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「パピチャ 未来へのランウェイ」”Papicha”(2019)

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papicha-2019-movie 映画レビュー
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「パピチャ 未来へのランウェイ」(2019)

  • 監督:ムニア・メドゥール
  • 脚本:ムニア・メドゥール、ファデット・ドロウアード
  • 製作:パトリック・アンドレ、グザヴィエ・ジェンズ、グレゴリエ・ジェンソレン、ベルカセム・ハジャージ、ムニア・メドゥール
  • 音楽:ロビン・コダート(ロブ)
  • 撮影:レオ・ルフェーブル
  • 編集:ダミアン・ケイユー
  • 出演:リナ・クードリ、シリン・ブティラ、アミラ・イルダ・ドゥアウダ、ザーラ・ドゥモンディ、ヤシン・ウイシャ 他

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ドキュメンタリー、短編を手掛けてきたムニア・メドゥール監督長編デビュー作。

内戦化のアルジェリアを舞台に、服装と思想の統制を強要される少女の奮闘を描きます。監督はセザール賞の新人監督賞を獲得しました。

主演はちょうど同年公開の「スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~」にも出演のリナ・クードリ。

彼女は今作の演技でセザール賞の若手女優賞を獲得しています。

今作はカンヌ国際映画祭である視点部門に出品され、アカデミー賞外国語映画賞ではアルジェリアの代表作品になっています。

以前映画館で予告を見たときから、その題材に惹かれ楽しみにしていました。TIFFの最中、合間をぬって日比谷のHTCにて鑑賞。入りはそこそこって感じでしたね。

ちなみにタイトルになっている”パピチャ”はアルジェリア語のスラングで、自由でクールな女の子を指す言葉だそうです。

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1997年のアルジェリア。

18歳の大学生ネジュマは、夜な夜な学生寮を抜け出しては、ナイトクラブへ出かけ、友人のためにドレスを作ったりしながら遊んでいた。

しかし周囲ではイスラムの原理主義が力を増しており、ネジュマや郵便のようにヒジャブを被らず自由に過ごす女性への圧力を強めていた。

大学の講義にや寮にも乗り込み、従わない者を脅し始め、ついに悲劇が起きる。

そして反抗と自由の声明のため、ネジュマは大学でファッションショーを開催することを決意した。

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この作品でムニア・メドゥール監督は女性たちのファッションと連帯を融合させ、自由の声として響かせています。

性差によって抑圧する社会や習慣などの外圧に対して、纏うものを持って反抗する女性たちの友情を描き、同時に青春映画のような輝きも持たせています。

創造性をもって戦う、声をあげるネジュマはまさしく芸術家であり、その姿勢と行動をもって反抗する。

部隊となるアルジェリア。1997年は内戦の中でも最も凄惨な年だったとのことで、劇中でも描かれるように武装イスラムグループによる虐殺やテロ行為が激しかったようです。

今作はそんな実話ベースで過去の話ではありますが、フェミニズムや統制、抑圧で見ればまさに今観るべき作品です。

私はこの作品が持っているテーマとの距離感や、現実の捉え方が好きです。

先に言ったフェミニズムだったり宗教または社会による抑圧を描いてはいますが、ネジュマたちの青春が基本軸になっている。

夜遊びや悪ふざけ、恋愛。ガールズムービーの楽しさがあり、本当にみんな華やかです。

そうした彼女たちの日常や青春を通して、それを破壊するような外圧を見せていきます。

するとルールの歪みや性差の酷さ、全ての理不尽さがより強烈に伝わってくるのです。

実生活、人生における障害として直面するのですね。

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そして監督は容赦をしません。最悪の形をもってしても、惨い現実を突き付けます。

ちょっとスクリーンで起こることを信じられず、吐き気のする怖さと悔しさと悲しさに襲われることがあります。

あまりのシーンの落差についていけないのです。

それでもこの作品は絶対にくじけることの無い強さを称えます。ネジュマが大地を掘り起こし、姉の血のついた服を染め上げる。何をされても再び鮮やかに輝くその様を象徴するシーンですね。

アルジェリアの過去の話ですが、今の日本でも通じる作品。

女性の衣服は男性に比べ外からの意見や圧力が強く感じられるのは、この作品の舞台、1997年のアルジェリアだけではありません。

日本でも同じ社会的な押し付けがあります。

いまだに減らない性被害においての「女性の格好に問題がある」というのもその1つ。

何度も言いますが、女性の衣服が男のために着られているわけでも、特定のメッセージをまとっているわけでもないんです。

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自分が良いから着ている。それだけ。

自分自身が輝くため、好きなものを着ていることに対して、とやかく言う権利は誰にもないのです。

何度も潰され、男たちはクソしかいない(男性側がやや薄い描写なのは否めないですが)。

性差別主義者、性的な捕食者、そして階級差別者。とにかくロクな人が一人もいないですね。

そんな中で何度壊されても、再び創造へ向かうネジュマの強さが眩しい。

そしてネジュマと同じく、ムニア・メドゥール監督も闘います。

この映画を創造することが、監督の声。だから本国で上映中止になろうが、突き進む。

ネジュマとメドゥール監督は同じなんですね。共に闘う自由の女性たち。

ファンタジーや理想的な終結はせず、闘いは続いていく終わり方ですが、ネジュマは折れていない。その生き方で自由を叫び、自らを輝かせていくはずです。

メドゥール監督自身の経験も織り込まれた、すごく想いの感じられる力強い作品。素晴らしかったです。

是非劇場で観てみてください。

今回の感想は以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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