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「スイート・イースト 不思議の国のリリアン」”The Sweet East”(2023)

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「スイート・イースト 不思議の国のリリアン」(2023)

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作品解説

  • 監督:ショーン・プライス・ウィリアムズ
  • 製作:クレイグ・ブッタ、アレックス・ココ、アレックス・ロス・ペリー
  • 製作総指揮:デビッド・カプラン
  • 脚本:ニック・ピンカートン
  • 撮影:ショーン・プライス・ウィリアムズ
  • 美術:マデリン・サドウスキー
  • 編集:ステファン・グレビッツ
  • 音楽:ポール・グリムスタッド
  • 出演:タリア・ライダー、サイモン・レッグス、ジェイコブ・エロルディ、アヨ・エデビリ 他

物憂げな少女リリアンが、現代アメリカの闇を巡る奇妙な旅を繰り広げるドラマ。

監督は「神様なんかくそくらえ」などの撮影監督ショーン・プライス・ウィリアムズ。本作が長編監督デビュー作となります。

主演は「17歳の瞳に映る世界」のタリア・ライダー。共演に「レッド・ロケット」のサイモン・レックス、「ソルトバーン」のジェイコブ・エロルディら。

なかなか小粒な作品ですが、小規模でも日本公開されていました。後悔してすぐには身に行けなかったのですが、ちょうど都合よく平日の午後が空けられたため都内で鑑賞。さすがに時間も時間なのでほとんど人はいませんでした。

「スイート・イースト 不思議の国のリリアン」の公式サイトはこちら

~あらすじ~

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サウスカロライナ州の高校3年生リリアンは、恋人のトロイや親友のテッサ、アナベルらとともに修学旅行でワシントンD.C.を訪れる。

しかし、周囲のはしゃぎぶりとは対照的に、どこか物憂げな表情を浮かべるリリアン。

夜、クラスメートたちとカラオケバーへ繰り出した彼女は、突如として発生した銃乱射事件に巻き込まれてしまう。

陰謀論に取り憑かれた男が引き起こした惨劇の中、派手なパンクファッションに身を包んだ青年ケイレブに導かれ、リリアンは店のトイレへと逃げ込む。

そこで見つけた大きな鏡の裏には、地下通路へと続く“秘密の扉”が隠されていた。

感想レビュー/考察

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アメリカ社会をシュールに描き出す

撮影監督であったショーン・プライス・ウィリアムズ。

初の長編作品の監督として資質が問われるところ、これはまた変わった作品を生み出しました。撮影畑出身だからか、もちろん撮影は非常に美しい

正直今どき見ないようなヘンテコな古典技法まで取り入れてくるくらい風変わり。

ただ、もっと風変わりなのはこのストーリーでしょうか。アメリカという国を題材にしたリリアンの旅路は、国内で起きていることをシュールにパロディしまくっています。

日本ではちょっと理解しにくい事象が多いため、ポカンとしてしまうことも多いはず。さらに、ショーン監督は映画オタク気質も持っているようで、オタクも炸裂させているからなお厄介です。

全体にはファンタジー?ドラマ?もしかしてスリラー?とジャンルを決めかねるのですが、一言で言えばこれは社会風刺のこもったコメディ映画です。

このリリアンの旅を理解していく上で、アメリカ国内の知識をインプットする前にまず監督のこだわりの撮影に触れます。

タリア・ライダーのアイドル映画

主人公であるリリアンの映し方。画面全体のお話。現代劇でスマホもあるのに、どこか昔のおとぎ話のような感覚を持った撮影。

明度高め、ホワイトバランスもいじりながらエッジを落としてややぼやっとして光るような画面です。

リリアンをかなりの接写で映すシーンが多くあり、どれもタリア・ライダーがとても美しくその細部まで見て取れます。

彼女のアイドル映画的な見方もできるほどにミューズ。もともと「17歳の瞳に映る世界」でも注目を集め、その後でネトフリ制作でマヤ・ホークとのカップリングをされた「リベンジ・スワップ」でもサブの役柄ながら独特の魅力を見せた彼女。

綺麗可愛いタイプですが、どことなくカッコよさもあるタリアを、これでもかと見せつけます。

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100年前の撮影技法で遊ぶ

美しさの中で、実は撮影でもおもしろおかしい点が。それは中東系の青年にリリアンがかくまわれることになるところ。森の奥の小屋から出て周囲を散歩するときです。

森の自然の美しさも切り取られながら、ふと2人が少し引きのショットで映されます。その際に、ものすごい奇妙な合成感があるショットが使われています。

最初はマットペインティングでも使ったのかと思ったのですが、実はシュフタン・プロセス。1920年代、30年代に使われたあまりに古典的すぎる撮影を、この現代でやるものかと。

不可思議な感覚やおぼろげに露光に強い画面というのは、この作品のリリアンの旅が、まさに不思議の国のアリスの冒険のようにファンタジーっぽく見せる狙いもあるでしょう。

陰謀論渦巻くアメリカ

鏡の裏側のトンネルからはじまる旅。アメリカの国内での事情について、どんなことが投影されているのか見ていきます。

そもそもリリアンが修学旅行のグループを抜け出し単独行動することになったきっかけ。カラオケバーでの銃撃事件です。

地下室に子どもを閉じ込め虐待していると叫び、銃をぶっ放す人。これはアメリカで実際に起きた”ピザゲート事件”をパロディしているということです。

2016年に当時話題だった民主党クリントン氏のメール問題に関わっています。

ノースカロライナ州にあるピザ屋の名前と同じ単語が何度も出ていることから、この店が民主党と関わりある小児性愛者集団の隠れ家になっている。店の地下には誘拐され監禁された子どもたちがいるというフェイクニュースです。

実はこれを信じて子どもたちを解放するべく、ライフル銃を持って店内に入り発砲した男がいたのです。

男は逮捕されましたが、偽のニュースから実際に行動に出てしまう事件は衝撃でした。

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過激な見た目をしていない過激な人物たち

この騒動の後リリアンが一緒に行動するのは、今度はアンティファ(Antifa)の集団です。

アンティファはアンチ・ファシズムの人たちで、そういえば最初のトランプ政権で台頭し、トランプがテロ組織だと呼んで議論になっていました。

人種差別に徹底的に反対し、BLMも叫ばれたジョージ・フロイド氏の殺害事件などでも抗議活動をしていますが、暴動に発展した要因が彼らなのか不明でした。

映画の中でショーン監督はアンティファの人たちを拍子抜けするくらい普通の若いアーティストたちとして登場させています。

アメリカでのトランプやバー司法長官の言うような過激な者たちではないということを滑稽にシュールに描いたというわけですね。

さて次には皆さん大好きサイモン・レッグスが登場。「レッド・ロケット」では10代の高校生とヤリたくて仕方ない中年おじさんでしたけど、今作ではまさかの純情さん。

かなりのインテリの大書き教授である彼は、しかし驚くほどのネオナチです。リリアンにやたらと講説を垂れ流しますが、「國民の創生」を見せるなどけっこうヤバいやつです。

あと、D・W・グリフィスファンなので彼のミューズであったリリアン・ギッシュと同じ名前のリリアンに対しても思い入れがすごい。

ネオナチというと「アメリカン・ヒストリーX」でのエドワード・ノートンのようなスキンヘッドの強面かと思えば、一般には尊敬される学位ある人間にも、そういった白人至上主義者はいるというのは、シュールです。笑っていいのか悪いのか。

また、その後リリアンが匿われることになるのは中東系の集団で、ちょっと怖いなと思えばなぜかEDMで踊りまくってるという。

アメリカは滑稽だが残酷で、笑っていられるか。。。

見た目やレッテルに対して、その本当の姿というのを滑稽に映し出す、それがリリアンのアメリカ東部北上の旅ということですね。

あれこれ出てくるネタについては確かに拾い切れない点があります。所見では難しいですし、アメリカ国内でのニュースなどを覚えている必要もあります。

その点では、上映終了後についていた町山智浩さんの解説動画は結構ギャップを埋めてくれることになっていました。

私としてはタリア・ライダーが主演するということで彼女目当てで観に行ったようなものでしたので、監督のシュールな視点と、アメリカ国内のことを想うと複雑な気持ちにもなるこの不可思議なストーリーは結構気に入りました。

今回の感想はここまで。ではまた。

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