少し世界が明るく見えた作品でした。そんな感じで感想はおしまい。それでは、また。

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