「オフィシャル・シークレット」(2019)

  • 監督:ギャビン・フッド
  • 脚本:ギャヴィン・フッド、グレゴリー・バーンスタイン、サラ・バーンスタイン
  • 原作:マルシア・ミッチェル、トーマス・ミッチェル『The Spy Who Tried to Stop a War』
  • 製作:ゲド・ドハティ、エリザベス・フォーラー、メリッサ・シュー・ツォ
  • 製作総指揮:エヴェン・ベアントセン、クローディア・ブルームフーバー、ヒューゴ・ヘッペル、アン・シーアン、サラ・スミス、マーク・ゴードン、コリン・ファース、マット・ジャクソン
  • 音楽:ポール・ヘプカー、マーク・キリアン
  • 撮影:フロリアン・ホーフマイスター
  • 編集:ミーガン・ギル
  • 出演:キーラ・ナイトレイ、マット・スミス、レイフ・ファインズ、リス・エヴァンス、マシュー・グッド、アダム・バクラ、タムシン・クレイグ 他

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「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」のギャビン・フッド監督が、米国による国連のイラク戦争開始採択への圧力を告発したキャサリン・ガンと彼女をめぐる裁判までを描いたドラマ映画。

原作としては実話を元にされたノンフィクション小説がもととされています。

告発者キャサリン・ガンを演じるのは「コレット」などのキーラ・ナイトレイ。

また彼女のリーク情報を公表した新聞記者にはマット・スミス、起訴されることになったキャサリンの弁護士をレイフ・ファインズが演じています。

2019年のはじめにはサンダンスでプレミア、北米では夏公開で、日本もやや遅れての2020年5月公開の予定でしたが、コロナの影響により8月最終週の公開となりました。

今現在座席数を絞っているためか、ほとんど満員になっていました。まあ小さな劇場ではあるのですが。

客層はシニア層多めでしたね。実をいうと若い世代こそ観てほしい題材でもあります。

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2003年、キャサリン・ガンはイギリス政府通信本部で、諜報活動により集められた様々な言語を翻訳する仕事をしていた。

ある日彼女の課に、アメリカ国家安全保障局(NSA)からのメールが届く。

それはイラクへ対するアメリカの軍事制裁を進めるための、国連非常任理事国への盗聴と圧力を促すものであった。

嘘で固め、操作した採決で戦争を始めようとするアメリカ、それを容認するイギリス官邸に強い憤りを覚え、良心がどうしても黙っていることを許さなかったキャサリンは、そのメールをコピー。

秘密裏に反戦争派の活動家へと渡すが、時間がたっても報道による公表はされなかった。

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実際に起きた事件、事実、そして勇気あるキャサリン・ガンのその行動は、こうして映画などで伝えられ観直されるべきであり、その意味では今作は十分に意味をもっています。

その報道、スクープや告発の作品としての構造は「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(今作でも言及されます)など多くの作品と同じようなものになっています。

そこに作家性や独特な切り取り方はなく、やはりキャサリンの行動倫理、事実を明確に示していこうという力があります。

行ってしまえば普通です。特色がなく、つまりは平凡になりそうなものです。実際、いくつかの登場人物に関しては、描かれ方や掘り込みが少なめに感じました。

マット・スミス演じる記者マーティン・ブライトはじめ、重要な役割の人物には今回の件以外には人としての生はあまり描かれません。

また、オブザーバー紙内でのドラマ部分はドラマ的で、デイリー・ビューグル紙を眺めるような気もしました。

リス・エヴァンスのアメリカ人記者も、ちょっとアメリカンをキャラクター化しすぎて娯楽色が強い。

実直に行くならばもう少し抑えることができる部分もあったと思います。

初めの告発における投函までのありきたりなスリラー演出も含めて、そぎ落とせる部分が残っているからこそ、普通に見えてしまうのかも。

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しかし主軸にキーラ・ナイトレイがいるおかげで、今作は強さを持っています。

コレットに続いて実在の人物を演じることになった彼女ですが、激しさを出さない演技が好きです。

キャサリン自身が、自分の強い感情にまた突き動かされているようなんです。

憤りや恐怖を越えてどうしても抑えられない良心を抱え、時に悩んでいるようにも感じられます。

途中で言われるように、キャサリンにはこの告発で得るものがないのです。失うものしかない。

しかしそれでも「スッキリしたい」。

内なる良心が絶えずキャサリンを突き動かす。言ってしまえば理屈抜きなところを、まさに中から叫ぶように表現するキーラあ素晴らしいです。

追いつめられていき深刻な顔つきになる彼女にグッとズームしていく撮影、その顔のアップから伝わる力を受け取りました。

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考えるにこのイラク戦争の不当な開戦、混乱の中で騙されながら多くの死傷者を出した事実から、すでに10数年経過しています。

しかも形を変えてさらにテロリズムの悪化が10年代には経験されているのです。

この背景は「バイス」でも大いに描かれているものですが、やはり何度も語り直すべき題材なのでしょう。

今作での言葉はまさに今にも響き渡ってきます。

「官邸のご機嫌取りをしてないで、記者は仕事をしろ。」

政府が政府により言葉の定義を決められる制度、法改正。国民に使えるべき者がいつしか組織や政府の方針に使えてしまう。

政府は変わる。私は国民に仕え、国民を守るために仕事をする。国民を守るという役目をもつ政府を支援する。

各組織の役割を再確認し、キャサリン・ガンの精神を称え残す意味でも役目を果たす作品でした。

この精神は最近の「ジョーンの秘密」で描かれたものや、「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」でのキャプテン・アメリカの体制/政府との位置関係にも似ています。

オーソドックスな形ですが、キーラ・ナイトレイの素晴らしい演技が光っている作品です。気になる方は劇場でぜひ鑑賞を。

今回の感想はこのくらいになります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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