「アンセイン 〜狂気の真実〜」(2018)
- 監督:スティーブン・ソダーバーグ
- 脚本:ジョナサン・バーンスタイン、ジェームズ・グリア
- 製作:ジョセフ・マロック
- 製作総指揮:ダン・フェルマン、ケン・メイヤー、アーノン・ミルチャン
- 音楽:トーマス・ニューマン
- 撮影:ピーター・アンドリュース
- 編集:メアリー・アン・バーナード
- 出演:クレア・フォイ、ジョシュア・レナード、ジェイ・ファロー、ジュノー・テンプル 他
「ローガン・ラッキー」(2017)などのスティーブン・ソダーバーグ監督が、ストーカー被害にあう女性が精神病棟に入院させられてしまうサイコスリラーを描きます。
主演は「蜘蛛の巣を払う女」や「ファースト・マン」などのクレア・フォイ。
今作は全編iPhoneにて撮影されたとのことです。
ソダーバーグの新作ではあったのですが、日本では劇場公開はされず。ソフト販売、デジタル配信となりました。
正直ソダーバーグ監督作が好きってわけではないですが、クレア・フォイ主演ということに惹かれての鑑賞になります。
ストーカー被害に悩まされていたソーヤーは、地元を離れて転職し人生を切り替えようとしていた。
しかし彼女の心の傷は深く、パニック発作的な症状や大きな不安に襲われることが多かった。
ソーヤーは見知らぬ地で孤独を感じ、悩みを打ち明けるため自助グループのカウンセリングを受け「自殺を考えたこともある」と話す。
しかしそれが大きな間違いだった。
その発言がきっかけで彼女は病棟に入院させられてしまうのだった。そして、彼女をさらなる恐怖が襲う。
ソダーバーグの描くサイコスリラーですが、ジャンル映画としての出来はまあいいのですが、しかし作品としてはプロットが散漫に感じます。
そもそも始まりからしばらくは、現実と妄想の対比構造のような煽り方をしており、過剰な恐怖が幻影をもたらし、信頼できない語り手として物語を走らせていきます。
しかし、割とあっさりと今作はそのプロットは投げ捨てます。
ハッキリとストーカーから逃げるスリラーになっていきます。で、そこには陰謀論のプロットが入れ込まれ、企業や組織ぐるみのアメリカ保険の闇みたいな要素が絡んでこようとしながらもうまく絡んでいない印象。
話が進めば進むほどに、私としては支離滅裂というか。
一貫性がなかったり、相互作用しない話が複数それぞれに進行している感じであまり集中できませんでした。
iPhoneで撮影されたという画面には、確かにその性質ゆえに身近に感じる部分や、あえて劇画的な味わいがそぎ落とされた生々しさはあります。
実録的な画を作り出せると言いますか。しかし実際日用品であるカメラですので当然ですが。
また軽量かつ小型であるために、対象物にくっつけてステディカム的に撮影を行えるので、それを活かしたシーンもありましたね。
総合的にはiPhoneという製品ができることのショーケースにはなってはいますが、それが独創性を与えたかというと微妙です。
色彩効果の操作とか、アナモルフィックっぽい空間の歪みを作り出したりと、いろいろできてこのスリラーを盛り上げる要素にはなっているんですがね。
結局のところ、私にとって一番なのはクレア・フォイという存在。
どれだけお話が”狂って”(unsane)いっても、彼女がセンターをはって一つの集約点となる。緊張や恐怖、不安、罪悪感に憤りや悲しみ。
あらゆる感情を露呈していくソーヤーを見事に演じ、ずっとついて回り接写も多いカメラ相手にまったく引かない。
長回しであろうとクレア・フォイがいれば大丈夫。彼女のおかげであるところが多いんです。本当に素晴らしい俳優です。
ソダーバーグ監督がいろいろなジャンルをこなせるという点では分かり切ったことで、スリラーとしてしっかりB級ジャンル映画のおもしろみはあります。
しかし技術やプロット面ではイマイチ驚くところがなく、ぼやけた道はクレア・フォイという光が照らしてくれて初めて、最後まで観ていけるといった印象でした。
おもしろくないってわけではないので、興味があれば鑑賞ください。またクレア・フォイが好きって人は彼女の演技が存分に堪能できるのでおススメ。
感想としてはこのくらいになります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた。
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