「ノマドランド」(2020)

  • 監督:クロエ・ジャオ
  • 脚本:クロエ・ジャオ
  • 原作:ジェシカ・ブルーダー「ノマド: 漂流する高齢労働者たち」
  • 製作:モリー・アッシャー、ダン・ジャンヴェイ、クロエ・ジャオ、ピーター・スピアース
  • 音楽:ルドヴィコ・エイナウディ
  • 撮影:ジョシュア・ジェームス・リチャーズ
  • 編集:クロエ・ジャオ
  • 出演:フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーン、リンダ・メイ 他

nomadland-2020-chloe-zhao-frances-mcdormand-movie-review

「ザ・ライダー」のクロエ・ジャオ監督が、バンで生活をしながらアメリカ各地を旅しまわる”ノマド(遊牧民)”たちの交流と人生を描くドラマ映画。

こちらはジャーナリストであるジェシカ・ブルーダーが執筆した「ノマド: 漂流する高齢労働者たち」を原作として監督自ら脚色しています。

主演は「スリー・ビルボード」などのフランシス・マクドーマンド。今作の演技でもオスカーレース参加の声が聞こえています。

現時点(2020.11.1)では2021年の1月に公開が決まっているようです。

そういえば、今年の映画祭は割と直近一般公開が決まっている作品が多いですね。

今回は東京国際映画祭での招待作品上映にて鑑賞。チケットがかなり取りにくかったのですが、今回は1席空け販売だったようです。(ただ他の作品でEXシアターの時は別に空けてなかったな・・・)

あらすじ

ファーンは生活施設を組み込んで改造したバンでアメリカ西部を旅して暮らす”ノマド(遊牧民)”。

財政破綻によって1年前に住んでいた町が抹消されてから、転々と移動先にキャンプし、短期間の仕事に就いている。

同じくノマドとしてバンで生活する高齢者たちと助け合いながら、お互いの道を進み暮らす。

そのなかで、それぞれがなぜノマドとなったのかが明かされていき、ファーンの想いも見えてくる。

nomadland-2020-chloe-zhao-frances-mcdormand-movie-review

クロエ・ジャオ監督は全く知らなかった、原作も何も知らない、まっさらな状態での鑑賞となりました。

序盤のAmazon工場辺りなどでは、アメリカ社会における高齢者、所得の格差や搾取構造など、社会問題を描いていく作品に見えましたが、徐々にそれは主軸から外れたと感じます。

むしろどんどんとノマドたちと触れ合っていき、彼らの人生を、生き方を見ていくことで、世界との繋がりかたを模索していく作品に思えました。

作品の作りがドキュメンタリーと間違うようなもので、実録的。

不思議なバランスで引き込まれます。

考えてみれば、けっこうドラマチックな背景が明かされていくのに、それが映画的に盛り上げるためとか、付けた感じはしないですね。

本当に出会う人の人生が、そこにある気がします。

nomadland-2020-chloe-zhao-frances-mcdormand-movie-review

また自然風景がとても力強く感じます。

作品の根幹にも自然と調和する生き方とかがあるように思いますが、朝焼けに夕陽、星の輝きや、雲や大地、そして動植物たち。

これら人工でないものが大きくスクリーンに登場することも、ドキュメンタリー、実録的な力をくれているのかもしれません。

美しい画面、撮影監督はジョシュア・ジェームス・リチャーズ。

彼は「ゴッズ・オウン・カントリー」でもヨークシャーの偉大な景色を撮っていた方でした。

画の美しさは、人間の生き方をより自然と調和するものに向けるものですが、語りにおいてはやや画でなく台詞に頼った感じもします。

OPでお皿やダウンジャケットを見つめるファーンから、その価値と歴史が見えてきます。

ジャケットはのちに彼女が身に付いていますし。

ただお皿に関しては、その説明が入ってしまうのが残念でした。

後のデイブとの一件を踏まえても、あんまり説明しなくても良い気がします。

また、各人物の自分語りもやや多いです。好みですが、もう少し画でのストーリーテリングを観たかった。

それでも、写真を見つめるだけで、ファーンがしっかりと生きた人物であることを感じさせる、フランシス・マクドーマンドは素晴らしい。

カメラの距離が彼女の心情描写を助けながら、実在の人物のように生き生きと見えます。

ファーンの複雑な状況や、人柄、一人の時。彼女の演技あってこその造形になっていると思います。

私は笑った時の彼女のしわの感じが好きですし、あと怒りとか困惑、悲しみなどちょっとネガティブな部分はどちらかといえば表情を固定するような演技が良いなと思います。

ノマドたちが旅立たねばならなかった様々な理由。

そこにはアメリカ社会が抱えている福祉や年金制度の機能不全、格差と貧困、経済という世界における略奪的な弱者からの搾取が透けて見えます。

ただクロエ監督はそれらをやたらに大きく描くことはせずに、人間の生き方を取り上げます。

理由はいかなるものでも、人は強く生きれるのかもしれません。というか、生きるとは何なのかも考えさせられます。

マイホームの夢もありながら、開拓者、自由の精神もあるこの広大な大地を舞台にどう生きていくか。

貧困からホームレスになり徘徊する老人たちか、ハウスレスなだけで常に明日を見て強く生きる自由な人間か。

国柄な部分もあると思いますが、こういったことを考えるほどに、アメリカという国は、アメリカ国民はその精神に疲弊しているのかもと考えられます。

これは原作も気になってくる作品ですね。画も美しく、マクドーマンドの演技も確かで、生き方を見つめ直す。

一般公開の際には是非劇場スクリーンでご覧ください。

感想は以上になります。

しばらく映画祭関連の映画感想が続きそうです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です