作品解説

「新感染 ファイナル・エクスプレス」や「犯罪都市」シリーズで知られるマ・ドンソクが、企画・原案・主演を務めたホラーアクションエンタテインメント。
東洋オカルトの要素と肉体派アクションを融合させ、悪魔祓いを生業とするチームの戦いを描く。
キャスト
- マ・ドンソク: 「新感染 ファイナル・エクスプレス」、「犯罪都市」シリーズ、「エターナルズ」
- ソヒョン(少女時代): 「モラルセンス 君はご主人様」、「ジンクスの恋人」
- イ・デビッド: 「イカゲーム」シリーズ、「ロマンチック・ドクター キム・サブ」
西洋的オカルトと東洋シャーマニズムを融合させた初監督作品
イム・デヒ監督は、本作「悪魔祓い株式会社」にて長編映画監督デビュー。大学時代より東洋のシャーマニズムを研究していたようです。
約3年にわたる構想期間を経て、監督自身の専門分野であるオカルト要素と、マ・ドンソク主演作品ならではの迫力あるアクションを融合。
シンプルにマブリーの新作ってことで軽い気持ちで観に行こうかなと思っていた作品です。公開された週末に自音で観てきました。観客の入りはそこそこって感じでした。
~あらすじ~

強靭な肉体と圧倒的な戦闘力を誇る社長バウ、妖艶な魅力を放つエクソシストのシャロン、そして情報収集を担当するキム。3人は悪魔祓いを専門に請け負う「悪魔祓い株式会社」を運営していた。
しかし、悪魔崇拝カルト集団の台頭によって社会は混乱を極め、警察や聖職者ですら手に負えない事態に陥る。次第に「悪魔祓い株式会社」は、最後の切り札として頼られる存在となっていく。
そんな中、医師ジョンウォンから、何者かに支配され異常な行動を繰り返す妹ウンソを救ってほしいという切実な依頼が舞い込む。バウたちは彼女の救出に挑むが、その背後には想像を超える闇と脅威が待ち受けていた。
悪魔に侵された一人の少女を救う戦いは、やがて社会全体の秩序を揺るがす戦いへと発展していく。
感想レビュー/考察

ついに悪魔まで殴るフェーズへ
マ・ドンソクがその拳で事件を解決していくタイプの作品も、かなり量産されてきています。
彼だけ打撃音が衝突事故みたいな、爆発音みたいなサウンドを与えられて、ゾンビでもヤクザでも人外のような力でなぎ倒す。一種のジャンルになっている。
さながらありえない力で活躍した80年代のアクションヒーロージャンルのようです。
それもいろいろネタが尽きてきて、ここで悪魔を殴るように。「コンスタンティン」みたいな、物理で悪魔祓いするタイプです。
評価が割れる理由:広げすぎた世界観
で、今作は評価がものすごく分かれる気がします。というのも、この作品かなり世界観を広げてくるタイプなのです。
まるでシリーズ作品のオリジンのような立ち位置で、主人公バウたちの過去や悪魔と人間の世界観などかなり風呂敷を広げているんです。
ただ、ジョセフという宿敵がいることは言及されるものの、本人は一切登場しないですし、バウとシャロンには悪魔の力が宿っていることも明かされますが、しかしその経緯は不明。
本筋としてのメインヴィランを退けることには成功しつつ、完全に倒しきっていなくて地獄へ送り返しただけ。
まさに「悪魔祓い株式会社 Part1」といった感じ。なので不完全な映画だということで嫌いにな方も結構いるんじゃないかと思いました。
とはいえ私はハマりました。
というのも、全体設定が個人的に好きなCAPCOMのゲームシリーズ「デビルメイクライ」っぽいところとか、なんだかんだ言っても一つの作品での目標設定と構築、その解決までは到達しているからです。

全体の風呂敷は広く広げつつ、登場人物は主要なかず5人と絞り込んで展開し、ごちゃごちゃしていない。
そして悪魔祓いについても段階の設定と説明が入っていくので、ロジックが見えにくい悪魔祓いプロセスをシンプルにしてくれます。悪魔祓いの段階は以下。
悪魔祓いの段階
- 存在確認
聖書朗読・十字架・聖水などで、悪魔の存在を確かめる - 偽装
悪魔が「自分は悪魔でない」と装い、だましてくる - 休止
悪魔が苦しみ、深く潜む。憑依者は一時的に気絶し静寂が訪れる - 声の攻撃
悪魔が相手(家族やエクソシスト)のトラウマを突き、心理的な揺さぶりをかけてくる - 衝突
悪魔が物理的攻撃を仕掛けてくる。物が壊れたり、暴力をふるってきたりする - 追放
救う前の最後の段階。追放の言葉で悪魔が身体から抜け出て、戻っていく
分かりやすいのと、映画の進行でこの話が出てくるときにはちょっと進んでいるのもスムーズで良いです。
悪魔の描写はまあありきたりではあるんですが、チョン・ジソがとても良かった。
「パラサイト 半地下の家族」に出ていた彼女ですが、今回は悪魔の憑依と純粋に少女を行き来する演技が多く、それが結構迫真。
悪魔の場面での恐ろしい感じにふと、純粋で助けを求める少女の表情。観客をも弄ぶ悪魔として中心で輝いています。

マ・ドンソク一強に頼らない構成の意外性
あとはこの手の作品はマ・ドンソク押しっぱなしのところ、今作は彼だけに頼るわけではなく、むしろ主軸として悪魔祓いをしているのはシャロンの方でした。
演じているのは少女時代のソヒョン。彼女が結構クールでした。おそらく戦闘という意味ではバウが重要でしょうけど、悪魔との戦いで一番活躍しているのはシャロンですね。
最終的に今回憑依した悪魔を退けることはできましたが、残されたストーリーがかなり多い。なので、このまま終わるとすると消化不良のままの映画になるので、ぜひ続編でも期待したいところです。
もっとデビルトリガー発動して魔人化したバウが悪魔を殴り倒すところとかみたいですし、シャロンの悪魔の力ももっと発揮してほしい。
まあこの手の悪魔物ということではそこそこの出来だったことと、マ・ドンソクだけに振り切るのではなくてキャラクターにそれぞれの見せ場を与えていることなど、想像よりはバランスを取っていました。
今回の感想はここまで。ではまた。


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