「Swallow/スワロウ」(2019)

  • 監督:カーロ・ミラベラ=デイビス
  • 脚本:カーロ・ミラベラ=デイビス
  • 製作:モリー・アッシャー、キャロル・バラトン、フレデリック・フィオール、ミネット・ルーイー
  • 製作総指揮:ヘイリー・ベネット、サム・ビスビー、コンスタンティン・ブリースト、ヨハン・コンテ、ジョー・ライト、ピエール・マザール、エリック・タヴィティアン
  • 音楽:ネイサン・ハルパーン
  • 撮影:ケイトリン・アリスメンディ
  • 編集:ジョー・マーフィ
  • 出演:ヘイリー・ベネット、オースティン・ストウェル、エリザベス・マーヴェル、ローレン・ヴェレス 他

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カーロ・ミラベラ=デイビス監督のデビュー作にして、異食症となり異物を飲み込むことがやめられない女性を描くスリラードラマ。

主人公は「マグニフィセント・セブン」「イコライザー」などのヘイリー・ベネットが演じ、彼女の夫役には「ブリッジ・オブ・スパイ」でパイロット役立ったオースティン・ストウェルが出ています。

また監督は脚本も兼ねていますね。そしてエイリー・ベネットは製作にも関わっています。

カーロ・ミラベラ=デイビス監督の初監督作品ながら、批評面で好評を得ている作品で、私としてはそのことと同時にそもそも異食症をメインに据えたスリラードラマというアプローチが新鮮に感じたので楽しみにしていた作品です。

2021年のまさにスタートを切る形で公開されました。2日に行ったのですが結構人が入っていて、割と若い層(学生とか)も多い印象でしたね。

一応R15指定になっている作品です。まあボディホラー的な要素がややあります。

ちなみに、タイトルのSwallowは”飲み込む”という意味です。

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ハンターは若く美しい妻で、裕福な夫のもと暮らしている。

もともと富裕層出身ではないハンターは、夫であるリッチーに抱え込まれるように生きていることに息苦しさを覚えており、常に夫のために尽くし喜ばせることに必死になっていた。

夫の昇進パーティ、夫の両親との食事。ただ一人家で家事をして過ごす毎日。

そんな日々の中でハンターはある時、手元にあったビー玉を食べたいという強い衝動に駆られ、勢いにまかせて飲み込んでしまった。

その時、ハンターは自分が感じたことの無い満足感と多幸感に包まれ、それ以降隠れて色々なものを飲み込んでいった。

しかし、ハンターの妊娠が明らかになったことから、さらに周囲からの期待と圧力を感じ始めてしまう。

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異食症をテーマに描くのは家庭内の抑圧であり、さらに突き詰めて言うと女性の家庭での苦しさであることから、これは女性映画であると思いました。

確かにアプローチとして異物を飲み込むことが描かれていき、そのボディホラー的な、痛さとグロさどこかエロチックな危うさ(ヘイリー・ベネットによるものかも?)などは斬新な視覚的挑戦であります。

ただその痛みというのは、入れるときも出るときも、そしてそうした行為を隠すことも、すべてはハンターが家庭の中で追い込まれていくことの、その精神状態の置換です。

そもそも画作りの点ですごくよくハンターの状況をみせていくなと感じました。

OPで豪華な家の屋上かバルコニーにいるのですが、画面の右8割くらいがガラスの壁、彼女のいる空間は凄く狭まっています。それに、そもそも外の景色を眺めることしかできず、彼女は透明な壁に阻まれているのです。

外出することはおろか窓を開ける描写すらなく、一見綺麗でクリアに見えながらも、実はすごい閉塞感を感じるわけです。

その中で色彩感覚を持ってどんどんとハンターは変貌していきます。レッド、ブルー、イエローやグリーン。様々な色彩感覚は美しくありますが、特にレッドは画面のカラーを変えていく力を持っていたり、血のカラーでもあります。

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ハンターは話を聞かれず、さえぎられ、そして物のような扱いとなっています。

彼女個人のことなど一切出てきません。

彼女は常に息子の妻で義理の娘、妻でしかない。妊娠した時ですら、「未来の後継者」と口にされ、子どもを安全に生むことが仕事になります。その重圧と息苦しさはすさまじい。

何もかも完璧にこなし、自己犠牲を徹底し、素晴らしい妻であり続けるだけで苦しいのに、妊娠が止めになります。

ここまでくると絶対に逃げられない。今度は完璧な母親の重圧すら背負っていくことへの絶望。

観ていてけっこう腹立ちます。常にハンターを見下し、拾ってやった感のある家族の態度も、トロフィーのように見つめるリッチーも。ネクタイとか自分で管理しとけマヌケ。

こういう息の詰まる感じが、唯一の解放にもなっている異食に対する何とも言えないカタルシスを強めます。

飲み込むものが鋭利な画鋲の場合では自分を傷つけることや、また同時にそれだけ自分の内面が傷ついていることが見えてきます。また電池というのも、身体を本体と考えてみるとその原動力が足りていないと捉えられます。

生きる気力がもうなくなる、だから充電、エネルギー源を取り込む。

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作品は最終的には拠り所のない女性が自分が何者なのかを理解し、解明していこうという旅に変化していきます。

この転換についてがどうしても余計にも感じているのが正直なところ。家庭内の抑圧から、自分の出自解明への移行はあまり必要ではなかったかと思います。

異食症の根本原因と、そもそも感じている圧倒的な孤独の理由は完全に重なるわけではないと思うからです。

最後の父とのドラマに関してまで行くと、ここはヘイリー・ベネットの力のおかげで引っ張れる部分かと。拠り所をすがるように探す様が強く印象に残ります。

最終の顛末にはそこまで満足ではなく、というかハンターを外に出すことだけでもいいのかと感じましたが、エンドロールが現段階でも2021年トップレベルでしょう。

ずっとある場所が映されていて、そこを背景にして最後まで進んでいく。これは男性ではなく女性の場所であることも重要な意味があるかと。

ここまでくると、ハンターの生を通しながらやはり女性映画なのだと思うのです。

斬新なアプローチで、家庭に役割を持って縛られる女性を描く作品。また違った題材からの視点という意味で非常に楽しめる作品でした。

やや苦手な方もいるかもしれないですが、2021スタートとしてフレッシュなのは間違いなくおすすめの1本でした。

今回の感想はここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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